日本語で「じゅうぶん」という言葉は、日常でごく自然に使われる言葉です。

「もうじゅうぶんだよ」や「この経費はじゅうぶん足りています」「彼にはじゅうぶんつくしました」など、何かが満ち足りている状態や、何らかの行為が満足に作用している状態です。

でも、「じゅうぶん」という言葉には漢字が二種類あります。

充分」と「十分」です。

この漢字の違いによる意味の違いや使い方の違いはあるのでしょうか?

そもそも「充分」という漢字の意味はどのようなものなのでしょうか?

今回は「充分」という言葉、漢字の意味や「十分」との違い、効果的な使い方について紹介していきます。

身近な言葉である「充分」を使いこなして、正しい表現を見につけましょう。

充分の意味解説

それではまず、充分という言葉の意味について詳しく解説していきます。

充分には大きく分けて、名詞としての使い方と副詞としての使い方があります。

どちらも日常で頻繁に使われるので、理解して使いこなせると便利です。

名詞として使う充分の意味

名詞として充分という言葉を使う場合、正確には代名詞として充分という言葉を使用します。

代名詞とは「それ」や「あれ」などの、名詞の代わりに物や人物を表す言葉です。

充分も使い方によっては代名詞として使用できます。

物事が満ち足りて、何の不足もないさま

充分とは、物事が満ち足りて、何の不足もないさまを表しています。

そのため、そのような状態を表す文章で、充分という言葉が使えます。

例えば、「私には多くの資産があるので、充分に足りている」という文の場合、充分が資産の代名詞として機能しています。

その他にも、「非常食をたくさん備蓄してあるので、備えとして充分にある」

「最新のパソコンを会社に設置したので、充分に機能している」などとも使うことができます。

充分という言葉を使う時は、言葉に意味が満ち足りている意味があるため、文章も肯定的なものが多くなります。

しかし、「私は毎日ケーキを食べているので充分だ」といった、やや否定的にもとれる文章でも使われます。

副詞として使う充分の意味

充分は、副詞としても使用できます。

副詞とは、動詞や形容詞の程度を表現する言葉です。

副詞を使うことでより詳細な状態を表現できます。

充分の、副詞としての例文

副詞として充分を使う場合、原則として動詞や形容詞の前に充分を使います。

そうすることで、動詞や形容詞と関連付けられて意味が通じるようになります。

例えば、「大きい」という形容詞の副詞として使う場合は、「この靴は、兄の足のサイズに充分な大きさがある」「この家は充分な大きさがある」などと使うことができます。

充分を使うことで、その大きさが満ち足りていることが分かります。

動詞の副詞として使う場合は以下のような文章のように使います。

「彼の車は中古車だが、充分走る」「この果物はまだ熟していないが、充分食べられる」などと使えるでしょう。

充分と十分、どっちを使えばいい?

文章では充分と十分、どちらを見かけることがあると思います。

正確な文章を書きたい場合は、どちらの文章を使えばよいか迷ってしまいますね。

実際に使い分けをして書いている人は、あまり多くないようです。

あなたはどちらを使いますか?

実際にあなたは充分と十分、どちらを使いますか?

今まで気にしていなかった人は、何となく充分を、または十分を使っていたのではないでしょうか?

充分と十分の違い

結論から先に申し上げますと、充分と十分、この二つの言葉の違いは、漢字の違いである、といえます。

ただし、公文書では十分が用いられています。

そのため、公的な文書を作成する場合は十分を使用する必要があります。

それ以外の文章では、充分でも十分でも、どちらでも間違いではないのです。

ですので、今まで私的な文書で充分という漢字を使用してきた人も安心してください。

どちらを使用していても、問題なく正しい文章として通じています。

意味はどちらも同じ

充分と十分、漢字は違いますが、意味はどちらも同じです。

どちらも物事に満足がいく状態で、満ち足りた状態を表します。

そのため、前述した公文書を書く以外ではどちらの文字を使用しても良いのです。

ただし、どちらの漢字を使うかで、より意味が通じやすくなる場合もあるので、その場合は使い分けると便利です。

どのようなケースでどちらの漢字を使うかは、後ほど詳しくお伝えします。

十分という字を使う場合は、時間の表現と区別する必要があります。

文章に出てくる十分という文字が、満ち足りている十分なのか、時間を表す十分(10分)なのか区別しにくいことがあるからです。

例えば、「十分に時間があるので十分あれば十分」などといった文章では読みずらいでしょう。

謎解きのような面もあり面白みもありますが、社内のメールやお客さん宛の手紙などでは使用を控えるべきです。

上記の文は「十分に時間があるので10分あれば十分」と書き換えた方が意味がすんなりと伝わります。

読み方も同じ

お気づきかと思いますが、充分と十分という言葉はどちらも「じゅうぶん」と読みます。

意味も読み方も同じなので、逆に混乱してしまうのでしょう。

しかし、簡単な決まり事を守れば使い方は難しくありません。

でも、外国の友達に教える場合は、相手が少し混乱してしまうかも知れませんね。

充の意味

ここでは「充」の意味についてお伝えします。

充とは、中身がいっぱいある、満ちている、いっぱいになる、ふさがる、などの意味がある漢字です。

充を使用した漢字には、充分の他にも、充填や充足、補充や充血、充満などたくさんあります。

どれも何かが満ちる、いっぱいある状態を表しています。

もちろん充分という漢字も同じような意味のある漢字のひとつです。

十の意味

続いて「十」の意味についてお伝えします。

こちらは数字の10を漢字表記にしたものです。

「じゅう」という読み方の他にも「とお」とも読みます。

なぜこの十という漢字が満ち足りている状態を表す漢字として使われているかといいますと、数字が大きくなるにつれて、より満ち足りている状態を表すことができるからです。

この場合は十が一番満たされた状態と考え、一から順に三、四…と順々に満たされていき、十で完全に満ち足りている状態とします。

そのため十分という漢字を使用することで、満ち足りている状態を表現しているのです。

因みに、同じように物事や状態の程度が満ち足りた状態を表す数字に百(100)があります。

こちらは1~100まで、より細かい段階で満ち足りた状態を測る際に使われます。

最大で100%という表現が最も多く使われているでしょう。

100を最大とする場合は、10(十)はほとんど満ち足りていない状態になりますね。

充分:気持ち的に満ち足りている

先ほど充分と十分は意味や読み方が同じなので、公文書以外はどちらを使用しても問題ないとお伝えしましたが、使い分けるとより意味が通じやすくなる面もあります。

使い分けをする場合は、「充分」という漢字を使用する際は、気持ちが満ち足りている状態を表す際に使用しましょう。

つまり、精神的な事柄に関係するケースで使用するのです。

例えば、「あなたの仕事ぶりに充分満足している」

「おいしいものが食べれたので、充分満足です」

「今日の演劇を充分楽しんだ」

などといった、気持ちの満足を表す際に使用しましょう。

十分:数値的に満ち足りている

数字の十を使用する際の「十分」は、精神的な事柄ではなく、物理的な事柄や数字的な事柄に使いましょう。

例文を挙げると、「今日のランチは十分食べた」

「君の成績は十分に良い」

「このペースで行けば十分に間に合う」

などと使うことができます。

ただし、先ほどお伝えしたように、時間の十分(10分)と同じ文章で使うと混乱が生じる可能性があります。

その場合は公文書でない限り、充分を使用しても問題ないといえます。

状況に応じて賢く使い分けができればベストです。

もともとは十分だった

もともと満ち足りている状態を表す漢字は、十分が使われていました。

やがて時を経る中で、「充足」などの言葉で「充」の字を使用していることから、「十分」の代わりに「充分」という漢字も使われるようになりました。

今ではどちらも頻繁に使用されています。

このように漢字の読み方や使い方は、時代と共に変化していくものもあるのです。

充分と十分の使い方

この章では充分と十分の使い方について、より詳しく見ていきます。

例文をもとに、ケースごとにどちらの文字を使用すれば良いか説明します。

例文を読むことで、感覚的にどちらの漢字を使用すれば良いか分かるようになるでしょう。

意味や読み方は同じなので、どちらを使うとより効果的なのかが分かれば十分です。

お気持ちだけで充分です

この例文は、何を表している文かというと、気持ちに関係することを表しています。

そのため、気持ちの満ち足りている状態を表す、充分を使用しています。

実際の使い方としては、謝罪された際や、何かおもてなしなどを受けそうになった際に、謙虚な気持ちを相手に伝える際に使用できます。

日本人的な、相手を気づかい合う精神が伝わる美しい表現といえるでしょう。

ケーキは5つで十分です


こちらの例文の場合、ケーキの数に対する意見を述べています。

そのため、数字的、物理的な表現をする際に使用する「十分」を使用しています。

ケーキは実際に物理的にあるものなので、この漢字を使用すればOKです。

もし、この例文に気持ちを表す文章が続く場合などは、上手く「十分」と「充分」を使い分けましょう。

例えば、「ケーキは5つで十分です。それだけあれば、私たちは充分に満足できます」というように使い分けることができます。

前者は数に対する満足、後者はケーキをたくさん食べられることで得られるであろう満足感に対して使用しています。

両者の使い分け方を理解している人は、例文のように上手に二つの言葉を使用しています。

あなたも充分と十分の使い分けに挑戦してみましょう。

おもてなしに充分に満足した

日本人の相手をもてなす心、「おもてなし」の心は、世界でも評判の良い精神です。

おもてなしは、時に贈り物など物理的なものを相手に贈ることでもなされます。

しかし、おもてなしを受けて満足するのは、おもてなしを受けた人の心です。

そのため、この場合は気持ちが満ち足りている状態が表されるので、精神的な満足感を表す「充分」を使用します。

おもてなしで充分に満足したとすれば、それは充足された状態を意味します。

精神的な充足感を表す「充」の字から生じた「充分」の代表的な使い方といえるでしょう。

10皿も食べれば十分だ


この例文では10皿という皿の数に焦点を当てています。

そのため、物理的な事柄に使用する、「十分」が使用されています。

ただし、皿の数にも漢字の十を使ってしまうと、文章によっては紛らわしくなる可能性もあります。

そのため例文にあるように、皿の数はアラビア数字で表した方が良いでしょう。

十分を使用したいときは、数字を可能であればアラビア数字にする、と覚えておけば読みやすい文章が書けるでしょう。

どっちか迷ったら十分でOK!

いかがでしたでしょうか?

充分と十分、どちらも意味や読み方は同じでした。

より意味が伝わりやすい使い方はありますが、厳密な区別は公文書での使用以外はありません。

そのため、もしどっちを使うかを迷ってしまった場合は、もともと使用されていた「十分」を使用しましょう。

あまり文章を書く機会がない、公文書を書く必要がない、という人は、充分と十分の意味や読み方は同じであるとだけ覚え、十分だけでも書けるようにしておけば十分です。

もし余裕があれば、精神的に満ち足りている状態を表す際は「充分」、数字的、物理的に足りている状態を表すときは「十分」を使用してみましょう。

漢字には今回のテーマである「充分と十分」の他にも、「恋と鯉」「神と髪」「開けると空ける」などといった、同じ読み方で意味や発音が違うものが多数あります。

それらを調べてみると面白い発見があるかも知れません。