たとえば、デザイナーはお客さんの要望どおりの商品デザインをあげることが自分の仕事であり、自分のデザインが至高であり、自分のやっていることは正しいと思っています。
でも、営業の立場から見るとお客さんの要望はお客さんが言っている予算の範囲内では到底実現できない夢物語な内容ばかりなので、お客さんに言われるがままにデザインをしてもそれはとても商品にできるものではありません。
営業サイドの「この予算ならこれはできない」「この材質はガラスではなくプラスチックにして、透明感は残しつつ価格をさげてほしい」などの意見も汲み取りながらデザインをするのが、会社に所属しているデザイナーとして当たり前だと思っています。
この状態で単に「ちゃんとデザインしろよ!」と営業がデザイナーに怒っても、デザイナーとしては「やってるじゃないか!」と頭にきてしまいますよね。
こうした部分を組みとりつつ話し合い、それぞれの正義を理解して平行線だった議論をさかのぼり、近づけていく。
納得できる答えをお互いが相手から得て、それぞれが少しずつ妥協をして歩み寄り、営業はお客さんにかけあってもう少し予算を取ってくる、デザイナーはガラスはコンセプトからすると譲れないけれど、他の部分の素材を変えてコストカットを試みる、というような形で最終的に意見をまとめていきます。
これが『すり合わせ』なのです。
異なるものと連携する力
みたらしだんごの話をしましょう。
ある店は絶妙な甘さとまろやかさが自慢の秘伝のタレで評判のおだんご屋さん。
また別の店は程よい弾力にお焦げの香ばしさが絶品のだんごで評判のおだんご屋さん。
この両店がそれぞれタレとだんごを持ち寄れば最高のみたらしだんごができるに違いありません。
しかし両店はライバル店として火花を散らし合っている仲です。
両店を説得し、手を取り合わせて絶品だんごを実現するのに必要なものとは一体なんでしょうか。
まさしく「すり合わせ能力」です。
それぞれの得意分野を持ち寄り、異なるものと連携し、すり合わせを行うことで、今までになかった素晴らしいものが生まれてきます。
こうした「コラボレーション」は昔に比べると増えており、分野を飛び越えてのコラボレーションが生まれやすくなっています。
おだんご屋さん同士ではなくて、おだんご屋さんと和紙屋さん、リボン屋さんがコラボして、かわいらしい和紙に和洋折衷なリボンを巻いたおしゃれなパッケージのおいしいおだんごが誕生するということもありえるのです。
すり合わせるってどういう意味?
冒頭で述べたように、「すり合わせる」という意味は、慣用的には二つの物事の調和をとることを言いますが、具体的にどういうことでしょうか。
再確認しておきましょう。
調整すること
物事をつき合わせて調整する、というのがまず一番に思い浮かぶ意味でしょう。
三省堂・大辞林の例では「もう少し両者の意見をすり合わせる必要がある」とあります。
「すり合わせる」の最も基本的な意味がわかりやすいですね。
場を整えること
すり合わせるからには「何か」と「何か」、ふたつ必要なわけですが、その両者の立場がかけ離れていたり、不仲であったりすることは当然あります。
親睦を深めるために飲み会が催されることがありますが、両者の都合をすり合わせて初めて成立するものですよね。
妥協点を見つけること
妥協と言うと悪いイメージがある方もいるかもしれませんが、悪いことばかりでもありません。
お互いの最大公約数を見つけていく作業はすり合わせによるたまものです。
すり合わせ能力があるとどうなる?
すり合わせ能力は立派な個人スキルです。
スキルである以上ないよりはあった方が良いに決まっていますが、ではすり合わせ能力があることで何がどうなるのでしょうか。
なんとなくわかっているとは思いますが、改めて言葉にしてみましょう。
物事が上手くいく
すり合わせは社会では必須です。
自分一人だけで仕事もプライベートも過ごせるなら問題はありませんが、現代で誰にも接することなく生活することは困難です。
他者と関わりを持ったその時、すり合わせは必要になってきます。
すり合わせをすることで物事が上手くいきます。