言い方を「にわかに立ち上がる」と言い換えたところで、その意味は同じですので、突然立ち上がった時や前触れもなく立ち上がった時などに使われます。
「俄然」の意味をきちんと理解していない人の場合、「俄然立ち上がる」を「強い意思を持って立ち上がること」と勘違することもありますが、実際にはその意味はまったく違っています。
突如何かを思い立って立ち上がった時などに使われることがありますが、普段使いとして例文のように使われることはほぼないでしょう。
このような使われ方をされるのは、小説やコラムのような書き物が多く、個人的に使うことはありませんが、意味を理解しておけばいざ小説を読んだ時には作者の意図をしっかりと理解できるでしょう。
「断然優位である」
例えば2人でかけっこをしている時に、1人の方が圧倒的にもう1人に差を付けて走っていた場合、前を走る人を指して「あの子の方が断然優位だね」と言うことがあります。
片方に大きな差をつけて優位に立っている人に対して「断然」という言葉を使うことが多く、「断然〇〇だ」という使い方をすることで、自分が贔屓にしている側に対する強い気持ちを表すことになります。
また、「断然〇〇だ」という使い方をする際には、自分が断然という気持ちを向けている対象を強く応援していたり、とても好きだったりと、好意的な感情を持っていることが多いです。
自分が嫌いなものに対しては、「とても嫌い」「すごく嫌だ」「絶対に無理」などと言うことはあっても、「断然嫌だ」や「断然気に食わない」などのように、否定の意味として使うことは基本的にありません。
もちろん言葉の意味としては、否定の意味で断然を用いても間違ってはいませんので、使うことはできます。
しかし、一般的には否定的な意味としてではなく、肯定的、好意的な意味として断然と使うことの方が多いです。
「俄然」では筋が通らない
ある事柄や人物に対して、圧倒的に優位であることを示す際に「断然優位である」と使いますが、「俄然」と使うことはありません。
「俄然」はその意味から、急な変化を表わしています。
それを、「俄然優位である」と使うと、「急に優位である」「突然優位である」となってしまい、意味の筋が通らなくなってしまいます。
もしも優位であることと俄然を結び付けようと思ったら、「俄然優位な状況になった」や「俄然優位な立場になった」などのように、状況が変化して優位になったということを意味する文章に変化させる必要があります。
そうすれば「俄然」を使っても意味の筋が通りますが、その代わりに今度は「断然」の意味が通じなくなってしまいますので、どちらの意味も同時に当てはめることはできないでしょう。
俄然!断然!そう感じるシチュエーションは?
あなたの身の回りで、「俄然」や「断然」という言葉が出てくるシチュエーションはありますか?
天気や出来事、体調や気持ちなど、あらゆるものが毎日のようにめまぐるしく変化しますし、また絶対にこうだという気持ちが変わらないこともあるでしょう。
そんなさまざまな「俄然」や「断然」のシチュエーションから、よくあるものをいくつかご紹介していきます。
前の恋人よりも、今の恋人の方が断然いいと感じる時
前に付き合っていた恋人よりも、今の恋人の方が断然いいと感じることってありますよね。
例えば元カノは料理が下手だったけれども、今の彼女は料理上手だった時には、美味しい手料理を食べながら、「元カノよりも今の彼女の方が断然いい!」と嬉しく感じることがあるでしょう。
また、例えば元カレは性格が乱暴で、酷い暴言を何度も吐いていたのに対し、今の彼氏がとても優しく、酷い言葉を絶対に言わないような性格だったなら、「元カレよりも今の彼氏の方が断然いい!」と心底思うことでしょう。
たくさんの恋人と付き合ってきた経験のある人ほど、過去の恋人と今の恋人とを比較しては、そう感じることがあるでしょう。
何の前触れもなく、いきなり思い立って行動する時
常に思い付きで行動する人は、「思い立ったが吉日」とでもいうように、突然行動に起こすことが多いです。
家でのんびりしていたと思ったら、唐突にショッピングに行きたくなって出かけようとしたり、仕事をしていたと思ったら、突然席を立って恋人と電話を始めたりと、周りの人から見て突拍子もない行動を起こす人ほど、「俄然〇〇した」という言葉が似合うでしょう。
また、気持ちの浮き沈みが激しい人も、「俄然やる気が出た」や「俄然やる気を失くした」など、唐突に気持ちに変化が表れることが多いです。
他のチームよりも、地元チームの方が断然いいと感じる
例えば自分の地元の野球チームと、他県のチームが試合をしていたとしたら、大半の人は地元チームを応戦するでしょう。
地元に愛着を持っている人や、地元愛が強い人ほど、地元に関することは何でも一番だと自信を持っていたり、他の地域と張り合おうとしたりします。
もちろんすべての人がそうというわけではありませんが、熱血タイプの人ほど、地元と他の地域が競うような状況になれば、熱心に地元を応援するでしょう。
そして地元の野球チームが他県のチームと試合をすることになった場合には、絶対に地元チームの方がいいと胸を張り、「断然地元チームの方がいい!」と豪語することもあるでしょう。
昨日までは晴れていたのに、急に天候が荒れた時
天候は常に変わるものです。
ついさっきまでは晴天だったのに、いきなり雨が降ってくることもあるでしょう。
そうした急激な天候の変化に対して、「先ほどまでは晴れていたのに、俄然雨になった」と言うことがあります。
「俄然」は気持ちの変化や突然の出来事が起きた時に使われることが多いため、天候の変化や自然の変化に対してはそこまで使われることはないかもしれません。