そもそも、人が畏れ敬う存在は、人を遥かに超えた絶対的で神聖なものです。
すなわち神仏そのものですので、神仏に対しては当たり前に畏敬の念を抱くものですし、また宗教の伝道者などに対しても同じように畏敬の念を抱く人は少なくないでしょう。
本来は神仏に対して抱く感情ですが、時に自分よりも遥かに優れた能力を有する人を前にした時に、その相手に対して畏敬の念を抱く人もいます。
とはいえ、「心服」同様にそこまで普段使いをされることはありません。
「忝い」の使い方・例文
「忝い」の意味や類語についてはある程度理解出来たことでしょう。
普段使いはされない言葉ですので、実際の意味は理解出来ても、上手に言葉を使うことが出来ないという人は多いです。
もし、賢し気に「忝い」と言葉を使って、その使い方が間違っていたとしたら、顔から火が出るほどに恥ずかしい思いをすることになるかもしれません。
うっかり使い間違えをしないためにも、基本的な使い方についても知っておきましょう。
「忝い」の使い方を例文でご紹介していきます。
なんと忝いことだろう
もしも誰かにお世話になったり、助けてもらったりしたのなら、その恩義を感じて、「なんと忝いことだろう」と言うことがあります。
この上ないほど相手に感謝しているという気持ちが強い時には、単に「有難うございます」や「恐縮です」という言葉では、感謝の気持ちを伝えきれないことがあるでしょう。
そのような時に、「なんて忝いことでしょう」や「なんと忝いことだろう」などと使うことがあります。
日頃のお気遣い、忝い
日頃からあれこれと世話を焼いてくれる人や、さまざまな気遣いをしてくれる人に対して、「有難い」という感謝の気持ちと、「申し訳ない」という恐縮の気持ちを込めて、「日頃のお気遣い、忝く思います」などと使うことがあります。
それだけ相手の気遣いに感謝しているという気持ちに表れですので、言われる方も嫌な気持ちにはならないでしょう。
何もお礼ができない私に皆様の好意は忝い
自分のことで、周りがあれこれと世話を焼いてくれた時に、その深い感謝の気持ちを表すのに「忝い」という言葉を使うことがあります。
一人ひとりに特別なお礼をすることは出来なくても、どうにかこの感謝の気持ちを伝えたいという時に、「こんな私に対して皆さんの好意は本当に忝いことです。」などと言葉にして伝えることがあります。
感謝を伝える言葉としてはとても丁寧な言い方をしますので、相手にもこちらの気持ちが伝わりやすくなります。
私の不注意から迷惑をかけ、本当に忝い
もしも仕事でミスをしてしまい、そのせいで周りの人たちに迷惑をかけてしまった時、一言「申し訳ありません」と言うだけでは済まないこともあります。
もちろん自分で直ぐにフォローに回る必要がありますが、誠心誠意の対応に努めながらも、同時に本心からの謝罪を周りの人たちへ伝える必要があるでしょう。
そのような場合に、「私の不注意から皆様に迷惑をかけてしまい本当に忝く思います。」と使うことがあります。
誠意を持った対応と言葉で、周りの溜飲を多少は下げることが出来るかもしれません。
正しい意味を知って正しく使おう
「忝い」という言葉は、あまり普段使いをする言葉ではありません。
時代劇の中でしか聞いたことがないという人もいるでしょう。
しかし、現在でも場合によっては「忝い」と使うことがあります。
現在でも使うことがあるということや、「忝い」の意味や正しい使い方をきちんと理解しておけば、いざ自分がその言葉を使う側になった時に正しく使うことが出来ますし、また誰かが口にした時にも、それがどのような心情から発せられているのかということを想像しやすくなるでしょう。
「忝い」は使おうと思って簡単に使えるような言葉ではありませんが、いざ使う場面が訪れた時のことを考えて、予め意味や使い方を把握しておきましょう。