仮にBさんが占い師とグルであったり、この家が詐欺行為で騙し取られた家であることを知っていて買ったりした場合は善意ではなく悪意があったことになり、Aさんが保護され家も返ってきます。
Bさんに悪意があったかを証明するのは難しいかもしれません。
明確な証拠があれば占い師と共に詐欺行為で刑事裁判に持ち込めるかもしれませんが、そうでなければBさんに悪意があったかどうかで民事裁判で争うしかありません。
民事訴訟法
民事訴訟法における『当事者』とは、「その名において訴え又は訴えられた者」のことを指します。
訴訟を進めていくにあたり、当事者が誰かをまず確定させる必要があり、これを『当事者の確定』と呼びます。
基本的には、訴状に書かれている人が当事者になります。
民事訴訟では、私人同士が争います。
訴えを起こした人が原告、起こされた人が被告と呼ばれます。
当事者同士が納得すればそれで良いので、裁判において話し合った結果和解する、ということもあり得るわけです。
民事訴訟においては、裁判で求められる『真実』は当事者同士が納得できる範囲のものであれば良いので、立証のハードルも刑事訴訟に比べると低くなっています。
相手より自分が正しいことが立証できれば裁判には勝てるのです。
自分に有利な事を自分で証明し『高度の蓋然性』が認められるレベルまで証明できれば基本的には認められます。
しかし刑事訴訟においては、誰から見ても真実に見える客観的な『真実』が立証できなければいけません。
誰がどう見てもこの人がこの犯罪をおかした、という証拠が出てこなければ被告人は無罪となるのです。
刑事事件の場合は『当事者』と言わない
刑事事件のときは、被害者からの被害届を受けて警察が捜査し、その結果が書類送検され、担当の検察官が聞き取りを行って起訴するのか不起訴にするのかを決めます。
不起訴の場合は文字通り起訴されませんので、なんのお咎めもなしになります。
起訴の場合は裁判が行われ、検事が裁判において被疑者の罪状を詳らかにし、その結果で有罪なのか無罪なのか、有罪であればどのような刑が適当かという結論が下されます。
捜査や裁判においてプロである検察官に対抗できるように、被疑者である被告人には法律のプロである弁護士をつける権利があるのです。
『被告人は無罪である』という無罪推定が原則となっているからです。
「疑わしきは被告人の利益に」といった言葉を、聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
加害者である容疑をかけられた被疑者と被害者となり、基本的には当事者とは呼ばれません。
福祉用語としても使用される
福祉用語として使われる『当事者』は、基本的にはそのケースで取り上げられている本人のことです。
福祉分野で起きている問題は、何らかの社会問題のひとつであることがほとんどであり、その社会問題を抱えている本人が当事者と呼ばれます。
本人の家族や支援者、福祉施設の職員などの周囲の人間が『当事者』の中に含まれることもあります。
統合失調症などの障害を抱えた『当事者』の活動や暮らしの中で起こる、病気によって起こる不快感や不調などの症状、薬との付き合い方や周囲の人との関係上のトラブルや苦労など、さまざまな問題についての研究を『当事者研究』と呼びます。
当事者が自助のために、またはそれを助けるための当事者団体が行っていることが多いようです。
当事者が日々を送りやすくするための「研究テーマ」を探し出し、トラブルをパターン化したり関係者の経験を取り入れたりしながら当事者に合ったやり方で問題を理解し、前向きに生きていくというのが研究の重要な部分なのです。
福祉分野において当事者がかかえる問題は、障害などの病気自体からくる問題だけではなく、それによって生ずる人間関係上の問題が深刻になることが多いため、当事者の体験を持ち寄って経験としてパターン化し、共有することで問題を解決または沈静化させるのです。
これにより、当事者は生きていく上での希望ややりがいを見つけやすくなります。
関連する法律用語
ニュースやドラマなどで耳にはするけれど、なんとなく聞き流してしまっているので意味はよくわかっていない、という言葉も多いかもしれませんね。
当事者という言葉にまつわる法律用語をいくつかご紹介していきます。
当事者能力
訴訟法の上で、訴訟の当事者になることができる一般的な資格のことを言います。
『訴訟当事者能力』とも呼ばれます。
民事訴訟法28条前段および29条で既定されています。
この当事者能力が無い場合は、民事訴訟を起こすことができません。