社会人ともなれば、職場では当たり前に敬語を使います。
しかし、あなたの使っている敬語は、果たして本当に正しい日本語なのでしょうか?
敬語が曖昧な新社会人は少なくありませんが、社会人歴が長くなるほど間違った敬語を使っていると恥ずかしい思いをすることになってしまいます。
とくに最近目立つのが、「させていただく」という日本語の間違った使い方です。
あなた自身、職場で間違った「させていただく」の使い方をしていないか、この機会にチェックしてみましょう!
「させていただく」について
職場では、頻繁に「させていただく」という敬語を耳にする機会があると思います。
上司や取引先と話をしている時に、「そのようにさせていただきます」「予定を変更させていただきます」など、相手の意志や許可を確認しながら用いられることの多い謙譲語です。
自分一人だけで物事を決めたり、作業を進めたりする場合には用いる言葉ではありませんが、仕事は一人だけでするものではないので、自然とこの「させていただく」という言葉を使う機会も、耳にする機会も多いのでしょう。
間違って使われやすい「させていただく」
「させていただく」という言葉は、言葉の響きがとても丁寧に感じられるので、敬語で話す時にはついつい頻繁に使ってしまうことがあります。
本来ならば相手の許可や確認が必要のないことでも、丁寧な敬語を付け足したいという無意識の感情から、不要な謙譲語として「させていただく」と言ってしまうことがあります。
また、「させていただく」という言葉は謙譲語ですが、一つの文章の中で謙譲語を重ねて使ってしまうと二重敬語になり、日本語としては間違った文法になってしまいます。
例えばありがちな間違いでは、「拝見させていただきました」という言葉がありますが、この「拝見」は「見る」の謙譲語です。
また、「させていただく」も謙譲語ですので、一見丁寧に思えるこの文章は、日本語としては間違っているのです。
このように、普段当たり前に使っている言葉でも、実は日本語としては間違っているものが少なくはないのです。
あなたの「させていただく」は間違いかも?
自分の敬語の言い回しや、他人の敬語の言い回しを、「なんだかくどいなぁ」と感じたことはありませんか?
敬語と聞くと一見とても丁寧な文章の言い回しを想像する人も多いですが、実際にはそこまでくどくどした話し方になることはありません。
もしくどいと感じる場合には、その日本語は文法が間違っている可能性が高いです。
例えばあなたが、先日上司と話した仕事の内容について、予定の調節をしたいと上司に申し出るとします。
その際によく使われる敬語としては、次のようなものが多いです。
「先日お話させていただきました仕事の内容についてなのですが、少し予定を調節させていただきたいと考えておりますが、いかがでしょうか?」口にするだけで舌を噛んでしまいそうな敬語ですよね。
これを丁寧な敬語だと考えている人も多いですが、実際にはもっと言葉をスッキリさせることが出来ます。
無駄な敬語を省くと、次のような言葉になります。
「先日お話した仕事の内容についてですが、少し予定を調節させていただきたいと考えております。」一つの文章の中で二重敬語にならないように、「させていただく」という言葉を使うのは一度だけにします。
また、わざわざ「いかがでしょうか?」と確認するまでもなく、予定の調節をしたいと申し出れば、上司から次のアクションが返ってきますので、必要以上に言葉を繋げる必要はありません。
何より後者の言い回しの方が、上司もこちらの言いたいことを理解しやすいでしょう。
このようにちょっとした言葉遣いから間違っている人は多いですが、あなたはどうですか?
自信を持って正しく「させていただく」を使えていると言えるでしょうか?
もし間違っているかもしれないと不安に思う人は、記事の続きを参考にしてみて下さい。
「させていただく」の意味
そもそも、「させていただく」とはどのような意味として用いるのでしょうか?
相手に対して気を遣ったり、遠慮したりしながら行動を起こす時に用いる言葉なのです。
自分が何かをしようと思った時に、それをしてもいいかと相手に確認したり、許可を得たりする時に用います。
相手を敬う謙譲語
「させていただく」という言葉は、相手を敬う謙譲語です。
謙譲語とは敬語の一種で、「ある動作や状態の主体を、相対的に下位にあるものとして示す単語や語法」のことです。
言い換えると、自分を相手よりも下の立場において話す時に用いる言葉遣いのことです。
年下が年上の人に話しかける際や、部下が上司に話しかける際など、自分よりも目上の立場の人に話しをする時には謙譲語で話をするのが一般的です。
また、会社で働いていると、取引先の会社の人と話をすることがありますが、その場合にも謙譲語で話をしておくと無難でしょう。
明らかに会社同士で立場が異なる場合には、上の立場にある会社の人が謙譲語で話すことはあまりありませんが、それでも社会人であれば咄嗟に謙譲語で話せることが当たり前とされています。
自分の行為や行動をへりくだって使う
謙譲語は、自分の行為や行動に対してへりくだって使います。
何でもない時には「仕事をする」「電話をする」と表現することも、相手を立てて自分がへりくだる場合には「仕事をさせていただく」「電話をさせていただく」と言葉を言い換えます。
そうすることで相手には、自分がへりくだっているのだということが伝わります。
相手が気難しい年上や、上司である場合には、謙譲語で話すことで同時に相手の立場を上げることになりますので、不快に感じることはまずないでしょう。
とはいえ、二重敬語や丁寧過ぎる回りくどい言い回しをしてしまうと、「もっとハッキリ言え」と叱咤されてしまう可能性もあります。
申し訳ない気持ちが込められている
謙譲語には、相手を立てて自分がへりくだる表現の他に、暗に申し訳ないという気持ちが込められていますので、それを受け取る側が不快に思うことはそうありません。