一つ前に紹介した言葉よりも短いため、直接相手に電話などで伝えるよりは、メールのように文面で添えた方がシンプルで文章にも無駄が感じられないでしょう。
また、人によっては何か発言する際に、ついあれもこれも言葉を足そうとしてしまう人がいます。
そんな人の場合、一言が短いと相手に与える印象も悪くなるのではないかという不安な気持ちや、自分の気持ちを伝えたいという思いから、つい一言が長くなってしまいます。
しかし、ビジネスのような場においては、簡潔な言葉で分かりやすく相手に伝えることが重要とされています。
そのため、わざわざ長ったらしい言葉を並べずとも、「ご足労いただく事になり大変恐縮です」という一言だけで相手には十分なのです。
「恐縮」という言葉には相手に対する感謝の気持ちと申し訳ないという気持ちがどちらも含まれていますので、「恐縮です」の一言だけでも相手に対する気遣いになるのです。
ご足労くださり、大変感謝しております
この言葉は、相手に来ていただいた際に用います。
日本人は何かと「すみません」「申し訳ありません」「ごめんなさい」という言葉を多用します。
外国人から見ると、「何も悪いことをしたわけではないのに何故そんなに謝る必要があるのか?」と理解に苦しむそうですが、日本人はつい口癖のように何かあると謝罪の言葉が出てきます。
それ自体は、自分が悪いという気持ちよりも、相手に対する気遣いの気持ちから自然と謝罪の言葉が出てきてしまうため、人によっては美徳に感じることもあるでしょう。
しかし、べつの人によっては「悪いことをしたわけであないのだから謝る必要がない」と考える人もいます。
そうした人の場合には、「すみません」よりも「ありがとう」という感謝を伝える言葉の方が好印象です。
そのため、当日ご足労いただいた人がそのようなタイプの場合には、「ご足労くださり、大変感謝しております」とありがとうの気持ちを込めた言葉の方が喜ばれることが多いです。
相手の性格によって、多少言い方を変えると相手には非常に好印象でしょう。
間違った使い方
「ご足労」という言葉自体は、相手に対する感謝と謝罪の気持ちが含まれていますので、とても丁寧で誠実な印象を相手に与えます。
しかし、その言葉も謝った使い方をしてしまうと、相手に対して失礼になってしまい、与える印象も悪くなってしまいます。
プライベートの場面で誤った使い方をしてしまっても自らの恥になってしまいますが、ビジネスの場においては謝った使い方によって相手を怒らせてしまい、取引が台無しになってしまうことも考えられます。
たった一言で人間関係とは壊れてしまうものですので、とくに礼儀や作法が出来て当たり前とされるビジネスの場では失敗のないように注意したいものです。
では、誤った使い方とはどのようなものなのでしょうか?以下にご紹介していきます。
ご足労いただきますようお願い申し上げます
先にも挙げましたが、まだ相手の了承を得ていない内から「ご足労をおかけする」ことを前提としてお願いするのは相手に対して大変失礼です。
丁寧な言い方をしているだけで、要するに「あなたが私のところまで来て下さいね」と強引にお願いすることになりますので、当然相手もいい気はしないでしょう。
仮に自分の会社よりも上の立場の会社にそう言われたとしても、やはり人によっては「偉そうだなぁ」と不快に感じます。
また、それが同等の立場の会社であっても、「え、こっちに来いってこと?」と不快に感じる人は多いですし、自分よりも下の会社に言われたとしたら、憤慨して取引を止めようとする可能性だって出てきます。
それほど相手に来てもらうことを前提としたお願いは失礼に値しますので、絶対にやらないように注意しましょう。
ご足労お待ちしております
「ご足労お待ちしております」という言葉も、一見丁寧のように思えて実際には失礼に値する、間違った使い方です。
「お待ちしております」という言葉に添えるのであれば、通常は「楽しみに」や「心より」といった言葉になります。
「ご足労」という言葉自体は労いや感謝の気持ちの表れですが、それと「お待ちしております」という言葉をくっつけて使うのは誤りですので、うっかりこのような言い回しをしてしまわないように注意しましょう。
ぜひ、ご足労くださいませ
日本語の正しい使い方をそこまで理解していない人でも、聞けば必ず何かしらの違和感を覚えるような間違った言い方です。
そもそも、「ぜひ~くださいませ」という言葉は、例えばレジャーパークのような場所に来てもらい、楽しんでもらう際に使うことの多い言葉です。
「ぜひ、楽しんでくださいませ」といった、相手に喜んでもらいたい、楽しんでもらいたいという気持ちを表す際に用いられることの多い言葉です。
ですから、相手にわざわざ時間を割いて自分のところへ来てもらうことや、ご足労をかけることに対して用いるべき言葉ではありません。
ビジネスの場で間違って使ってしまうと相手を憤慨させてしまう可能性も高いので、絶対に間違って使わないように気を付けましょう。
ご足労おかけしますと似た言い回し
「ご足労をおかけします」という言葉は、社会人にもなればどこかで一度は耳にする言葉でしょう。
しかし、その言葉自体はビジネスの場など、畏まった堅苦しい場面で用いられることが多いです。