心で考えることが「所存」であるのなら、それを口に出した時点で「意見」になると言っても過言ではないでしょう。
意向
「意向」は、「どうしたいか・どうするつもりかという考え」「心の向かうところ・思惑」などの意味があります。
「所存」は「心に思っていることや考え」という意味ですので、まさしく意向そのものと言えるでしょう。
心に思うことを口に出す時には「所存」となりますが、「所存」はあくまでも自分自身の考えを述べる際に使う言葉ですので、相手の意思や意見を言う際には「所存」という言葉は使いません。
一方で、「意向」は自分の考えだけでなく、相手の考えを示す際にも用いる言葉です。
例えば「私の意向は◯◯です」と口に出すこともあれば、「◯◯はあの人の意向です」と言うこともあります。
むしろ、「意向」を口にする際には、自分の考えに対してではなく、相手の考えに対して言葉にすることの方が多いかもしれません。
自分の考えを言葉にする場合は「意向」ではなく「意見」や「所存」という言葉を用いるのが一般的です。
️所存の正しい使い方
「所存」とは、要するに「私はこう思う」「私はこう考える」という意志の表明です。
「考える」「思う」という言葉の代わりに「所存」を使うのが普通で、ビジネスシーンのようにかしこまった表現が求められる場面では、「考える」「思う」の代わりに「所存」を使います。
そうすることでその場に相応しい言葉使いが出来ますので、周囲から悪い印象を受けることはありませんし、また一定の教養はあるとみなされます。
普段あまり使い慣れない人では、「所存」という言い方は何だかとても堅苦しい印象に思えるかもしれませんが、実際にはビジネスシーンにおいてかなりポピュラーな言葉です。
それゆえ例え自分が口にする機会は少なくても、他の人は頻繁に使っていたり、メールの文書などで目にしたりする機会が多いのです。
では、「所存」を正しく使うためにはどのようなことに注意すれば良いのでしょうか?ポイントを以下にまとめました。
目上の人に使える言葉
「所存」は敬語の一種です。
敬語は主に目上の人に対して用いる言葉ですので、「所存」という言葉を使う際は相手が目上の存在であるのが基本です。
また、目上の相手だからこそ、「◯◯する所存です」と全体の文章や言葉使いも丁寧であることが求められます。
「◯◯の所存」と短く言葉を切ると、敬語を使っているようできちんと使えていない上に、まるで時代劇の中の言葉使いのように、相手に妙な違和感を与えてしまうかもしれません。
そのため、きちんと「所存」以外の部分でも丁寧な言葉使いをする必要があります。
また、敬語ですので目下の相手には「所存」を用いることはまずしません。
目下の相手にこちらがへりくだる必要はありませんし、もし敬語を使えば相手が困ってしまいます。
丁寧な言葉使いは立場に関係なく誰にしても問題はありませんが、敬語の場合にはきちんと互いの立場や関係性を把握した上で使うように気を付けましょう。
「思う」の謙譲語
「所存」とは、「思う」の謙譲語です。
謙譲語は目上の相手に対して使う敬語で、自らをへりくだった言葉の表現方法を用います。
例えば「もらう」ならば「いただく」、「行く」なら「伺う」など、常に自分の都合よりも相手の都合や立場を優先したものの言い方をします。
謙譲語を使う時には、相手を自分よりも上の存在だと認めていることになりますので、当然言葉使いに合わせて態度も失礼がないようにしなければなりません。
例え口では謙譲語で話していても、態度が上から目線だったり適当なものであったりすると、慇懃無礼な印象に受け取られてしまうことがあります。
慇懃無礼な態度は、タメ口で話されるよりも人によっては嫌味に感じてしまいますので、「所存です」と言葉にする際にはそれに合った態度をとるように心がけましょう。
自分の考えや意見を伝えるとき
「所存」は、自分の考えや意見を伝える時に用いる言葉です。
「私はこう思います」という言葉を目上の人に伝える時に、「私はこういう所存です」と謙譲語に言い換えて伝えます。
そうすることで、目上の人に敬意を払いながらもきちんと自分の考えや意見も伝えることが出来ます。
また、へりくだった言い方と礼儀を払った態度で接すれば、「所存」の内容が豪快なものであったり、やや過激なものであったりしても、相手は失礼に感じることなく受け取ってくれる可能性が高いです。
さらに、「こう思う」という自分の考えや意見を伝えていますので、「◯◯の所存です」と言い切る際にはその言葉を裏付けるような堂々とした態度が求められます。
相手や場面によって使い分ける
すでにご紹介したように、「所存」とは敬語の一種で、目上の相手に対する謙譲語です。