ここで、もう少し踏み込んで「おざなり」と「なおざり」をしっかり使い分けるコツを二つチェックしてみましょう。
何かしらの対応をしているか
響きが非常に似ている二つの言葉ですが、実は「何かしらの対応をしているか」ということで使い分けることができます。
たとえば「おざなり」は「その場しのぎの言動でその場を切り抜けるための対応をする」という意味です。
例文を思い出してみると、デートプランができていなくてもデートをドタキャンすることはありませんし、友達から追及するLINEが来ていてもブロックして逃げようとすることはありません。
しかし一方で、「なおざり」は「その場のトラブルを認識していてなお、その場からさること」です。
そのため「おざなり」の例文に当てはめてみるとデートプランができていない場合はその場に来ることもしませんし、友達からLINEが来ていても見ないふりをして無視をするのが「なおざり」となります。
不誠実であっても一応なんらかの対応をするのが「おざなり」で、全く対応せずに逃げ出して去るのが「なおざり」と覚えると使い分けしやすくなるのではないでしょうか。
語源の漢字からイメージする
音の響きが似ていても全く違う意味を持つ二つの言葉を使い分けるためには、やはり語源の漢字をイメージするのが最も分かりやすいと感じる人も少なくはありません。
「おざなり」の語源である「御座なり」は「座ったままで適当に対応する様子」をイメージできる漢字となるでしょう。
一方、「なおざり」の場合は「猶去り」と既にその場を立ち去っているので、何も対応することなく逃げ出して去ってしまっている様子をイメージすることができます。
全ての間違いやすい言葉が漢字をイメージすることで覚えやすくなるわけではないですし、そもそも漢字表記ができない言葉も少なくはありません。
しかし少なくとも「おざなり」と「なおざり」の場合は「猶去り」の去っている語源を知ることで「対応しているかしていないか」を見分けることはできるでしょう。
今まで漢字表記に苦手意識を抱いていた人も、ぜひ「おざなり」と「なおざり」に関しては漢字からイメージしてみてください。
おざなりの類語
「おざなり」という言葉には、今までの例文で少し解説してきた通り類語が存在しています。
おざなりという言葉を使うことに自信がない場合は、こちらの類語に言い換えて使うことで自分でも自信を持って分かりやすい文章を作ることもできるでしょう。
ここでは、「おざなり」という言葉と似た意味を持つ言葉を五つ紹介していきます。
適切な場面で分かりやすく言葉を使いこなすためにも、こちらも覚えておきましょう。
いい加減
「おざなり」は「座ったままで対応する」という語源を持った言葉です。
そのため「いい加減」という言葉も「おざなり」と似た意味を持つ言葉となるでしょう。
「浮気したのか疑っているのに、彼氏がおざなりな言い訳ばかりするから全く信用することができなくなってしまった」という言葉も「浮気したのか疑っているのに、彼氏がいい加減な言い訳ばかりするからもう信用できない!」と言い換えることができます。
「おざなり」という言葉を使うと少し口語的な印象になってしまいますが、「いい加減」という言葉なら日常的にも使いやすく感じられるのではないでしょうか。
無理に「おざなり」という言葉を使わず、普段から使いやすい「いい加減」という類語で置き換えるのも決して悪いことではありません。
ぞんざい
「座ったままで適当に対応する」ということが「おざなり」という言葉の意味ですので、「ぞんざい」という言葉に言い換えることもできるでしょう。
「ぞんざい」もそれほど日常的に使う言葉ではありませんが、「ぞんざいな扱い」のような使い方を聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
「ある店に行ったら、店員がぞんざいに商品を扱っていたので不快な気持ちになってしまった」のような意味で使うことができる言葉です。
「おざなりに商品を扱っていた」あるいは「いい加減に商品を扱っていた」というように言い換えても不自然ではないことが分かるでしょう。
「おざなり」も「ぞんざい」もそれほど使う言葉ではありませんが、一つ覚えておくのも良いかもしれません。
雑
「ぞんざいな扱い」が「おざなりな扱い」と同じ意味で使われることを知ると、「おざなり」の類語として「雑」という単語をイメージする人も多いのではないでしょうか。
実際、「雑」も「おざなり」と近い意味で使われることが多い単語です。
「おざなり」の語源となっている「御座なり」をイメージすると、誰かに頼まれたことを座ったままで雑に対応している人をイメージすることもできるでしょう。
そのイメージ通り、「おざなりな対応をされて憤慨している」という言葉は「雑な対応をされて憤慨している」という言い換えをすることが可能です。
しっかり誠実に対応するのではなく、その場をしのげれば良いという気持ちで適当な行動をしたり、その場を乗り切るためだけの雑な言い訳ばかりをしていると「おざなりな対応ばかりをする信用できない人」という評価を下されてしまうこともあるかもしれません。
空々しい
実は「おざなり」には「空々しい」という意味もあります。