「仇」のつくりは「人(ひと)+九」です。
1人と9人あわせて10人で仲間になるという意味で、本来はチーム・仲間という意味だったのですが、10人ぐらいの仲間では仲間割れは起きがちだったのでしょう。
はじめから敵だった相手とは異なり、仲間割れして敵対する元同胞のほうが憎しみは深くなります。
そのため、感情込みの敵・害悪=「仇」となったのです。
使い方
「恩を仇で返す」を使う場面は、様々なシチュエーションで目にします。
いくつか例を挙げてみます。
戦国時代
時代劇なら戦国時代モノで良く出てきます。
小さい頃から面倒を見て目をかけて立派な武将に育て上げます。
ところが年月を経て自分が窮地に陥った時に、自分を滅ぼす敵の1人として殺しにやって来るのです。
「恩を仇で返す」の典型パターンです。
古代ローマの英雄カエサル暗殺
古代ローマの英雄カエサル暗殺の有名な場面。
「ブルータスよ、お前もか!」も「恩を仇で返す」が当てはまるシーンです。
有名な古典悲劇物語の世界では、洋の東西を問わず「恩を仇で返す」は鉄板パターンの1つです。
単純な対立ではなくて愛憎渦巻くドラマが展開するので、読む人の心に強く刻み込まれるの
です。
スターウォーズ・シリーズ
このパターンは現代の映画でも変わらず踏襲されています。
スターウォーズ・シリーズは、ハリウッドの不朽の名作です。
ルーク・スカイウォーカーの父親、アナキン・スカイウォーカーは、ジェダイの騎士に見出されて育てられたのに、結局暗黒面に落ちて、ほぼ全てのジェダイを殺してしまいました。
「恩を仇で返しまくり」です。
倍返しどころか、数千倍返しの壮絶な「恩仇」です。
現実の社会
物語の世界を離れて現実の社会でも様々な場面で見つける事ができます。
よくあるのは、下っ端の時代は極貧に喘ぐような業界でのお話しです。
例えば売れない芸人の世界。
売れていた先輩芸人に何かと面倒を見て可愛がってもらっていた下っ端芸人が売れっ子になった途端、疎遠になってしまい、その後先輩芸人が落ち目で困っているのに何もしてあげないどころが、邪険に袖にしてしまいます。
そんな様子を見たら「恩を仇で返すヤツめ!」とセリフを吐くチャンスです。
売れない時代に「あなたは絶対本物だから!」と健気に支えた内縁の妻が、歌手がブレイクした途端にぼろ雑巾のように捨てられてしまう。
そんな酷い仕打ちが週刊誌にすっぱ抜かれたら「恩を仇で返すゲス野郎!」とライブコンサートに乗り込んで罵るチャンスです。
そこまでベタベタでなくても、日常生活ではいくらでも、このような状況を目にします。
ビジネスでの場面
良くあるのはビジネスの場面。
社長や上司が見込んで何かと目をかけて育てた部下が、より条件の良い競合他社に転職したり、独立して競合になったりしますよね。
そんな時は「チッ、恩を仇で返された」とグチを言うベストタイミングです。
最近は恩や義理、人情に対する思いが総じて薄くなってしまっています。
怒髪天を突くようなケースには滅多に出会わないでしょうが、ちょっとした不義理、恩知らずな行為に出会うことは、日常茶飯事になっています。
起きてしまった事は変えられません。