しかし和食ではありません。
ここではもう少し古い文化的背景のある「和食」を中心に取り上げていきます。
広い意味では日常的に食べている食事
食文化は、地方によって大きな差が出ます。
日本のような狭い国土であっても、実に多種多様な展開が見られます。
地方の食文化をテーマにした料理番組は、まったく途切れそうな様子はありません。
代表的な日本料理と言われるものも、大陸からの伝播や、ごくせまい地域の流行など、小さな点から、大きく拡散していったのではないかと思わせます。
懐石料理
懐石の本義とは茶事において、「薄茶」「濃茶」を喫する前に提供される料理のことだそうです。
軽い食事で、お酒も提供されますが、本来は茶をおいしく飲むための料理です。
同音の「会席料理」は、懐石から発展し、よりお酒を楽しむことが主眼となりました。
両者は菜の出る順番が違い、会席の方がよりリラックスしたものです。
次に挙げるには、正午に出る茶懐石の一般的な順序です。
1、飯、汁、向付、2、酒、3、煮物、4、焼き物、5、預け鉢、6、吸い物、7、八寸、8、湯と香の物、9、菓子(甘味)
お茶を喫する前にこれだけ食べるわけです。
大変ですね。
なお有名な松花堂弁当とはこれらを略式にしたものだそうです。
精進料理
野菜、海藻などの植物性食品を材料とした料理のことです。
精進とはサンスクリット語(古代インド語)からきている言葉で、美食を戒め、粗食をもって精神の修養を図るという意味です。
現代日本では、肉類、魚類を使わない料理全般を指すようになりました。
平安、鎌倉時代に禅宗の僧が中国から学んだ料理法ということです。
ここで味噌などが導入された結果、日本料理の味がしっかりしたものになりました。
すると精進料理とは、非常に年季の入った、日本料理の祖先のような存在ということになります。
筆者は一昔前中国のお寺で精進料理を食したことがあります。
それは豆を非常にうまく使ったものでした。
豆の発するエネルギーに、肉食のような満腹感を覚えたものです。
物足りなさはまったくありませんでした。
おせち料理
おせち料理とは、本来5つある節句のご祝儀料理すべてをさしていたそうです。
それがやがて正月料理一本に集約されていったようです。
今の形式は江戸時代の武家社会の作法から出来上がったものということです。
おせちの基本は、祝い肴三種(三つ肴、口取り)、煮しめ 酢の物、焼き物となっています。
地方により構成は異なっています。
三つ肴でも関東は、黒豆、数の子、ごまめ、関西では、黒豆、数の子、たたきごぼうと違っています。
いずれも日持ちする保存に適した食品が基本でした。
食品保存技術の進んだ現代では、中華料理、西洋料理などバリエーションは多彩となりました。
おせち料理が人気を保持している要因は、こうした進化にあるのかも知れません。
おせちの特徴といえば重箱を組み合わせた組重です。
これはめでたさを重ねるという意味のようです。