このように強気な「ドS」ですが、実は一度劣勢に立たされると、意外に折れやすい一面も持っています。
なぜでしょうか。
「ドS」は理想主義者であり、自分だけの価値観でものごとを判断します。
そのため、客観的に見てどうか、というよりも、自分の価値観に照らして水準に達しなかったり、あるいはその水準に到達するための努力が自分に足りなかったことを自覚したりすると、落ち込むのです。
これは、ひょっとしたら、「ドS」キャラ以外には、ちょっと理解しがたいメンタリティーかもしれません。
たとえば、高校野球を例にとりましょう。
地区大会でこれまで一回も勝てなかった野球部が、今年の夏は3回戦まで進出し、甲子園まであと一歩というところまで駒を進めたところで敗退したとします。
外から見れば、前年までと比べればずっと頑張ったように見え、「よかったね〜」などと称賛の言葉を投げかけるかもしれません。
これに対して、普通の男性なら、「ありがとう」などと普通の返しをするでしょうが、おそらく「ドS」なら、そういう返答はしないでしょう。
「何を言ってるんだ、俺(たち)の実力は、こんなもんじゃねえ」「ふざけるな、バカにしてるのか?」などと逆ギレされるかもしれません。
でもそれは、ほんとうはあなたに怒っているのではなく、ふがいない自分(たち)に、自分の中で理想としている自分に対して怒っているのです。
自分で自分が許せない。
そんなイライラが、ついつい周囲に対する乱暴な言動に表れてしまった。
そんな自分がさらに許せない――。
完璧主義者の「ドS」の意外に「弱い」一面。
そんな素顔を垣間見てしまったあなたは、心に何かが灯るのを感じてしまいます……。
おっと、危ない。
こんな風に気持ちを持ってかれたら、恋に落ちるまで、もうあとほんのひと押しです。
マンガなどで人気なドS
では具体的に、どんな「ドS」キャラが人気を呼んでいるのでしょうか。
ここではメジャーなマンガを題材に、この点を調べてみましょう。
ダメな私に恋してください/黒沢 歩
柴田ミチコ(29歳)は健康器具の通販会社に務めるOL。
合コンで知り合ったイケメンの大学生に、高価なプレゼントを貢ぐのが唯一の楽しみだったが、ある日会社が倒産し、路頭に迷う。
職探しに奔走していた時、前の会社の上司である黒沢歩と出会い、食事を奢られてしまう。
黒沢は、別名「営業のブラックデビル」と呼ばれ、自分にも他人にも厳しいドSキャラ。
毎日のように怒鳴られ、「世界で一番苦手」と思い込んでいた相手だったが、何の因果のめぐり合わせか、転職先を辞め、祖母の営んでいた洋食屋を継ぐという黒沢に、ミチコは店員として雇われることになる。
料理好きで几帳面、ぶっきらぼうだが、実は心優しい一面を持つ黒沢の、会社では見えなかった素顔に触れるうち、ミチコの気持ちには変化が現れて――。
とこんなストーリーですが、「ブラックデビル」とまで忌み嫌っていた黒沢への見方がどんどん変化していく過程がなんともいえずじれったく、うずうずしちゃいます。
「落差萌え」という言葉がありますが、ドSの見せる「意外な優しさ」は、そんな落差の最たるもの。
会社では厳しかった上司が、実は家族、犬や猫には、目に入れても痛くないほどのかわいがりぶりだったり、あるいはオフの時間には、会社では見せないやさしい一面を見せたりすると、なんだか胸がきゅんと痺れてしまったりするんですよね。
「意外性」「予想外」こそが人を恋に陥らせる第一条件だとすると、ドSのこういう「落差」って、恋愛の最終兵器なのかもしれません。
黒崎くんの言いなりになんてならない/黒崎 晴人
中学時代の地味な自分を変えたい――高校入学を機にメイクや行動を一新、明るく積極的になろうと努力するヒロイン、由宇(ゆう)は、家庭の事情で高校の寮に住むことに。
寮長は、容姿も性格も抜群なイケメンで女子生徒のあこがれ、通称「白王子」、白河タクミ。
有頂天になる由宇だったが、そこには「黒悪魔」と呼ばれる黒崎晴人も。
白王子と初デートを実現して喜んだのもつかの間、なぜか黒悪魔に、強引なキス、「壁ドン」「顎クイ」で迫られる由宇。
「お前は俺に絶対服従しろ」と徹底的な上から目線で接する黒悪魔。