人間の表情は、喜怒哀楽に分かれています。

ゴールデンウイークやお盆、お正月には、家族で故郷に帰って、駅に出迎えに来てくれたおじいちゃんやおばあちゃんとお孫さんの笑顔のシーンが微笑ましいものです。

こんなニュースをTVで見ていると、いつものことながら見ている方も嬉しくなってくるものです。

自分も同じような出会いがあるからかも知れません。

それに対して、とても険しい表情でインタビューを受けているシーンも時々見ます。

これも事例をあげるとキリがないのですが、先日もありました。

大相撲の世界で、大横綱が若手の力士に暴行事件を引き起こした時です。

この事件の顛末について、日本相撲協会の会長や幹部が並んで、一様に険しい表情で記者会見を行っていた時です。

マスコミによって連日それに関する報道が流れていましたが、日本相撲協会としてその経緯について報告していたのです。

報告する協会側の人も、質問する記者たちも、それぞれが本当に険しい表情で臨み、その会場の空気も相当険しい雰囲気が漂っていたようです。

一問一答が重苦しくて、見ている方も「何が起こったんだ?」「どうなるんだ?」という気持ちで固まってしまったのです。

暴力事件だけではありません。

官僚のセクハラ疑惑もありました。

女性記者からの取材に対して、唐突に卑猥な言葉を投げかけている官僚の声が録音されていて、マスコミを通じて音声も公開されたのです。

この会話の録音が公開されても、取材に対してなおも否認を続ける官僚の顔は、怒声も交えて非情に険しいものだったのです。

質問する方もされる方も、怒りや緊張のためにとげとげしい表情になっており、このような状況を「険しい」と表現するのです。

険しいとは?

普段の会話で「険しい」と言う言葉を使う時は、登山について話しする時です。

休日を利用してみんなで山登りの計画を立てる時に、参加する人達の山登りのレベルを考えながら、どこに挑戦するかを検討するのです。

まだ経験が浅いとか年齢が高い人が混ざっていると、険しいルートを避けて穏やかなルートを検討するのです。

みんなはいろんな山を提案するのですが、「あの山は上級者でも登るのは相当険しいと聞いているので、今回はその山は外したい」などと相談します。

すると、「中級者でも登れるルートがあるらしい。

そこはそれほど険しくないそうだがどうだろう?」などという意見も出るのです。

この場合の「険しい」とは、山や崖などの傾斜が急で、登るのが困難なさまを意味しています。

このように傾斜が急で登るのが困難な状況を「険しい」と表現する時と、先ほどのように緊張や怒りで言葉や表情がきつくなっている時も「険しい」と表現します。

さらに、近々開催が予定されていたイベント会場が、前日に襲来した大型台風の影響で施設が破壊されて交通網にも影響が出たために、予定通り開催されるかどうかは「非情に険しい状況だ」との主催者側のコメントが出るのです。

台風によって発生した問題が、「早期解決が困難だと予想される時」にも、「険しい」と表現するのです。

このように、①怒りや緊張で言葉や表情がきつくなる時、②山や崖の傾斜がきつくて登るのが困難な時、③抱えている問題が厳しいので解決できないと感じる時、④自然現象が荒々しくて近寄り難い時、などに「険しい」と表現するのです。

意味

自分の前に立ちはだかった厳しい状況に対して、圧倒されるような威圧感を感じた時の気持ちを表します。

もうどうにもならなくなって、困難が続くとネガティブな考えしか浮かばなくなっているのです。

誰もが一度は経験したことがあると思いますが、その時にはもう二度とこんな気持ちになりたくないと思うものです。

険しい状況が続く時には、時として同じ苦難が襲うこともあるようです。

一難去ってまた一難の連続になることもあるようです。

人間は弱いもので、身の周りで険しいことが続けて起こると、スピリチュアルな考え方にすがるようで、急に神様に頼ってしまったり神秘的な事柄に取りつかれてしまいます。

現実的には、険しい状況に追い込んだ責任は自分にもあることを知るべきです。

古代から、自然の驚異は肌で感じているようで、気候の異変は食料の確保に大きな影響を与えるので、険しい事態に陥らないように雨ごいをしたり豊作を祈願する行事も各地に多いのです。

では、険しいという意味について、もう少し考えてみます。

山や坂などの傾斜が急で往復が困難


自然の中をロードバイクで疾走する快感は、経験した人でなければ分からないと思います。

休日に自慢のロードバイクに跨って、景色の良い海辺の道路を走っている人をよく見かけます。

景色を見ながら潮の香を吸い込みながら、軽快に走るのです。

ロードバイク専用の道路があると、5~6台が一列になって走る光景をよく見ます。

混んでなければ、平地では1回に50km程度の走行距離は普通です。

ドリンクさえ持っていれば、慣れた人なら平気で走れる距離なのです。

しかし、山や長い登り坂を越えて行くには、相当の訓練が必要です。

普段から脚力を身に付けておくことが必要です。

話が脇道に逸れますが、世界的に見ると自転車ロードレースの中で頂点に立ってるのがプロが走る「ツール・ド・フランス」です。

世界で約190ヵ国で放送されて、視聴者は実に約35億人とも言われています。

プロのロードレースですが、走行距離は約3300km、高低差が2000m以上という険しいコースを、23日間をかけて走り抜くのです。

山や坂などの傾斜が急な山岳コースと、平坦なロードを走る平坦ステージに別れているようです。

普通の人なら、こんな傾斜が急な難コースは走破が困難で非情に険しいことから、挑戦は無謀と思われます。

ツール・ド・フランスを走るプロの選手にとっても相当険しいレースで、チーム一丸となってバイクのメンテナンスもできるように伴走車を従えての挑戦になっているのです。

ロードバイクだけではありません。

箱根駅伝では傾斜が急な坂道を、往路に渡って走り抜くのです。

とても険しいマラソンと言えます。

これから先に困難が予想される

日本ではほぼ絶滅されていると思われていた麻疹(はしか)が、再び流行の兆しを見せているとTVのニュースで放送されていました。

麻疹は、予防接種で防げる病気なのですが、日本でも感染が確認されているようです。

ニュース番組で解説していた内容では、日本人の26歳から39歳の成人では、国際標準である2度の予防接種を受ける機会がなかったことによる影響とのことです。

先進国では過去の病と言われる麻疹で、日本でも2015年から3年間感染が確認されていなかったのです。

それが、2018年の春から感染が広がって、5月には患者が100人に達したそうです。

マスクや手洗いでは予防はできないようで、空気感染で広がります。

免疫がない人は、予防接種を受けるしか手立てがない険しい状況になっているようです。

麻疹のウイルスが国内に持ち込まれたのは、海外から日本を訪れる旅行者によるものだそうです。

水際で防ぐにしても、保菌者かどうかは一人ずつ検疫するのは困難であり、これから先も困難が予想されます。

こんな防疫体制では完全に防ぐことは困難であると予想されるので、ますます険しい状況に陥ると思われます。

このように、これから先の予想では困難が想定される時には、険しいという言葉が使われるのです。

とげとげしい

これは険しいと感じる時には、ものごとに行き詰ってにっちもさっちも行かなくなった時です。

万事休すの状態で、もはやこれまでなのです。

そうなると、何ごとにも過敏になってものの言い方や表情などがいかにも険悪できつくなるのです。

この状態は、とげが立ったように刺々しい(とげとげしい)と表現し、険しい顔つきになるのです。

他の人が何か提案しようものなら、たちどころに噛みついて罵倒してしまう雰囲気なのです。

誰も手助けしようとは思わず、できるだけ早くその場を立ち去りたい気持ちなのです。

「君子(くんし)危うきに近寄らず」なのです。

危険なもの、失敗しそうなこと、破滅を導くような険しい場面には、刺々しい人間関係が見られます。

険しい人間関係はみんな避けるようです。

かどだっている

「かどだっている」とは「角立っている」と書きますが、角が尖って刺々しい状態の言葉です。

これと反対に、みんな上手く行っている時には「円満」という表現を使い、角張っていなくて穏やかで丸い雰囲気を指しています。

「角立っている人」は、何か問題が起きた時にすぐに感情的に反応してしまいます。

普段から理屈っぽい人に多いようですが、正論を振りかざして誰かを責めてしまいがちになるのです。

反論しようものなら、とことんまで口で反撃するタイプなのです。

「物も言いようで角が立つ」ということわざのように、敢えて角が立つように話を持って行くようにも思えます。

この時の表情とは、険しい表情と言えるのです。

荒々しく人を寄せつけない

険しい時の性格は、荒々しくて誰も人を寄せ付けない雰囲気なのです。

険しい感情を持つようになった理由は何かあるはずですが、そんな事を解決しようとか慰めて心を落ち着かせようなどという行為は、全て払いのけられる状態なのです。

ともかく、近くに誰も寄せ付けないのです。

チャンピオンベルトを賭けたボクシングのタイトルマッチで、挑戦者は終始優位に試合を進めて行きました。

どちらもダウンを奪うことはできなかったのですが、後半は明らかに挑戦者の方が手数も多くポイントを稼いでいるように思われました。

最終回も結局壮絶な打ち合いになって、挑戦者がチャンピオンをコーナーに追いつめて連打を与え、ダウン寸前のところまで詰め寄りました。

終わりのゴングが鳴ると同時に挑戦者は勝利を確信して喜んで飛び上がり、チャンピオンはうなだれて力なく椅子に腰かけてしまいました。

誰もが挑戦者の勝利を想像したのですが、判定はなんとチャンピオンの方に上がったのです。

茫然自失の状態でリングにたたずむ挑戦者は、判定に不満を漏らして主審に詰め寄りますが、判定はもちろん覆りません。

リングから降りて控室に戻る挑戦者に、セコンドやファンが押しかけますが、険しい表情の挑戦者は荒々しく人を寄せ付けないのでした。

判定に対する怒りでうち震える心を表しているのです。

怒りやショックで口を閉ざし、我慢がならないようなのです。

終始険しい表情で控室に戻ったのです。

険しいの類語や関連語


険しいという状態の雰囲気は分かってもらえたと思います。

険しいと感じたので、刺々しい態度や言葉を使い、相手を挑発するようにもなってしまうのです。

では、険しいという言葉の類語や関連語についてもまとめてみました。

1.鋭く傾斜しているさま

最近の若者にも人気の「ボルダリング」というスポーツがあります。

自然の岸壁をよじ登ることもありますが、若者や子供も手軽に楽しめるように、ホールドという突起を壁に作りつけた高さが4m程の人口壁を屋内に作っているところがあります。

ロープなどの道具を一切使わずに、素手でよじ登る競技なのです。

もちろん、万一の時のことを考えて、安全面では対策をしていますが、自然の険しい岩山をロープや器具を使ってよじ登るようなロッククライミングとは異なるものです。

このボルダリングというスポーツをやった経験がない人にとっては、垂直な壁の威圧感は相当であり険しいスポーツだと感じられます。

このように、急な坂や切り立った壁などは、険しい以外の何ものでもありません。

鋭く傾斜している様子を下から見上げた時に、険しいなあと思うのです。

仲間5人と近くの山にハイキングに出かけました。

家族で山登りができるように、なだらかな登山道が整備されていて、小さな子供連れでも楽しく登れるのです。

天気の良い休日には、お弁当を持って楽しそうに山登りをする家族連れも見かけます。

そんな標高が500mくらいの山なのですが、ハイキング道を外れると、急な坂道を木の枝をかき分けながら登っていく登山道もあるのです。

中学生や高校生にもなると、そちらの道を登っていく人も多いようです。

足元には大木の根っこがむき出しになっているし、岩も転がっているところを通り抜けるのです。

しかも、時には急な坂になっていて、前かがみで木の枝や岩を掴みながら登っていくのです。

こんな急な坂に出くわすと、上を見ながら「険しいなあ」と叫ぶのです。

このように、予想以上に急なところでは、「険しい」と感じるのです。

切り立った

「切り立った」というキーワードで思いつくのが、中国の険しい岩山の風景です。

中でも有名なのが湖南省の張家界市(ちょうかかいし)にある武陵源(ぶりょうげん)です。

ご興味のある方は、ネットで検索すればその風景写真が掲載されていますのでご覧ください。

山全体がのこぎりの歯のように天に向かって切り立っているのです。

数億年の年月をかけて作り出された自然の仙境と言えます。

中国の山水画にもよく登場します。

映画通の人には、映画「アバター」のモデルになった場所として有名になりました。

「武陵源の自然景観」として世界遺産にも登録されているのです。

この切り立った岩山の景色を見ると、絶対に登りたくない険しい岩山だと思うはずです。

このように、足がすくんでしまうほどの切り立った状態を、「険しい」と表現するのです。