然りという言葉は普段あまり使う機会も少ないですが、文献や資料などでよく見かける事もあるかと思います。
そんな時に意味をよく理解していない状態だと適切な意味を理解できなくなってしまうので、正しい意味を知っておく必要があります。
この機会に然りという言葉を正しく理解しておきましょう。
今回は然りをテーマにして、然りという言葉の意味や使い方などもご紹介します。
然りとは
おそらく日本語として日常会話で用いるよりも、何かしらの資料文献などで見かける事の方が多いと思います。
まずは然りの基本的な意味からご紹介します。
然りの意味
然りという言葉の意味は、「そのとおりである、そうである、そのようである」というような意味合いとして用いられています。
然りという言葉を普段あまり使う機会がない方からすると、まったく予想していない言葉だったかもしれませんね。
その通りである
然りは、「その通りである」という意味で使われることが多いでしょう。
例えば返答として「然り」と言えば、「その通り」ということになります。
一般的な話し言葉で使われることは少ないですが、年配の方が使うことはあるかもしれません。
また、漫画や映画、資料などで使う場合もあるでしょう。
然りの由来
然りと言う言葉を知っていく中で、然りという言葉がどの様にして生まれたのかという事も知っておけばその意味を深く理解することにつながります。
具体的に然りという言葉の由来がどのようなものなのか、ここからは簡単に触れていきたいと思います。
しか(然)+あり(有り)
然りという言葉の由来は、『しか(然)+あり(有り)』という形がもともとの然りという言葉の原型になっているといわれています。
「然」という言葉ですが、これ単体で見た時に、そこまで意味をもっていないと思うかもしれません。
しかしそれは間違いであり、「然」は単独で意味を持っています。
然という言葉の意味だけを見てみると、「既にある事物、状態などを受けてそれを支持する語。そのように。そう。」という意味を持っています。
そのあとに「あり」がついていますね。
そうなると、「既にある状態」に「ある」がプラスされているので、然りという言葉の意味の「その通りである」という言葉になるのです。
然りの使い方を例文でご紹介
然りと言う言葉の基本的な意味合いは、ある程度理解いただけましたでしょうか?
然りという言葉の基本的な意味を理解したところで、ここからは然りという言葉を実際に使った例文を交えて、使い方をご紹介していきたいと思います。
意味を理解するだけではなく正しい使い方を例文を交えて理解していくことで、より実践的な使い方していただけるようになります。
自分自身の使い方の知識として吸収されていくことにもつながりますので、より日常生活で然りという言葉を間違いなく使えるはずです。
では具体的にどの様な使い方をするのかということを一緒に確認していきましょう。
相手の質問に対して答える場合
まずはじめにご紹介する然りという言葉の使い方は、相手の質問に対して受け答えをする場面で使われることが想定されます。
例えば、何かしらの話をしている時に相手が自分に対して質問をしてきたとします。
それが本当であると答えるときに「然り」が使われます。
「はい」か「いいえ」で答えられる質問の「はい」と受け答えする時に使用してください。
「~は本当か」「然り」
例えば、相手から「昨日火事があったのは本当か?」などと聞かれた際に、「然り」と答えると「本当だ」と答えたことになります。
現実的に考えると、そこまで然りという言葉を使用する頻度自体は少ないですし、使っている人もあまり見かけた事がないかもしれませんね。
しかし、何らかの資料や漫画などでこのような受け答えを行っている場面はあります。
意味を正しく理解しておけば、そのような時にでもしっかりと把握することが出来ますので、この機会に然りという言葉の正しい意味や使い方を身につけてください。
強調したい場合
意味を強調したい場合にも「然り」を用いることができます。
より強調することで、相手に伝えたい言葉の意味を自分で強弱をつけて話すことができるので、より具体的に内容を理解してもらうことにつながるというメリットがあります。
たった少しのニュアンスで話の印象などは大きく変わってくるので、わざとそのことを肯定することによって、上手に相手に話を伝えることができるでしょう。
然りという言葉は、何も相槌だけで使う言葉ではなく、このようにして話を工夫する使い方なども出来きます。
このような使い方ができると然りという言葉の幅が広がりますね。
「~であるのか。然り。」
例えば、「今までに私が行ってきた行為は間違っていたのか、然り」というような言葉を使う事によって、「今まで自分が行ってきた事は間違いであったという事が正しい」という意味を持つようになります。
この文章は、今まで自分が間違った事をしてきた事を強調している文章だと解釈できます。
逆に、「私はこれまでずっと肉体を鍛えて、精神面も想定してトレーニングを行ってきた、然り」というような言葉を使えば、「これまでに自分自身が身体を鍛えてきたのは、精神面も鍛える意味で行ってきて、それは正しかった」というような意味合いとして解釈できます。
なので、その前面に置いている内容を肯定したり、時にはわざと否定して、最終的にそのことが正しいというような意味として使います。
前面の部分が正しいか間違っているのか、という事を使い分けるようにすると肯定にも否定にも使えて、よりその部分を強調できるようになります。
ちょっと難しい使い方になるかもしれませんが、把握しておけば便利な使い方ができるはずです。
1つの事柄に対してもう一つ伝えたい場合
1つの事柄に対してもう一つ伝えたい場合にも使うことが出来ます。
この方法を上手に使えば、その事以外の事も並行して相手に伝えられるようになります。
いわゆる、接続詞のような感覚で使うことが出来るのです。
『伝えたい事+なお伝えたい事+然り』というように、文章を組み立てます。
伝えたいことが複数あったり、付け加えたいような事があった時にはとても便利な使い方です。
具体的にどういう使い方や文章になるのかも簡単にご紹介します。
「天災は忘れたころにやってくる。人災もまた然り。」
1つの事柄に対してもう一つ伝えたい場合の例文として、「天災は忘れたころにやってくる。人災もまた然り。」という例文があります。
この例文の意味は、「天災というものは人間が忘れた頃にやってくるものであり、人災についてもまったく同じである。」となります。
この例文のように、天災が忘れた頃にやってくるということにプラスして、人災も全く同じだという事を伝えたい場合に、「然り」を付け加えることで、それを同時に伝える文章へと工夫しています。
これと同じような使い方をすれば、「私はカレーが大好きだ、家族もまた然り」という例文ができます。
これは、「私がカレーが好きであり、家族もまた同じでカレーが好きだ」という意味です。
コツさえ覚えておけばそこまで難しい使い方にはならないはずです。
簡単に表現することが出来ますし、簡潔に相手に伝えることが出来るようになります。
日常生活でも試す機会はあるので、積極的に使ってみてくださいね。
1つの事柄に対してもう2、3つ伝えたい場合
1つの事柄に対してもう2、3つ伝えたい場合にも役立ちます。
日常生活で相手と会話をしている中で、相手に対して伝えたいことが2つや3つなど複数存在するということはよくあるケースでしょう。
例えば相手に対して何かアドバイスをするときに、一つだけではなく複数のアドバイスをすることで、より具体的に相手に伝わりますし、相手のためにもなると思います。
また、何かしらの報告に関しても、複数ある場合は然りという言葉を使って表現するような事も出来ます。
知っていればとても便利な使い方が出来ますよ。
では、具体的な使い方を例文を交えてご紹介しましょう。
「今の情報収集の方法といえば、スマホ然り、パソコン然り、簡単に行えるものである。」
「今の情報収集の方法といえば、スマホ然り、パソコン然り、簡単に行えるものである。」という例文があります。
この例文は、「今の情報収集の方法といえば、スマホやパソコンを使えば簡単に行える」というような意味です。
これは、相手に対して情報収集する方法を伝えるための言葉であり、「然り」を使って複数の方法を相手に伝えています。
この例文以外にも、例えば、「この日本においては、美しいと言われている人が多い地方が存在しており、秋田美人然り、京美人然り、博多美人もまた然り」というものが考えられます。
この例文の意味は、「日本には美しいと言われている人が多く存在している地方があり、秋田美人や京美人や博多美人がそれに当てはまる」と解釈することができます。
このように二つの例文を交えて、複数のことを伝えたいときに用いることができるということを理解いただけると思います。
日常会話でも使う機会がたくさんありますので、実際に使ってみて然りという言葉の便利さを体感してみてください。
「そうであるから」という意味で使う場合
然りは、「そうであるから」という意味で使う場合があります。
日常会話の中でも相手が話したことに対して返答する際に、枕詞にそうであるからという言葉を使って表現することもあると思います。
それ以外にも自分が話した内容に対してそうであるからという言葉を使って、最終的な自分が伝えたいことをまとめるときにも使用できます。
例えば、『これまで経験した事やその内容+然り+最終的な結論、結果、導き出した答え』をくっつける事によって、より文章が洗練されて相手に伝えたい事をまとめることが出来ます。
具体的な使い方を例文を交えてご紹介してみましょう。
「然るが故に答えはこのようになる。」
「そうであるから」という意味で使う場合の例文として、「然るが故に答えはこのようになる。」が挙げられます。
この例文の意味は、「そうであるからこそ答えはこのようになる」となります。
つまり、この然りの前のこの例文の場合は、問題に対しての解説があったと仮定することが出来ます。
問題の解説をひとしきり行った後に、結論の前に然りという言葉を付け加えて、然り以降の最終的な結論を強調していると考えることが出来ます。
この例題文と同じように他のこともいい表すことができますが、例えば、「今まで私はずっと自分の為になると思って肉体的なトレーニングを行ってきた、然るが故に、今の私には以前と比べようもない筋肉と精神的な強さを手に入れた」というような文章を作ることが出来ます。
これは、「自分自身のためになると思って肉体トレーニングに励んできて、その結果として今の自分は、以前とは考えようもつかないような筋肉と精神的な強さを手に入れました」という意味です。
このように然りという言葉を上手に使えば、過程の話をして最終的な結論をより強調して相手に伝えることが簡単にできます。
然りという言葉を使って説明をすればより論理的な内容で相手に話をすることができ、話を聞いている人も分かりやすく話を理解することができるでしょう。
話を簡潔に明確にするという特徴的な使い方ができる方法と認識してください。
2つの事柄に対して、逆にしても同じようなことが言える場合
2つの事柄に対して、逆にしても同じようなことが言える使い方があります。
相手と会話をしている時に、2つの別の事柄の両方に当てはまることを説明することがあると思います。
両方に当てはまると言うことは、当然ながらその順番を逆にしてもどちらにも当てはまるということです。
そのような事を説明をする時に、然りという言葉を使って表現することができるのです。
「通訳者は英語から日本語に通訳をするし、その逆もまた然り。」
例文として、「通訳者は英語から日本語に通訳をするし、その逆もまた然り。」が挙げられます。
この例題文の意味は、「通訳をしている人は英語から日本語に通訳をして、その逆である日本語から英語に変換するということも行う」というような意味合いとして理解することが出来ます。
つまり、 通訳の仕事をしている人は全く逆のことをその業務内容として行なっているということです。
他にも、「本来人間の精神である心と肉体である身体が通じ合っているものであり、心の状態が悪ければ体の状態も悪くなってしまいます。そしてその逆もまた然りです。」という例文を作ることが出来ます。
この例文の意味は、「人間の心と体はつながっており心が悪ければ体も悪くなってしまいますし、逆に体が悪いと心も悪くなってしまいます」という意味になります。
このように逆の事を肯定したり、同じようにあてはまるような事を説明するときに用いられるのです。
いちいちすべてを説明するのも面倒な時には「その逆も然り」という文章を付け加えるだけで、逆もあり得るという事を説明する手間を省いたり、より説明を論理的に行い、理解してもらえる方法と考える事も出来ます。
「さりげない」=「然りげ無い」
「さりげない」=「然りげ無い」という意味で使う場合があります。
さりげないという言葉は日常会話でも多く使われる言葉ですよね。
さりげないという言葉は普段ひらがなで用いられることが多いですが、漢字にしてみると不思議な事に然りという言葉を用いて表現します。
然りげ無い心遣い
例文として、「然りげ無い心遣い。」が挙げられます。
然りげ無い心遣いは、「相手に対して行う心遣いか大々的なものではなく、そっと行ったりする」という意味として解釈することができます。
然りの意味である「その通りである」という言葉の意味を考えた時に、「その通りでない心遣い」と訳すことが出来ます。
さりげないの意味としては「何事もないように振る舞うさま」を意味しており、なんとなく「その通りでない心遣い」の意味から派生されたような印象を受けますよね。
然りを上手く使うコツとは
ここからは然りという言葉を上手に使うコツについてご紹介をしていきます。
然りという言葉はとても便利な言葉ですが、使い方を間違ってしまうと相手に意味が伝わらなくなってしまいます。
そのため、意味や正しく使う方法を理解し、上手に使うコツを知っておくことで、より具体的に相手に内容を伝えられるようになります。
然りという言葉をより理解して、上手に文章の中に組み込んでみてください。
意味のままに使わない
然りという言葉を使う際に気を付けて頂きたいのは、然りという言葉をそのままの意味として使わないという事です。
然りという言葉の本来の意味を思い出してみてください。
然りという言葉の本来の意味は「その通りである」という意味ですが、この意味そのままで用いる事はあまりないと理解していただく必要があります。
なぜならば、先ほどご紹介した例文を思い出してみてください。
おそらく文章の中にその通りである、というような解釈で使われているものはあまりなかったと思います。
そうであるからとか、それもまた同じなど、意味本来のまま使われている文章は少なく、別の意味合いとして用いられているケースの方が多いはずです。
逆に単語の意味をそのまま使う機会の方が少ないので、単語の意味ばかりを意識してしまうと使える場面が少なくなってしまいます。
せっかく便利な言葉なのにもったいないです。
なので、意味のままに使うというよりかは、文章の中で別の意味で使う方法も忘れないで知識として吸収してみてください。
無理やり使わない
然りという言葉を無理をして使ったりする必要はありません。
使いたいと思う事もあるかもしれませんが、適切な場面でその言葉を使うようにしないと全く別の文章の意味になってしまいます。
全く意味が違う場面で使ってしまうと、相手に内容が伝わらなくなるので、適切な場面で使うこと以外は極力避けてください。
元々言葉を使う時には上手に相手にニュアンスを伝える際や、簡潔に説明をするときに、たくさんある言葉の中からチョイスしてベストな言葉を選択するというのが基本的な考え方です。
そもそも間違った場面で使ってしまうと本来の目的があやふやになってしまうので、無理をして使わないようにしましょう。
まとめ
今回は然りという言葉についてご紹介しました。
然りという言葉は本来持ってる意味は1つだけですが、それ以外に様々な文章に組み合わせることでたくさんの意味を発揮してくれる便利な言葉であると言うことが理解いただけたと思います。
たくさんの状況で使うことができ、使う状況によって意味合いが変わる言葉です。
普段の日常生活で使うと考えると、なかなかテクニックがいる言葉になるかもしれません。
しかし、普段から使っていると、だんだんと使い慣れて自然と然りという言葉を文章の中に用いることができるようになってきます。
言葉の正しい意味を理解して、使える場面では積極的に使ってみてください。