また、文学作品からはこちらのような表記があります。
“あの夢を感づいて、ゆうべから、急に夫婦の間に溝ができたのではなかろうか”
林不忘『あの顔』
“音信不通なら、血のツナガリだけではうめられない溝ができて、元のようにシックリしない他人の距てが双方に”
坂口安吾『明治開化安吾捕物21その二十トンビ男』
「溝ができる」は英語にすると「beestranged」となります。
疎遠になる、別居しているという意味で、英語での例文も夫婦間やカップル、血縁など親密な関係の仲たがいに使われることが多いです。
「溝が生まれる」
「できる」を「生まれる」と言い換えることもあります。
「生まれる・生じる」を使う場合、軋轢・不破・亀裂・対立などを代用することができます。
「溝が深まる」
感情などは「深まる」が多用されます。
“逃げたいような哀れさの深まるのを見るにつけ、克子はそれを見る苦しさにも堪え”
坂口安吾『明治開化安吾捕物15その十四ロッテナム美人術』
“それを思うたびに、心に一つのおどろきが深まるように思うのは”
宮本百合子『雨の昼』
“いと仏を念じているのであるが、悲しみはますます深まるばかりであったから”
紫式部『源氏物語49総角』
「溝」は掘るものであり、人間関係に関しては感情が伴うため「深まる」という表現がしっくりきます。
また、溝は本来細く掘ったものであることから「広がる」という表現は不適合です。
「あの2人の間の溝は深いから、そう簡単に協力し合わないだろうね」
「彼らの溝が深まっていくのはとめられない」
のように関係の悪化を示すときは、埋められないほどという意味を込めて「深い」「深まる」を使いましょう。
「溝を感じる」
「溝を感じる」は近年よく耳にするようになりましたが、もともとはセットで使う言葉ではありません。
「溝ができたように感じる」を短縮した言い方といえます。
夫婦の溝ができてしまう5個の原因
さて、本題です。
夫婦間の溝について見ていきましょう。
愛し合って結婚したはずの男女の間でも何かをきっかけに溝が生じることがあります。
その原因にはどんなものがあるのか代表的な5個をご紹介します。
1.価値観の違い
夫婦のみならずカップルの破局原因に多いのがこの価値観の違いです。
大切にしているものや感覚の違いを価値観と呼んでいます。
仕事、恋愛、家庭、実家、お金、友情など何を一番に大切にするかといった違いから、話す内容や趣味嗜好、金銭感覚や潔癖度合、性生活の頻度なども含みます。
具体的には下記のようなものがあります。
・掃除が雑なのは構わないが水回りまで汚いのは無理
・趣味を一緒にやろうとまでは言っていないのに否定してくる
・実家がピンチの時すら「実家と私のどっちが大事なの」と言うのが理解できない
・家庭を守るために働いているのに残業すると怒られる
・その日の気分で欠勤する感覚に不安を覚える
・どうして高い方の牛乳を買うんだろう
・国産牛なんて高くて普段じゃ買えないのにカゴにポンポン入れるなよ
・数か月ぶりに友達と飲みに行っただけで嫌味を言われた
・疲れているのに毎晩求められる
・ごはん茶碗に米粒を残しても気にならない感覚がわからない
・子供はどうしても私立の小学校に入れると言って聞かない
・男は働き女は家を守るという古い感覚がこびりついている
・「男は度胸、女は愛嬌」のように男たるもの、女たるもの、という決めつけがある