そうでなければ、例えば会社のハラスメントが原因で辞める時に、「ハラスメントなどしていない」と証拠がないことでしらを切られてしまうことがあります。
会社側のデメリットが大きいのでごねる会社が多い
会社都合で社員を退職させる場合、後述しますが会社側にとって大きなデメリットがあります。
また、悪い噂でも立てば会社の悪評となりますので、会社側は「会社の都合ではなく、あくまでも社員が自ら辞めたいと申し出た」という形に収めたがるのです。
そのため、自主退職させるために「お前の家族がどうなってもいいのか」など、脅すような真似をしてでも一身上の都合で辞めさせようとする会社も残念ながら中には存在しています。
退職者が大きな不利益を被ることも
本当は会社都合で退職させられるのに、一身上の都合で退職させられてしまった場合、会社側から強引に自己都合の退職を命ぜられたという証拠が残っていない限りは、辞めた後で何を訴えても後の祭りになってしまいます。
一度自己都合で退職してしまったら、雇用保険の失業給付金の受給開始日や給付期間などが不利になってしまいますし、また再就職先を探す際にも、履歴書の職歴が会社都合ではなく、自己都合になってしまいます。
会社によっては、あまりに転職の回数の多い人や、自己都合で会社を辞めた経験のある人は、雇わないというところもありますので、そうしたところへ再就職先を希望する際には難しくなってしまうでしょう。
とにかく今の会社を早く辞めたいがために、本来は会社都合なのに一身上の都合にしてしまったら、後で自分が大きな不利益を被ることもあるのです。
会社都合にすることによる会社のデメリットとは?
先にも少し挙げましたが、会社都合で社員に退職されてしまうと、会社側にとってはデメリットが生じることになってしまいます。
会社都合で辞める社員の人数が増えればそれだけデメリットも大きくなってしまいますし、あらゆるところからの信用も失ってしまいやすいです。
そのため会社は、どうせ社員に辞められるのなら出来るだけ自己都合の退職の形を望むことが多いのです。
では、会社にとってのデメリットとは具体的にどのようなものなのでしょうか?
助成金がもらえなくなる
大抵の会社は、厚生労働省から助成金を援助してもらっています。
助成金には「トライアル雇用奨励金」や「特定求職者雇用開発助成金」「キャリアアップ助成金」などさまざまな種類があり、会社が必要に応じて助成金を申請し、それが通れば厚生労働省から援助してもらっています。
この助成金は従業員を雇い入れる時に申請できるものが多いため、もし会社都合で社員が辞めた場合には、不支給の要件に該当するため、助成金を返還したり、その後もらえなくなったりする可能性があります。
そのため、会社側はできるだけ会社都合での解雇を避けたい傾向にあるのです。
取引先に悪い噂が広まる
問題の多い社員を会社が解雇するのは仕方のないことですが、会社が一方的な都合で社員を解雇する場合、ことによってはそれが悪い噂となって取引先や顧客などに広まってしまうことがあります。
とくに立て続けに会社にとって都合の悪い社員を解雇したり、ハラスメントなどが原因で退職者が後を絶たなかったりした場合には、「あの会社は大丈夫なのか」「あの会社と取引を続けるのはうちの会社にとって良くないのではないか」と取引先に余計な不安を煽ってしまうことになります。
また、基本的に退職した後も、在職中の情報漏洩は禁じている会社が多いですが、情報漏洩ではなく、ハラスメントのような不当な扱いを受けた人がその話を周囲に漏らせば、当然会社の評判には傷が付くでしょう。
労働基準監督署などから目を付けられる
労働基準監督署は、労働基準法により定められた監督行政機関のことです。
ここの仕事は一言でいえば、あらゆる会社がきちんと労働基準法に則って会社を経営しているかをチェックすることです。
最低賃金から雇用形態、社員の労働時間やハラスメントなど、あらゆる部分で会社を厳しくチェックしています。
そのため、現場の社員が自身の労働状況に対して相談をする先でもあります。
会社都合による退職はいわゆる解雇処分ですので、それがあまりに頻度が高いと、会社自体に何か問題があるのではと、労働基準監督署などから目を付けられる恐れがあります。
そうなると細かな部分まで頻繁にチェックされることになりますので、会社としては非常にやりにくい面倒な状況になってしまいます。
賠償金を求められることも
例えば会社から社員によるパワハラや、労働基準法を無視した過度の労働を強いたことで、社員が病気で倒れたり、または過労死したりした場合には、遺族から会社に対して多額の賠償金を求められることがあります。
そもそも、労働基準法に則った働き方をしていれば、社員が無理をして病気になったり、過労死したりするまでには至るはずはありません。
大抵は見えないところで法律違反を犯しており、それが露見した場合に会社が倒産したり、多額の賠償金を求められたりする結末を迎えてしまうケースがあるのです。
一身上の都合で退職する時の注意
一身上の都合で退職する際には、最低限の注意を払う必要があります。
例えば会社の定めた社則で、「退職する3ヶ月前には申告すること」とあれば、必ずそのようにする必要があります。
社則さえ守ったやり方をしていれば、もし会社と揉めた場合にも労基や弁護士に助けてもらえる可能性が高くなります。
また、もし会社と揉めて辞めた場合には、知らずに再就職した先が前の会社と取引関係にあった場合に、自分が不利な立場になってしまうこともありますし、辞めた会社の近くで生活をし続けるのなら、どこかで前の会社の関係者と会って気まずい思いをしてしまうことにもなりかねません。