「失念しました」と言えばそれだけで済むと考えている人は大きな間違いですので、「失念」を使うタイミングがあれば、必ず謝罪の言葉も付け加えるようにしましょう。
使うのは基本的に文面のみ
「失念」は基本的に文面で用いることが多いです。
もちろん会話の中でも「失念しました」と使うことはありますし、使ってはいけないというわけではありません。
しかし、普段からあまり使う機会がない言葉ですので、もし口頭で「◯◯の件で失念していました。」と口にしたら、その言葉をそのまま聞き手が受け取ってくれる可能性はあまり高くありません。
とくに相手が激怒している場合には、こちらの話をまともに聞いてくれるとは限りませんので、「失念」という言葉をきちんと理解出来なかったら、「何をわけの分からないことを言っている!」と余計に怒りを煽ってしまうことになりかねません。
そのため、口頭の場合には「忘れた」という表現を「失念」ではなく、「◯◯し損ねた」や「◯◯し忘れて」「頭から抜けていました」などの表現をすることが多いです。
一方で文面にすれば、同じ社会人の場合「失念」の言葉を理解している人が大半ですので、こちらの意図が相手に伝わりやすくなります。
また、長々と無駄な表現をする必要もなく、「失念しました」と短く文章をまとめることが出来ます。
さらに、口頭の場合にはかしこまり過ぎない話し方をすることも多いですが、文面の場合にはきちんとかしこまった言葉の表現方法をする必要がありますので、「うっかり忘れ」ではなく「失念」と書く方がふさわしいのです。
他人には使えない
「失念」は謙譲語です。
謙譲語とは、自分が相手に対してへりくだる表現をすることですので、自分の行動に対してのみ用いることが出来ます。
「いただく」や「申し上げる」といった謙譲語も、自分の言動や行動をへりくだった言い方をしていますよね。
同様に、「失念」もまた、自分が忘れてしまったことに対してのみ用いる表現方法です。
そのため、他人に対して使うことは出来ません。
例えば誰かがうっかり忘れをした場合に、「◯◯さん、失念したね~」と使うことは当然出来ません。
また、例えば「◯◯さんにおかれましては失念することのないように願います」といった表現も、もちろんすることは出来ません。
あくまでも謙譲語ですので、相手に敬意を払う際に用いる「お」や「ご」の言葉を付けることもしません。
時々「丁寧な表現方法なので、誰に対して使ってもいい」と勘違いする人がいますが、誰かに対して「失念しましたね」と使ってしまうと、相手の立場を自分よりも下に置くことになりますので絶対に他人に対しては使わないように注意しましょう。
同じミスを再び繰り返さない
「失念」という言葉を使えば、何度でも同じミスを繰り返していいかというと、決してそんなことはありません。
仕事をする上で、ミスは誰にでも起こりうることです。
予想出来るミスの場合には自分の責任によるものが大きいですが、予測不可能なミスが起きてしまった場合には、今度は同じことを繰り返さないようにと誰でも十分に注意するでしょう。
そして大抵の場合、一度したミスは二度三度と繰り返すことはありません。
人間には学習能力が備わっていますので、よほど仕事に対して適当な態度や悪意を持って取り組んでいなければ、同じミスを繰り返すことは早々ありません。
しかし、もし「謝れば許してもらえる」という考え方をしている人がいたなら、その人はきっと同じようなミスを繰り返してしまうことでしょう。
そしてまた、「失念」と言っておけば許してもらえると勘違いをしているかもしれません。
「失念」はあくまでも「うっかり忘れ」の敬語です。
「忘れました、すみません。」と言っておけば何度も同じミスをして許されるわけはありません。
ミスを繰り返せばその分その人への周囲の信頼はなくなり、会社からの評価も下がります。
最悪の場合「使えない人材」として、適当な理由をつけてクビにされてしまうこともあるでしょう。
「失念」という言葉を使えば、確かに相手に丁寧な印象や誠意を感じさせることが出来るかもしれません。
しかし、その手が何度も通じることはないのです。
️「失念」の使い方をしっかり覚えておこう
いかがでしたでしょうか?
「失念」は、普段使いはほとんどされることはなく、ビジネスシーンでは時々用いられる言葉です。
しかし、ビジネスシーンにおいても、口頭で使われることは実はそこまで多くはありません。
「失念」という表現は、文面において大きな効果を発揮します。
短く内容がまとまっていること、相手に対して敬意を払っていること、そこにさらに謝罪を付け加えることで、相手に対して誠意を見せることが可能になります。