そして、「態(わざ)」には、意識的に何かをするという意味があるので、その「態」が2回繰り返されることにより、「わざとらしい」という意味になったようです。
️「業々」との違いは?
でも、ここですごく大きな疑問が残ります。
じつは、「わざわざ」という言葉を漢字に変換すると「業々」ともなるんです。
これって、何か意味の違いがあるんでしょうか?
それとも、同じ意味ですがそれを表す漢字が2つある、ということなんでしょうか??
あえて何かをやること
じつは、「業」が2つ並んだ「業々(わざわざ)」は、あえて何かをやること、という意味があります。
それで、「わざわざ御見舞にきてくださり、本当にありがとうございます。」というように、あえてしてくれたことに対して使う表現なんです。
「態」が2つ並んだ場合は、それが「わざとらしい」とか、「しなくてもいいことをする」と言ったマイナスなイメージを持っていたのに対し、「業」を2つ並べた「わざわざ」は、そのようなマイナスな要素は見つかりません。
それで、「業々」と書く場合には、ついでとかではなく、特別にしてくれたことや、特にそのためだけに、あえて行う、ということを意味しているといえます。
労いの意味がある言葉
それで、「業々」は、相手がしてくれたこと労をねぎらう意味があります。
先程、例としてあげたように、「業々御見舞にきてくださり、本当にありがとうございます。」というのは、しなくてもいいことをしてくれた、という意味合いは全くありません。
むしろ、お見舞いに来るということのために、時間とかお金や労力を使ってくれた、そのことに対しての労いの意味を込めた表現です。
感謝やお詫びに使える
それで、わたしたちはときに「わざわざすみません。」と言うこともありますよね。
それは、きっと相手が払ってくれた労力への認識と感謝とともに、そんなことをしてくれたことへ「申し訳なかった」という気持ちが伴っていることでしょう。
相手があることのために特別に払ってくれた労力や犠牲へのお詫びと感謝の気持ちを表現しているわけですね。
なので、ここにイヤミの感情とか相、手がわざとらしいことをしている、というような否定的なメッセージは一切込められていません。
なので、「業々」と書く場合には、それは労いの気持ち、感謝やお詫びの気持ちが表現されていて、「態々」と表す「わざわざ」の意味とはちがってくるわけです。
逆に言うと、「態々」と書くときには、それには「わざとらしい」とか、「しなくてもいいことなのに」とか、そんな感情が含まれている事がある、ということになりますね。
だから、お手紙などでもお詫びとか感謝とか労を誠実にねぎらっているときには、「態々」という漢字は使わず、「業々」と書きましょう。
️態々の使い方
では、「態々」はどんなシチュエーションで使うことができるのでしょうか?
「態々(わざわざ)〜」といった、よく使うフレーズをピックアップしてみました。
態々ありがとう
よく使うフレーズとして、「わざわざありがとう!」と言うときがありますね。
ただ単に「ありがとう!」ではなく、「わざわざ」をつける、ということにはどんな意味があるのでしょうか?
たぶん、多くの場合は意味合い的には、特別に払ってくれた労力へ労いの気持ちから言っているのでしょう。
例えば、学校や仕事場に何か忘れ物をしたとします。
家に帰ってその忘れ物に気づいたけど、今日は雨がひどいから明日までそれはそのままにしておくことにしました。
しかしなんと、友人がその忘れ物に気づいて、それをあなたの自宅まで届けてくれたのです。
そんなときには、「雨なのに、わざわざ届けてくれてありがとう!」って言うことがあるでしょう。
この場合、もしかしたら2つの意味に受け取れるかもしれませんね。
雨という足場の悪い中で、それでも自分のために遠回して家に忘れ物を届けてくれた、その特別な親切に対して、本当にありがとう、そして迷惑をかけちゃってごめんね、という相手がしてくれた行為への労いと感謝の気持ちです。
それなら「業々」という漢字のほうが合っていますね。
しかし、もしかしたら相手がしてくれた行為がちょっと迷惑に思えることもあるかもしれません。
「そんな雨の日に”わざわざ”届けてくれなくなってよかったのに。」という気持ちです。
この場合は、しなくてもいいことをしてくれちゃったよ、という気持ちが入っているので「態々」が正しい漢字ということになりますね。