「事由」を使用するシーン
「事由」の意味や「理由」との違いが分かったところで、今度はどのような場面で「事由」を使用するのかについてご紹介します。
「事由」は敬語ではありません。
そのため、丁寧語や尊敬語、謙譲語などのように、相手や場面を限定して使い分ける必要はありません。
かしこまった場面でも、日常会話の中でも気軽に使うことが出来る言葉です。
とはいえ、普段使いとしてはあまり使われることはないでしょう。
何故なら普段使いとしては、「事由」よりも「理由」の方が日常的に使われているからです。
先ほども解説したように、「理由」は出来事が起きた根拠ですので、広く原因に対して用いることが出来ます。
そのため「事由」もまた、「理由」の内に含まれているのです。
だからこそ限定された直接的な原因である「事由」ではなく、「理由」の方が日常的に用いられています。
では、直接的な原因である「事由」を用いるのは、どんな場面なのでしょうか?
ビジネス
ビジネスの場面では、常に明確で的確にまとめられた言葉や文章が求められます。
報告書や書類をまとめるのも、無駄な言葉は省き、必要な言葉だけを書きながら、同時に相手に対する敬意も払う必要があります。
そうした言葉使いや文章が出来るようになるまでにはある程度時間がかかりますし、元々国語や文章をまとめるのが苦手な人にとっては、「起承転結を分かりやすくまとめる」というのは中々に難しいことでしょう。
そのため、言葉をまとめるのが苦手な人は、例えば仕事を体調不良で休む場合にも、回りくどい言い訳じみた言い方をしてしまうことが多いです。
上司も忙しく仕事をしているため、用件は出来るだけ分かりやすく、短くまとめることが求められます。
それが出来なければ、「結局何を言いたいんだ」と上司をいらつかせてしまうことになりますし、あれこれと根拠となる理由を並べ立てても、「そんなことは聞いていない。何があったか事実だけを知りたいんだ。」と指摘されてしまうでしょう。
そのため、ビジネスにおいては理由よりも事由の方が求められる傾向にあります。
体調不良で休みたいという話しを上司にする際には、あれこれと体調が悪い理由を並べる必要はなく、ただ「先日より体調が優れないため、誠に勝手ながら会社をお休みさせていただきたいです。」と一言事由を述べる方が上司からの印象は良くなります。
もしそれでもっと説明が必要な場合には、上司の方から詳しく内容を尋ねてきますので、聞かれてもいないのにあれこれとしゃべり過ぎるのは止めた方が賢明でしょう。
退職
「事由」は退職事由として書くことがあります。
会社に正規雇用されている正社員の場合、会社を辞める時には必ず前もって退職届けを提出することが求められます。
その際に退職事由として、「何故会社を辞めることになったのか」もしくは「会社を辞めたいと思ったのか」という内容を退職届に記載します。
退職届を出す場合、事由についてはとくに明確化しなければならないということはありません。
人間関係での悩みやセクハラ、上司との関係の悪化など、人によっては誰かに知られたくないと思う理由もあるでしょう。
そのため、もし退職事由を明確化させたくなければ、「一身上の都合」を用いれば良いとされています。
会社によっては「必ず退職事由を記載すること」と言ってくるところもありますが、労働法上退職事由を申告する義務はありませんので、「労働法では義務になっていないため、自分は一身上の都合にいたしました。」と言い通せばそれで問題はないはずです。
もしそれが原因で退職させてもらえなければ、労働相談センターへ相談してみる方法があります。
いずれにせよ、「事由」は退職の際に多く用いられています。
有給休暇
有給休暇の使い方は、人によって実にさまざまです。
1日のんびりと家で寛ぎたいという人もいれば、家族で旅行に何拍か出かけたいという人もいるでしょう。
また、イベント参加や通院などたくさんの理由がありますが、それら有給休暇を申請する場合にも、「申請事由」として上司に「何故有給が欲しいのか」「有給を何に使うのか」を申告する必要があります。
退職届と違い、有給休暇の場合にはそれなりの事由で申請しなければなりません。
例えば「家でのんびり過ごす」「友達と遊びに行く」などの個人的な事由の場合には、「心身の気分転換を図るため」など、適当にそれらしい事由で申請を提出する必要があるでしょう。
また、もし通院や家族の介護など、家庭の事情といった事由の場合には、きちんと自由内容をまとめて申告すれば会社によってはこちらの事情を汲んでくれやすくなります。
有給休暇はあくまでも個人的なものですので、どのような事由であっても構いませんが、適当な事由を作る場合には、もちろんそれが嘘だと職場の人に気付かれないように振舞わなければなりません。
「事由」の類語・同義語
「事由」とは、ある出来事が起こった直接的な原因や理由のことです。