この他にも、目上の人から何かを受けたり、受け取ったりする際には、今でも丁寧な礼儀作法が用いられています。
「受ける」の謙譲語
「拝受」は「受ける」の謙譲語です。
謙譲語とは敬語の一種で、簡単に言えば「自分よりも相手の方が上位にあると判断される場合に、相手に対して自分がへりくだった表現をすること」です。
例えば教師と生徒、上司と部下のように、明らかに立場で差がある場合には、下の立場の人が謙譲語を用いることになります。
お互いに立場が同等の場合には謙譲語を使う必要はなく、また明確な上下関係がない場合には、丁寧語や尊敬語を使っておけば無難でしょう。
さらに、立場は関係なくとも、互いの年齢が大きく開いている場合にも、若者が年配者を敬う形で謙譲語を用いることはありますが、必ずしもその限りではありません。
例えば若い社長と年配の社員の場合には、年配の社員が若い社長に対して謙譲語を用いることになります。
謙譲語には他にも「いただく」「申し上げる」「伺う」などがあります。
️漢字を解体して考えてみる
漢字の成り立ちは、「象形文字」「指事文字」「会意文字」「形声文字」の4種類に分類されます。
「象形文字」は、目に見えるものの形を線で描いた絵を元にして作られた漢字です。
例えば「日」や「月」「木」などを指します。
「指事文字」は、形に表しにくい事柄を、点や線で示して、その図を元に作られた漢字です。
例えば「上」や「下」「天」などを指します。
「会意文字」は象形文字や指事文字などを2つ以上組み合わせて、元の漢字とは別の意味を表わす文字となった漢字です。
例えば「明」「岩」「炭」などを指します。
「形声文字」は発音を表わす漢字と意味を表わす漢字が組み合わさって出来た漢字です。
例えば「晴」や「味」などを指します。
このように、漢字の成り立ちには4種類あり、それぞれにちゃんとした意味があります。
そのため、一つの言葉の意味を調べる時には、一つひとつの漢字を解体して見ることも大切です。
「拝受」も一つずつ漢字を解体して見ると、さらに詳しくその意味を探ることが出来るでしょう。
「拝」の意味
「拝」には、手紙において署名の下に書くことによって相手への敬意を表す言葉です。
「拝」を使った漢字には「拝啓」「拝謁」「参拝」「拝命」などがありますが、どれも対象となる相手や事柄に対して敬意を示しています。
「拝」という漢字の意味自体が敬礼やおがむことですので、敬いの気持ちやつつしみの気持ちを表現しています。
そのため「拝」を使った漢字も必然的に相手に対する敬意を表す意味合いの言葉になることが多いです。
敬意を表する
「拝」には、相手に対する敬意を表すという意味があります。
そのため自分よりも目上の相手に対してとくに使う言葉が多いです。
例えば手紙で「拝啓」という言葉を書くことがありますが、これは訓読みで「おがみもうす」という意味があります。
「おがみもうす」とは、「お辞儀をして申し上げる」ことですので、文面における挨拶と言えるでしょう。
私たち日本人は、出会いがしらの挨拶や、人前でスピーチをする際などには必ず一礼をすることが多いです。
まず一礼をしてから言葉を口にするなり、頭を下げると同時に口にするなりさまざまですが、必ずといっていいほどにお辞儀をします。
その頭(こうべ)を垂れるという行為が、相手に対する敬意を払うことでもありますが、それを文面にした時には、相手に敬意が伝わりませんよね。
そこで、お辞儀の代わりになる「拝啓」という言葉を用いているのです。
おがむ
「拝」は「おがむ」という意味があります。
「おがむ」という行為には、「神仏などに手を合わせて頭を下げて祈る」行為や、「懇願する・嘆願する」行為があります。
また、「見る」の謙譲語でもありますので、自分よりも目上の人を目にする際には「おがむ」と表現することもあります。