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お歯黒には何の意味があったの?日本...(続き3)

既婚女性が歯を黒くする化粧法

お歯黒に関しては、全ての女性が行っていたわけではなく、既婚女性が行っていたということがどの時代でも多いようですね。

未婚の女性がそれをするかどうかということに関しては完全に時代によって異なるのですが、既婚女性の証としておこなっている人が多かったというのはどの時代でも変わりありません。

完全に消えてしまう明治時代などにも既婚女性は行っていますし、それよりも前の時代のお歯黒も、やはり、既婚女性が主なお歯黒化粧の年代でした。

既婚の女性がお歯黒をしていたのは、もちろん、既婚であるということをしっかりと前面に出すためという意味もあったと思います。

ですが、それだけではなく、既婚の女性が結婚と共に歯を染めることで、貞節な妻という誓いを立てるような意味合いがありました。

白という色は何色にでも染まることができます。

ですが、黒という色は何色にも染めることができない色です。

そういった意味を込めて、他の男性には目を向けない、二夫にまみえずということになるのです。

この時代は女性の地位があまりよくありませんでしたし、貞節あるということは何よりも大切なポイントでした。

だからこそ、それをきちんと示すために既婚女性がお歯黒をしていたのです。

もともとは貴族が主に使用

もともと、お歯黒の文化があったのは貴族でした。

そもそも、お歯黒はとても時間がかかります。

染めることが目標なのですが、一回で綺麗な黒に染まってくれるほど、歯は弱いものではありません。

どうしても落ちてしまうこともありますから、何度も染めなければいけないのです。

それをするような経済的な、そして時間的な余裕があるのは貴族だけでしょう。

昔の貴族は時間がたくさんありましたし、そういった身だしなみという面での文化を作る存在でもありました。

平安時代や鎌倉時代など、身分の高い女性が行っていた文化がお歯黒なのです。

このお歯黒は、既婚女性が行っているのはもちろんのこと、鎌倉時代ころになるとお歯黒を始める年齢が低くなっていき、婚約前の幼い姫などがお歯黒を始めていました。

政略結婚で早めに結婚するのが当たり前の時代でしたから、こうした文化の年齢がどんどんと下がっていたのです。

最も、庶民がこうしたお歯黒をするようになっていくと、どんどんと始める年齢が上がっていきました。

成人の印としても使われる

成人の印として使われるお歯黒
お歯黒は成人のしるしとしても使われた時代があるそうです。

この時代の結婚の年齢を考えると、かなり早い時期に行われていますし、それほど結婚と成人の年齢が変わらないということからも、「成人のしるしとして使われた」ことと「既婚女性の身だしなみ」という事実は矛盾していません。

成人の印として歯を綺麗な黒に染めることで、それまでの幼い少女から、今度は女性に変わっていくという表示となるのです。

現代ではそれほど露骨な成人の印というものはありませんが、歴史の中では、成人の印というのはたくさんの儀式がありましたし、現代でもそういった文化を持っている民族がたくさんいます。

男性がお歯黒をすることも稀にあった

ここまでは女性が行うメイクとしてのお歯黒について述べてきましたが、実は、男性がお歯黒を行っていた例もあります。

それが戦国の世です。

平家の人間なども文化を習ってお歯黒を行っていたようですし、戦国の世になってくると、いつ首を取られても見苦しくないようにという理由で武将も化粧を行っていました。

女性がするような化粧をするということですから、その時代に則った化粧をするとなると、それは当然お歯黒も含まれます。

そのために、武将もお歯黒をしていたということになるのです。

これ以外の時代では男性のお歯黒はあまり見られませんが、現代でも男女ともにお歯黒をするという民族もいます。

女性の比重の方が高い文化ではありましたが、だからと言って女性だけの特権と言うわけではなかったようですね。

一説には妖怪の一種がお歯黒を嫌がる、お歯黒の人間ならその妖怪を倒すことができるという言い伝えのために、男性もお歯黒をしていたというものもあるようです。

時代によって使われ方が異なる

ここまで見てきたとおり、お歯黒は時代によって使われ方が異なってきました。

根底には既婚女性が行うものとしてきたことが多かったようですが、ただのオシャレとして意識していた時代もあったでしょうし、成人の意味が込められていたこともありました。

どちらにしても、お歯黒はこの時代にはポジティブなものとして受け止められており、現代の審美眼では理解できないことではありますが、どの時代でも美しいもの、何かの印といった意味で使われていることが多いように思われます。