クールジャパンとはもともと、日本育ちのポップカルチャー(大衆文化)が海外で人気を得ている現象を指していました。

その代表はゲームとアニメ、それに付随するファッションで、いわゆる秋葉原のイメージです。

それが次第に、国が腰を上げるようになるとともに、海外に売込みたい日本製品や文化全般を意味するように変わっていきます。

国を挙げてK-POPやドラマなど韓流コンテンツを売り込み、成功を収めた韓国を参考にした部分も大きかったでしょう。

とにかく国が乗り出していくことで、クールジャパンは新たな段階に足を踏み入れました。

クールジャパンって知ってる?

クールジャパンと聞いて一般的に頭に浮かび、知名度の高いものといえば、NHK-BSの番組「クール・ジャパン」でしょうか。

これは2012年1月から始まっています。

各国出身者の発信する自国文化と日本文化の文化比較が面白く、バラエティー番組としても十分なりたっています。

鴻上尚志とリサ・ステッグマイヤーのコンビも適度な明るさと知性、ユーモアのバランスが取れ、なかなかのレベルです。

出演者の外国人たちが面白そうな日本の習慣を取材して、クールといえるかどうか意見をたたかわせるのがメインです。

番組の始まった翌2013年には、クールジャパン機構という組織を立ち上げています。

法律に基づいて設置された官民ファンドです。

株式会社海外需要開拓支援機構といい、支援基準を設けて、クールジャパンの目的に資するプロジェクトへの投資を行います。

クールジャパンのおさらい


ところがクールジャパン機構は、ネット上のニュースをひろう限り、評判はあまり芳しくありません。

ガバナンス(統治)が効いていない、実行した融資もうまくいっていないなどと指摘されています。

女子職員へのセクハラ事件すらあったようです。

各役所からの寄せ集めの出向者ばかりで、おそらく彼らはバカンス感覚で過ごしているのでしょう。

帰るところのある職員ばかりの官民ファンドに、使命感や責任感を求める方が無理というものです。

これは国があまりしゃしゃり出てくるとろくなことにならない、という好例を提供しているように見えます。

それに現代では国の組織などより、民間のネットインフラの方がはるかに進んでいます。

コミュニケーションコストは大幅に低下しています。

今ではそれらを利用して紹介し、または紹介される、またはSNSから勝手に火が付くというのが普通の広がり方でしょう。

国は民間の邪魔をしない、サポートに徹するというスタンスの方が望ましいでしょう。

概要

いろいろ問題のあるクールジャパン機構ですが、一度これまでのおさらいしておきましょう。

日本の文化輸出をテーマに掲げ、クールジャパン構想を国家戦略として立ち上げたのは2010年です。

知的財産戦略本部(首相官邸に2003年設置)が「クールジャパン推進に関するアクションプラン」をまとめたのは翌2011年です。

それは2009年に4兆5000億円だったクールジャパン関連産業の市場規模を、2020年には17兆円をめざす、という大掛かりな計画でした。

ところが目立った具体的成果の上がらないうちに、ボロばかり目立ってきたというのが偽らざる現状のようです。

クールジャパンの盛り上がりにともなって、アニメーターの世界における恐ろしい労働環境が表ざたとなりました。

しかしこれは成果以前の問題です。

それにまだ解決の道筋はついたとは言えないようです。

一方、政府は海外での日本の知的所有権の保護などに力を入れるべき、という強い意見があります。

こちらは正論でしょう。

世界で評価される日本の近代文化

日本は明治維新以降、西欧文明大きく取り入れました。

使節団や留学生を送り、高給のお抱え外国人をたくさん雇い入れました。

彼らは日本の近代化に多大な貢献をします。

近代的な産業も急速に勃興しました。

歴史の教科書的には、日本は一方的に西欧の影響を受けたようなイメージです。

しかし決して一方通行ではありません。

とくに文化面においてはそうです。

日本文化は西欧に紹介されて、一大日本ブームを起こします。

それは“ジャポニズム”と呼ばれ、1870年代フランスを中心として始まりました。

これこそクールジャパンの記念すべき、歴史的な第一歩としてよいのではないでしょうか。

しかもジャポニズムは一過性のブームでは終わりませんでした。

しっかりと西欧文化に根をおろし、やがて融合していきます。

その中心となったのは浮世絵でした。

葛飾北斎や喜多川歌麿などの作品です。

これにゴッホ、マネ、ロートレック、ドガ、ルノワール、ゴーギャンなどの欧州を代表するビッグネームたちが、大きな影響を受けたとされています。

浮世絵の直線と曲線による表現方法は、世界中の絵画やグラフィックにインスピレーションを与えました。

また現代アートの抽象表現の成立要素の一つとまで考えられています。

さらに音楽にまで影響を与えているようです。

これはすごいことです。

伝統文化


日本伝統文化を代表するものとして、浮世絵についてもう少しくわしく見てみましょう。

その特徴は、生活を肯定する生き生きとした創造力と美意識にあります。

それは扱った題材の自由さによく表れています。

背景として江戸時代の社会の安定があったと見てよいでしょう。

浮世絵はその高い芸術性にも関わらず、江戸時代の日本では、浮世絵はブロマイド、ポスター、写真集、週刊誌のような役割を担っていました。

美人画や役者絵などは、まさしくそうです。

また浮世絵は、支配階級である武士たちのものではなく、一般庶民のものでした。

ここは西欧絵画との決定的な相違点です。

西欧における絵画とは基本的に貴族階級のものだったからです。

そして主要テーマはキリスト教でした。

また画家はパトロンを得て活動するのが普通でした。

絵の注文主は貴族や大金持ちばかりです。

庶民の生活は感じられません。

浮世絵は、肉筆画と木版画がありました。

木版画は何枚でも刷れるため、値段も手ごろなものになりました。

題材も需要も庶民とともにあったのです。

それが欧州では、貴族文化に受容され、高価な芸術作品に化けました。

大衆文化が貴族文化に横やりを入れたのです。

これは空前絶後のことと評価していいのではないでしょうか。

もちろん日本文化がこれほどの世界的影響力を与えたのは、初めてでした。

そして現代におけるマンガ、アニメ文化は、浮世絵をひきつぐ日本の大衆文化の伝統といえるのかもしれません。

食文化

ご存知の方も多いと思いますが「和食」は、2014年ユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。

無形文化遺産とは、芸能や伝統工芸技術など形のない文化で、料理関係では2010年には「フランスの美食術」「メキシコの伝統料理」「地中海料理」が登録されています。

わが農林水産省は、これらに触発されて登録を目指したのに違いありません。

日本で和食以外に登録されているものには、能楽、人形浄瑠璃文楽、歌舞伎、雅楽、小地谷縮・越後上布、奥能登のあえのこと、早池峰神楽、秋保の田植踊、大日堂舞楽、アイヌ古式舞踊、結城紬、壬生の花田植、那智の田楽、などがあります。

芸能などの内容や対象とされる地域は、非常に限定されたものです。

それにくらべ和食、日本人の伝統的食文化とはかなり幅を広くとっていて異色の存在です。

農林水産省は和食の特徴として、以下の4点を挙げています
1 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重。

2 健康的な食生活を支える栄養バランス。

3 自然の美しさや季節のうるおいの表現。

4 正月などの伝統との密接な関わり。

やはり解釈の幅は広く、具体的なイメージはわかないままです。

まあそんなことはどうでもいいのでしょう。

ここでは和食にスポットライトが当たったことが重要なのです。

ファッション文化

筆者はおとなりの中国で15年以上生活をしてしました。

その成果というべきでしょうか、妻も中国人です。

一般レベルの中国人の描く日本イメージを熟知しています。

そのためここではそれらを生かし、、中国大陸から見た日本のファッション文化に言及することにします。

彼らの目に、日本で最もよく目立ち、気になる存在は何といっても制服だそうです。

実際の学校の制服や、会社OLの制服だけでなく、スーツ姿も制服に見えるのだそうです。

例えば日本の大学を卒業し、日本語ペラペラで、日本企業に就職したいと願う中国人青年でさえ、もっとも恐怖を覚えたのは、サラリーマンのスーツ姿だったそうです。

みな同じ格好に見えて、軍隊に徴兵されるような錯覚を覚えるようです。

中国でスーツを着ているのは、銀行員か不動産会社の営業くらいのもので、ユニフォーム感覚です。

中国人にとって制服と言えば、軍隊か警察くらいしか思いうかばないのです。

彼らはなぜ日本人は制服を着るのか、ということを日本文化理解の重要な要素として捉えているようです。

官製メディア「人民網日本語版」では、日本の制服とは集団精神や仲間意識を養う保護フィルムではないか、と考察しています。

面倒なことを考える必要はなくなり、自意識を見えない形で洗脳し、異なる集団との区別を際立たせている、と見ています。

例えば名門女子高など、羨望の目で見られるものは、これにあたるでしょう。

女子高生徒の側では、その優越感によって自由に表現できない不満とのバランスを取っている、とも見ているようです。

たしかにピシッと決まって颯爽としている姿を見ると、確かにそのように思えてきます。

中国に進出した日本企業の一部、例えば銀行などは、女子行員に日本同様の制服を導入しました。

上海の高層ビルでは昼休みに、そうした制服の女子行員たちが2階にあるローソンに集まり、おでんを食べる姿をよく見ました。

20年近く前のことです。

今思い出しても、ものすごい違和感がありました。

みな顔は整っていてスタイルもよいのですが、ピシッと決まっていないのです。

おそらく名門女子高制服のような、バランスが取れていないことによるものでしょう。

とにかく日本の制服文化は、独特な世界観に彩られた独自性の高いものです。

それにシンパシーを覚える人たちが、知らぬ間に、世界中に増えていきました。

それに従うようにコスプレの世界はスター・ウォーズの主役たちのようなヒーローから、制服文化の主人公へと裾野を広げていきます。

これは日本の独壇場でした。

オタク文化

オタクとは時代と論者によって意味するところが違い、一定した解釈が定着しているわけではありません。

ここでは一般的な理解を採用します。

それによるとオタクとは、1970年代以降浸透していったサブカルチャーを表す言葉と表現できます。

マンガ、アニメ、アイドル、特撮、パソコン、コンピュータ^ゲーム、クイズ、模型、格闘技などが代表的なものです。

そしてオタク文化とは、マニアックなまでにそれらにのめり込む人々、彼らに共通する生活意識や スタイルの総称といえるものです。

そしてはまっている分野の名を付けた、〇〇オタクという呼び方も普通になります。

中でもオタク文化を象徴している分野は、マンガ、アニメです。

これは日本のマンガ、アニメ文化の奥深い背景と高い表現力を基礎としています。

オタクという表現が定着してきた1989年、東京、埼玉幼女連続誘拐殺人事件の犯人、宮崎勤がオタクであったと報道されました。

彼はさまざまなビデオを6000本も保有していたということで、イメージが重なってしまったのでしょう。

以来オタクは不健康なものとして、批判にさらされます。

そうしたマイナスイメージを払しょくできたのは、国内では21世紀を迎えたころでしょうか。

一方海外では1990年代から、日本のアニメ輸出が盛んになります。

フランス、ブラジルなどの遠方から、東南アジアなどの近場まで、各地に進出していきます。

心理描写が細かく、高い表現力を持つ日本のマンガ、アニメは、外国人の目に鮮やかな印象を刻みつけていきます。

そして日本文化そのものに熱中してしまう日本オタクを量産するまでになっていきます。

クールジャパンの狙い

内閣府知的財産戦略推進事務局による2017年1月付け最新のクールジャパン戦略の狙い、という資料をみてみましょう。

クールジャパンは、外国人がクールととらえる日本固有の魅力(アニメ、マンガ、ゲームなどのコンテンツ、ファッション、食、伝統文化、デザイン、ロボットや環境技術)
クールジャパン戦略は、クールジャパンの①情報発信、②海外への商品、サービス展開、③インバウンドの国内消費、の各段階を効果的に展開し、世界の需要を取り込むことで、日本の経済成長につなげるブランド戦略。

以上のようになっています。

さらに①情報の発信(日本ブームの創出)、②海外展開(海外でかせぐ)③インバウンド振興(国内で帰ぐ)の効果的展開により我が国の経済成長を実現する、と謳っています。