映画とは、青年の夢と挫折である、と映画評論家の誰かが言っていた記憶があります。

近代小説のテーマもたいていこれです。

あるフランスの経済学者は、19世紀文学、スタンダールやフローベールの主人公たちには、今でも自分のことのように共感できると言っていました。

田舎の秀才が押し出されるようにパリへ上京し、彼女ができ、野望を抱き、最後に取り返しのつかないほど大きな挫折を経験する。

というストーリーです。

ただし彼はアングロサクソン(イギリスとアメリカのこと)はちょっと違うといいます。

フランス社会は安定しているが、アングロサクソンは社会の変動が激しいそうです。

そういえばアングロサクソンの影響が強い日本も社会の変動の激しいところです。

それだけにあちこちに頭をぶつけてしまい、挫折するポイントは多いのでしょう。

フランスのように、色恋、社会的上昇の野望だけカバーしていればいいというわけにはいきません。

20世紀になるとフランス文学より断然英米文学の方が面白いのは、こういう理由なのかも知れません。

そして日本人芸術家の描く、夢と挫折も決してひけを取っていません。

挫折とは?

日本の辞書には、仕事、事業、計画が中途で失敗しダメになること。

またそのために意欲・気力をなくすこととあります。

やはりフランス文学の主人公たちのように人生そのものの挫折というより、軽い使い方になっているようです。

社会の変動に伴い、より身近な場面でも頻繁に使われるようになった、ということでしょうか。

挫折と失敗は違う


挫折を解説する辞書に、失敗という言葉が出ています。

挫折と失敗はどう違うのでしょうか。

失敗とはそこでいったん動作の途切れた現象、挫折とは一時的な現象で、再チャレンジ可能というニュアンスが多く含まれているのは間違いないようです。

経験者の13個の教訓

以下有名人の言葉から、参考となる教訓を拾ってみましょう。

トーマス・エジソン


トーマス・エジソンは、日本人にとって欧米偉人の象徴のような人です。

伝記シリーズにおいては、欠くことことのできない絶対的な定番です。

蓄音機、電話機、電球、映写機などの発明に成功したことはあまりにも有名です。

その成果は今も現代人の生活に多大な影響を与えて続けています。

また現代まで続く大企業・ゼネラル・エレクトリック社の創業者でもあるところから分かるように、起業家・事業家としても優れるなどマルチな活躍を見せました。

自動車王のヘンリー・フォードとならぶ近代産業社会の基礎を築いた象徴的存在です。

また、小学校を中退してしまうなど学校生活とは、まったく相いれなかったエピソードなども、あまりにも有名です。

1.それは失敗じゃなくて、その方法でうまくいかないことがわかったんだから成功。

トーマス・エジソンは「努力の人」「不屈の人」と呼ばれます。

持って生まれた好奇心はすさまじいものだったようです。

1+1=2ということでさえ、鵜呑みにできなかったというエピソードも残っています。

あらゆる方法を試すということは、普通の人には気の遠くなる作業で、とてもやりきれるものではありません。

しかしエジソンにとっては、何ら苦にならなかったのでしょう。

彼にとって、その方法でダメということは、確実に成功に近付いているわけであり、喜びといっていい発見なのでしょう。

2.私は今までに一度も失敗したことがない。電球が光らないという発見を、今まで二万回したのだ

エジソンはまた すさまじいエネルギーを発揮しました、その生涯における発明と技術革新は1300件にものぼります。

しかし名声を得た後もさまざまな人間くさい失敗を重ねます。

直流送電にこだわり、交流送電の仇バンテージを見抜けなかったケースもあります。

さらにライバルへの非難や妨害工作などは度を越していたようです。

結局、J・P・モルガンのような大スポンサーにも見限られています。

ひょっとするとそういうことも含め、失敗などなかったことにしたかったのかもしれません。

実に人間臭い偉人で、こうした欠点すら人気の一因になっているようです。

アルバート・アインシュタイン


アインシュタインは20世紀最大の物理学者、20世紀のMan Of The Centyuryなどと、最大級の賛辞を得ています。

その一般相対性理論はあまりにも有名です。

物質世界の成り立ちを解明した究極の天才というイメージをまとっています。

とはいえアインシュタインといえども、私たちと同じ人間であることには変わりありません。

成果を得る前はもちろん、巨大な名声を確立した後も、物理学の将来の展開を見通せなかったことなど、いろいろと間違いは付きまとっていたようです。

3.一度も失敗したことがない人は、何も新しいことに挑戦したことがない人である。

一度も失敗したことがない人など、現実の世界にいるわけはありません。

アインシュタインのこまごました失敗などは、巨大な業績にかき消され、まったく目立たなくなってしまいました。

ときにアインシュタインは、決してそうではない、研究に失敗はつきものだった、と言いたくなるのに違いありません。

とくに後進の科学者に対してはそう強調したかったのでしょう。

これはそうした気持ちを表した言葉だと思います。

ビル・ゲイツ

ビル・ゲイツという人は、実際にはどこまで独創的な経営者だったのでしょうか。

これについてはいろいろと疑問が残ります。

スティーブ・ジョブズとの競争の中でよりうまく立ち回った人、Windows95で成功してからは徹底的にライバル企業をつぶした人という印象です。

ところが本人にセレブ志向がまったくないこと、慈善活動に熱心なことなどから、そのイメージは多重になっています。

時代の革新者となったのは単なる偶然で、ジョブズのようなオリジナリティはなく、あくまで成功した経営者の範疇から出てはいないように思います。

4.成功を祝うのはいいが、もっと大切なのは失敗から学ぶことだ。

ビル・ゲイツは失敗から謙虚に学んだ結果、やはりライバルは叩きつぶすべき、という結論に至ったのかもしれません。

Windowsの発表はマッキントッシュのアップルを出し抜く結果となり、アップルとの訴訟合戦に発展します。

ゲイツはWindowsを守るためあらゆる手を打ちます。

標的はアップルにとどまりません。

エクスプローラーのライバルだったネットスケープをつぶし、ワード、エクセルのライバルも市場から追い出しにかかります。

妥協はありませんでした。

これこそ彼が成功を祝う前に行った、もっとも大切なことなのでしょう。

ヘレン・ケラー


ヘレン・ケラーは、何か具体的な作品という業績を残したわけではありません。

その生い立ちから行動まで人生そのものが作品であり、その作品は障害者福祉の象徴となりました。

行く先々でこの問題に光を与えていきました。

伝道師そのものでした。

人を感化する大きなパワーがあり、どこへ行っても尊敬され、深い印象を与えました。

彼女の物語はそのまま伝説と化しています。

5.元気を出しなさい。今日の失敗ではなく、明日訪れるかもしれない成功について考えるのです。

失敗を引きずらないことは、成功の鉄則です。

集中力の高い人はこれができることによって、よい仕事をしています。

しかし普通の人では失敗を引きずらないだけで精一杯です。

ただちに明日のことまで頭はまわりません。

まして成功イメージを描くなどなおさら無理です。

この言葉には、ヘレン・ケラーの強さが集約されているのでしょう。

原田泳幸

職業、プロ経営者と言われる日本では異色の存在です。

電子機器メーカーを渡り歩き、最後にアップルコンピュータ―の最高幹部(米国本社副社長)にまで上り詰めたキャリアが、最大の個人資産となりました。

それを生かし日本マクドナルド、ベネッセなどの経営請負人となります。

ただしその手腕に対する評価は両論あるようです。

6.僕は、成功の10倍は失敗している。

この言葉は、ファーストリテイリング(ユニクロ)創業者・柳井会長の言う「1勝9敗」とまったく同じ意味です。

中小企業の創業経営者なら1勝19敗の人もいるでしょう。

実際にそうした人たちは、想定していなかった商品が偶然ヒットしただけのことが多いものです。

すばやくそちらへ経営資源をシフトした結果、何とか会社を保てているというケースがほとんどなのです。

みんな偉そうな顔をして成功者らしいことをしゃべっていても、本当は失敗ばかり繰り返していました。

経営者とは、ほとんど唯一ともいえるチャンスをものにした人ばかりです。

この言葉は、そのことを正直に語っています。

孫正義

孫正義は、人たらし、じじ殺しという人情豊富な面と、しっかりしたビジョンを掲げる創業者としての側面、これら二つをうまく合わせ持っています。

彼は若いころから電機業界大物たちの心をしっかりつかみ、じじ殺しという異名を取りました。

孫には○○電機の△△副社長がついて支援している、などという評判です。

これはまだ金も信用も不足していた彼にとって、最大の財産でした。

そして彼はそれを最大限に利用して業界での地位を上げていきます。

失敗は必要。むしろできるだけ早く、失敗するほうがいいでしょう。小さな失敗を積み重ねることによって成功が見えてくる。

孫正義はあまり失敗したように見えません。

この言葉にあるように、早いうちに小さな失敗を積み重ね、事業家から投資家へとスタンスを変化させていきます。

それにより個々の事業の失敗をはるかに上回る巨大な成功を手にいれています。

投資家の方が性に合っていたのでしょう。

目下IT投資家としては向かうところ敵なしの様相です。

本田宗一郎

石田退三というトヨタ自動車の社長、会長を務め、トヨタ「中興の祖」と呼ばれた人がいます。

松下幸之助の最も尊敬する経営者です。

その石田さんは、生涯で恐ろしい男を2人見たと語っています。

一人はトヨタグループの創始者・豊田佐吉、もう一人はホンダ創業者の本田宗一郎です。

二人とも人の話を全く聞かないことで共通していたそうです。

石田が経営的なアドバイスをすると「わかった、わかった。」と返事だけはするそうですが、絶対に自分のやりたいことをやめようとしななかった、ということです。

ここには典型的な創業者の姿が現れています。

7.私がやった仕事で本当に成功したものは、全体のわずか1%にすぎない。99%は失敗の連続であった。そして、その実を結んだ1%の成功が現在の私である。

1勝9敗からさらに進み、1勝99敗というわけです。

本田宗一郎という人は、実際に作業服を着て油にまみれていた人です。

技術的な失敗の数は、柳井さんのユニクロが、商品開発や販売戦略で失敗した数とは比較にならない多さのはずです。

そう考えれば、一桁違う、この言い方の違いも十分納得できます。

8.失敗が人間を成長させると考えている。失敗のない人なんて、本当に気の毒に思う。