例えば、「お掃除の仕方」という言い方をしますが、それはお掃除の方法ということですね。
物事の”やり方”はいろいろとあるわけですが、その”やり方”を丁寧に表現したのが「致し方」ということです。
方法がないという意味としての丁寧な言い回しとして、「致し方ない」という表現があるようです。
文学のようなかしこまった印象
「致し方ない」と聞くと、ちょっと固い印象があるかもしれません。
普段「お掃除の致し方」とは言わないように、ちょっとかしこまった印象を与える表現ということになります。
しかし、文学の中ではけっこう「致し方のないことである」というような表現が使われていたりします。
「◯◯は致し方のないこととして~」というように、NEWSなどでも使われることもあります。
謙譲語の致す
先ほど、「致し方」というのは「しかた」を丁寧な言い回しにした表現だということでしが、「致す」という表現自体が丁寧な言い回しです。
「致す」というのは、「する」の謙譲語です。
自分のことを下げて言う時や、改まった気持ちを表すときに「いたします」という表現を使いますよね。
「ご案内いたします」とか、「わたしからすべてお話しいたします」という感じです。
「こちらから改めてお電話いたします」、「資料などはすべてこちらで用意いたしますので・・・」というように、謙譲語として「致す」という言葉は結構つかっているんですよね。
ビジネスシーン、接客用語として日常的に使っているのです。
しかし、丁寧な表現として、自分を低めるという意味ではなく使うこともあります。
例えば、「こちら、いい香りがいたしますわね」というような、ちょっとお金持ちの奥様風の言い回しになります。
あと、「ただ今トラブルが発生いたしました」というように、丁寧な表現として使われますね。
目上の人に使うと失礼!
でも、「さっさと致せ!」とか「◯◯を致すでない!」という命令形になると、とても尊大な言い方になります。
自分が相手のする行為に対して、上からものを言っていますから、相手の好意にたいして「致す」という表現を使うのはとても失礼となってしまいます。
「する」の尊敬語は「なさる」です。
「致す」は自分の行動に対して使う謙譲語なので、もし相手の行動に対して尊敬の気持ちを込めて話すなら「する」は「なさる」に変えます。
よく間違える表現としてショッピングなどをしていると、「どちらにいたしますか?」と店員さんが聞いてくることがありますよね。
でも、正解は「どちらになさいますか?」です。
また、「どうかいたしましたか!?」と聞くのも間違っています。
「どうかなさいましたか!?」が正しい尊敬語となります。
では、「致し方ない」は相手にどんなイメージを与えるでしょうか?
「(何かを)する方法がない」ということを、丁寧な言い方にして「致し方ない」という表現を使うことがあるかもしれません。
たまにビジネスシーンでも、先方にメールで「◯◯ということでしたので、それは致し方のないことだと思います」というような内容を送る人がいます。
しかし、そのような表現はとても失礼になってしまいます。
確かに、「しょうがない」という意味のことを、丁寧な言い方にしてお伝えしているように感じるのですが、こちらが相手の行動について評価していること自体がもうすでに失礼です。
「こちらは完全に納得できているわけではないけど、あなたがそういう考えなら、もうしょうがないんじゃない?」的な、上から裁定を下しているようなニュアンスを与えてしまいそうですね。
「致し方」は、確かに丁寧な言い回しなのですが、自分に対して「致す」という言葉を使う時に謙譲語になります。
そのため、目上の人に対して「致し方ない」というのは、相手を尊敬している言葉でもなく、相手の行動を上から裁定しているというニュアンスになるので、「お前は何様だ!」と思われてしまうかもしれません。
️致し方ないを使うシチュエーション
「致し方ない」という意味について考えてきましたが、では、次にいつ、どんなシチュエーションで使う表現なのか見てみましょう♪
諦めるとき
本当はやりたくないことや、本当は関わりたくないことでも、もう逃げることも避けることもできないと悟った時、皆さんはどうしますか?
諦めて取り組むのではないでしょうか?