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「させていただく」の正しい使い方は...(続き3)

また、「会社を辞めさせていただきます」という言葉も同じく、相手の許可など何の関係もなく、あくまでも自分の意志で決定したことを伝えていますので、会社側にとっては嫌味に受け取れてしまうこともあるでしょう。

時々ドラマなどで妻が夫に「実家に帰らせていただきます」と発言している場面がありますが、これも嫌味の意味で「させていただく」という言葉を使っています。

さらには、「この春に無事に卒業させていただきました」という言葉も、言っている本人は「おかげさまで」という言葉と同じようなニュアンスで言っていることが多いでしょう。

ですが、卒業したこと自体は相手の許可も何も必要のないことですので、わざわざそんな言い回しをする必要はないのです。

そのため、この3例の場合は、それぞれに「来年度の予算が決定いたしました」「会社を辞めます」「この春無事に卒業しました」というシンプルな言い回しが本来の正しい言葉遣いです。

このように、最近では自分の勝手な行動に対してもやたらと「させていただく」という言い回しをする人が増えていますが、本来の正しい言葉遣いではありませんので注意が必要です。

「させていただく」を使うときのポイント

「させていただく」を使うときのポイントを解説する女性
「させていただく」という言葉を使うときには、どのようなポイントに注意して使えば良いのでしょうか?

時間をかけて文章で書く時には正しく用いることができる言葉遣いでも、実際に口から出るときには余計な敬語がついてしまったり、二重敬語などのくどい言い回しになってしまったりすることも少なくありません。

言っている本人はそれだけ相手を気遣って話しているつもりかもしれませんが、受け取る側によっては印象が悪くなってしまうこともあります。

そのため、「させていただく」という言葉を用いるときには、しっかりとポイントを押さえて使っていきましょう。

状況を踏まえて使う

「させていただく」という言葉は、原則として自分以外の相手がいて、その相手に対して用いる言葉です。

さらに、相手の許可を得るためや、許可を得た上で用いる言葉でもありますので、そうした状況を踏まえた上で使うようにしましょう。

例えば自分の仕事の量が多くて誰かに助けてもらいたい時に、手が空いている人がいれば、その人にお願いをして仕事を手伝ってもらおうとします。

その際に、「仕事を手伝っていただけますか?」と相手の許しを請う形で「させていただく」という言葉を使うのは状況に合っていると言えるでしょう。

相手の意思を考えて使う

「させていただく」という言葉は、あくまでも自分以外の相手がいるからこそ使える言葉です。

相手がいるということは、当然その言葉を用いる時には、相手の意思を考えた上で使うようにしなければなりません。

自分勝手に決めたことや行動したことに対して、「させていただきました」という言葉を用いることは、相手に対する嫌味になってしまいますし、言われた側も慇懃無礼に感じられて、気分を害してしまいかねません。

例えば「来月の予定を決めさせていただきました」とこちらが言ったことに対して、相手に何の相談もしていなかった場合には、「『させていただいた』も何も、自分で全部勝手に決めたんじゃないか」と相手には不快に思えてしまうことでしょう。

このように、「させていただく」という言葉を用いる場合には、必ず相手の意思を考えてから使うようにしましょう。

許しを請う場合や、許しを得たことに対する感謝の気持ちとして用いるのは問題ありませんが、そうでない場合には用いらないようにした方が無難でしょう。

多用しない

最近ではテレビや自分の周囲で何かと「させていただく」という言葉を耳にする機会が増えましたよね。

「この前新婚旅行でハワイに行かせていただきまして~」や、「早めに時間が空いたので、夕食をとらせていただきました」など、やたらと語尾に「させていただく」をつけて話す人が増えました。

「させていただく」という言葉は、自分の立場をへりくだって話す言葉ですので、謙虚さや控えめさが感じられて、好んで多用する人がいます。

しかし、言葉自体はへりくだったものでも、その使い方が間違っていると日本語としてはおかしなものになってしまいます。

またそれを指摘する人がいなければ、自分で間違いに気づかないままで多用し続けてしまうでしょう。

「させていただく」という言葉は、これまでにもご説明してきたように、あくまでも相手に許可を求める場合や、許可を受けたことに対する感謝の気持ちから用いるべき言葉です。

相手がおらず、自分で決めたことや行動したことに対して「させていただく」を多用するのは大きな間違いなのです。

同じ文章の中で何度も使わない

「させていただく」という言葉は、その響きだけでも口にすると長い言葉ですよね。

ただでさえ長く感じられるその言葉を、時々同じ文章の中で何度も多用する人がいます。

例えば、「先日ご依頼させていただきましたお仕事の件ですが、お見積りをさせていただいてもよろしいでしょうか?」といった言葉を何気なく使う人がいると思います。

一見丁寧な言い回しですので、受け取る側も違和感を抱かない人はいるかもしれません。

しかし、日本語をしっかりと学んでいる人や、言葉遣いに厳しい人が聞くと、言い回しの間違いに気づいて指摘をする場合があるでしょう。

「させていただく」という言葉は、少なくとも一つの文章の中で何度も使う言葉ではありません。

具体的な理由は以下でご説明をしますが、日本語の使い方としては間違っていますので、同じ文章内で多用するは止めましょう。

また、言葉の間違いとしてだけでなく、一つの文章内で何度も同じ言葉を用いると、それだけでくどくなってしまいます。