そのため自分に対して「まったく頭が下がるよ~」と使うことはまずありませんし、仮に冗談で自分に使ったとしても、言葉の意味や使い方としては間違っていますので、本人は冗談のつもりで言ったとしても恥をかいてしまうことがあります。
私たち日本人にはお辞儀の習慣がありますが、お辞儀をする際には必ず対象となる相手がいるように、「頭が下がる」という言葉を使う際も必ずその相手が存在しています。
そしてその相手の行いや心がけに対して、「自分ではとても出来ない、すごいなぁ」と純粋に感心した時に敬意を示して「頭が下がるよ」と使うことがあるでしょう。
他人に対してこのように敬意を示す際に、他の言葉で表現するとしたら、どのような言葉が相応しいでしょうか?以下に日常的に似た意味や使用意図として用いられる言葉を挙げていきます。
その場その場で相応しい言葉を選んで相手に対して敬意を示しましょう。
まったく恐れ入る
「恐れ入る」という言葉には、いくつかの意味があります。
「相手の好意などに対して有難いと思う気持ちや、恐縮する気持ち」「相手に失礼や迷惑をかけてしまったことに対する申し訳ないという気持ち」「相手に物を頼む時や挨拶の際に用いる言葉」「あまりのことに驚き入るばかりだという気持ち」などです。
日本語には、同じ言葉の中に相手への感謝と謝罪のどちらの気持ちも込められていることがよくあります。
そのため、誰かに助けてしまった時や、迷惑をかけてしまった時のどちらの場合にも「恐れ入ります」と使うことがあり、日本人であれば暗黙の了解で、どちらの意味で使われた言葉なのかを理解することが出来るでしょう。
とはいえここでの「恐れ入る」は、「あまりのことに驚き入るばかり」という意味で類語として用いられています。
あまりのことに驚くという表現の中には、自分ではとても出来ないような真似をした人に対する驚愕や尊敬などの感情が込められています。
そのため「あの人にはまったく頭が下がります」というところを、「あの人にはまったく恐れ入ります」と言い換えて使うことが出来るでしょう。
尊敬する
「尊敬」とは、「相手の人格が尊いものと認めて敬うこと」です。
すなわち対象となる人物の考えや行動などを、敬うべきものであると自分が認識した際に用います。
もっと簡単に言えば、「自分がすごいと感心した相手に対して抱く敬いの気持ち」が尊敬です。
私たちが尊敬している人の多くは、自分にはないものを持っていたり、出来ないことをやっていたりするでしょう。
例えば自分よりも頭が良かったりスタイルが優れていたり、またはお金持ちだったり仕事で成功していたりと、自分が「こうなりたい」と思わせてくれるような相手に対して尊敬の念を抱きやすいです。
心が素直な人は、自分よりも少しでも優れた人に対しては直ぐに尊敬の気持ちを持つでしょう。
一方で負けず嫌いの人やプライドの高い人は、素直に相手を認めて尊敬することが出来ずに、相手の粗捜しをしたり、欠点を責めたりします。
尊敬という言葉は日常的にごく当たり前に用いられている言葉ですので、「あの人には頭が下がるなぁ」という言葉を堅苦しく感じた時や、もっと気軽な場面では、「あの人を尊敬する」とシンプルな言い方が出来るでしょう。
畏敬の念を抱く
「畏敬」とは、「崇高なものや偉大な人を畏れ敬うこと」です。
一般的な「尊敬」とは違い、特別にすごいと感じた対象に対してのみ用いられる言葉です。
例えば神様のように、人知を超えた存在に対しては単なる尊敬ではなく、畏敬の念を抱くでしょう。
また、歴代の優れた大統領や素晴らしい発明をした偉人など、歴史に名を遺すような特別に優れた存在に対しても、畏敬の念を抱くことはあります。
畏敬の念を抱く対象は、身近な存在ではなく、自分にとってかなり遠い場所にいることが多いです。
だからこそ通常の尊敬とは異なり、特別に畏れ敬う際にのみ用いられる言葉です。
「頭が下がる」と似た意味にはなりますが、それ以上に気軽に使うことのない言葉でしょう。
もっと特別に、相手に対して礼儀を払う際や敬いの感情を表す際に用いられる言葉です。
尊ぶ
「尊ぶ」は、「たっとぶ」とも「とうとぶ」とも読みます。
「尊いものとしてあがめる」「価値あるものとして重んじる、尊重する」などの意味があり、「尊敬」よりは重々しい意味として用いられることの多い言葉です。
「頭が下がる」という言葉自体もやや堅苦しい言葉の響きですので、同じようなシチュエーションで言葉を言い換えて「尊ぶ」と表現することも出来ます。
しかし意味に「あがめる」という表現があることからも、身近な人や師事を受けている相手に対して用いるよりも、人知を超えた存在やもっと遠くて偉大な人物に対して用いられることの方が多いでしょう。
作家駆け出しの人が大作家とあがめられている人に対して使ったり、いち社員が大企業の社長にまで昇りつめた人に対して使ったりすることがあります。
2.連想される言葉
「頭が下がる」という言葉は、感心や尊敬の気持ちを表現しています。
そしてこの言葉からは、いくつかの連想される言葉があるでしょう。