「一旦荷物を持って行きますね」「一度家に帰ります」「一時このままでお願いします」など、あらゆる時と場合で似たものの言い回しをすることがあります。

外国人にはちんぷんかんで、使いわけがまったく分からないことが多いですが、一方の私たち日本人でさえも、きちんと言葉の使い分けができているのか疑問に思えることがあるでしょう。

日頃当たり前に使っているけれども、実は意味の違いを理解していなかったり、使い分けができていなかったりする「一旦」と「一度」について詳しくご紹介していきます!

この機会に正しい意味や使い分けをマスターしましょう。

「一旦」とは?

「一旦停車してください」や「一旦別の方向に進みましょう」など、事あるごとに「一旦」という言葉を使う機会は多いです。

あなた自身も、日常会話の中で自然と「一旦〇〇しよう」と使っているかもしれません。

「一旦」や「とりあえず」が口癖になっている人は、それこそ毎日のようによくこの言葉を使っていることでしょう。

しかし、この「一旦」という言葉が、本来はどのような意味で、どのような場面で使われるべき言葉なのか、きちんと理解した上で使いこなせているのでしょうか?私たち日本人は、日頃から当たり前のように日本語を使っています。

あまりに当たり前過ぎて、一つひとつの言葉の意味をしっかりと理解しないままで、なんとなくのニュアンスで使っていることはありませんか?

恐らくは誰でも、「なんとなくいつも話しているけど、そういえば言葉の由来は知らない」という身に覚えがあることでしょう。

それが間違っているとは限りませんが、やはり曖昧な認識で使われている言葉は、時に意味や使い方を誤ってしまうことがあります。

誤った使い方をしてしまわないためにも、この機会に「一旦」の正しい意味や使い方をマスターしておきましょう。

読み方「いったん」


「一旦」は「いったん」と読みます。

「一」は漢数字の一で、「旦」は朝や夜明けという意味の漢字です。

「旦」を他の漢字と組み合わせると「元旦」や「歳旦」などのように、朝や夜明けを意味する漢字に相応しい他の漢字に変化します。

ただし「一旦」の場合には、朝や夜明けを意味する言葉にはなりませんので、必ずしもどの漢字と組み合わせても夜明けを表わす意味になるというわけではありません。

意味

「一旦」には、副詞の意味と名詞の意味があります。

副詞の意味としては「ひとたび、一度」や「ひとまず、一時的に」です。

また名詞の意味としては、「一度」や「しばらくの間、一時」です。

どちらも同じような意味ですが、文法的な違いがありますので、使い分ける際には注意が必要です。

「一旦」とは、何かをしている時、それを途中で止める際にその止めることを意味する言葉です。

例えば食事をしている時に何か急用ができたなら、途中で食事を止めてそちらへ移りますが、それを「一旦食事の手を止める」と表現することがあります。

また、例えば読書中にトイレへ行きたくなった際には、「一旦読書を止めてトイレ行く」などと表現することもあります。

「一旦」は、一時的に作業の手を止めたり、中止したりするという意味ですので、継続して中止し続ける場合にはこの言葉を使うことはありません。

また、完全にストップする場合にも用いることはありません。

まだ途中かけで、これからまた再開する予定のある場合に用いることが多いでしょう。

一時的に

「一時的」とは、時間を表わす意味です。

とはいえ、「一時的」がいったいどの程度の時間なのかということまでは定義されていません。

ほんの1分程度の場合もあれば、1時間ほどかかることもあります。

もしかしたら数日かかることもあるかもしれません。

どの程度の時間なのかはその時と場合によって大きく異なりますが、ある程度の時間が経過したらまたやっていることを再開したり、別のことを始めたりする予定がある場合には「一時的」の表現を用いることがあります。

例えば家の周辺で停電が起こってしまったら、暫くの間は家中の電気がつかなくなってしまいます。

しかしいつまでもそのままということはなく、早ければ数分程度で電力が復旧するでしょう。

こうした場合、「一時的に家が停電になった」と表現することがあります。

また、一度作業などが止まり、次に再開するまでの間がおおよそ短いと予想される場合にも、「一時的に」と表現されることは多いでしょう。

ひとまず

「ひとまず」は、「とりあえずそこで一区切りをつけるさま」や「十分ではないがおおむねよいと評価をするさま」という意味の言葉です。

ひとまずは「とりあえず」や「一応」と同じ意味の言葉ですが、言葉の使い方によってそれぞれに使い分けをしています。

例えばもうこれで終わりにしようとする時に、「ひとまずはこれで終わりにしましょう。」と言うこともあれば、少し言い方を変えて「一応これで終わりということでいいでしょう。」と言うこともあります。

また、「とりあえずこの辺りで終わりましょう。」と言うこともあるため、自分がどのような意図をもって言葉を発するかによって、同じ意味でも別の言い方をすることがあります。

「ひとまず」は、ここで一区切りを付けようという明確な意志の感じられる言葉ですので、同じく区切りをつける意味の「一旦」と同じ意味だと考えられています。

ひとたび

「ひとたび」は「一回」という意味であり、また「重大な事態にいたる原因や条件を仮定するさま」という意味でもあります。

後者の意味は簡単に表現するならば、「もしも」の話です。

例えば「もしも白鳥が飛び立ったら、青空に白い羽が美しく映えるだろう。」という言葉を言い換えて、「ひとたび白鳥が飛び立てば、青空に白い羽が美しく映えるだろう。」と表現することもできるということです。

よく小説の中や、古い言い回しとして使われることが多いため、あまり日常的に用いられることはないでしょう。

前者の回数を表わす意味としてなら、例えば「一回放った矢がきれいに的にささった。」という文章を「ひとたび放った矢がきれいに的にささった。」と言い換えることもできます。

回数としての意味も、また仮定としての意味も、どちらも「一旦」と同じような意味だと言えるでしょう。

仮定の条件を示す意味を表す

「一旦」には、何かをしている動きを途中で一度止めるという意味もありますが、さらに仮定の条件を示す意味を表わすこともあります。

例えば「一旦作業の手を止めて休憩に入った。」という文章であれば、実際に作業を止めて休憩に入ったのだという状態を示しています。

しかしこれが、「一旦作業の手を止めて休憩に入りましょうか。」と誰かに提案する形の文章であった場合には、まだ作業の手は止まっていないものの、手を止めて休憩をとるということを仮定していることになります。

ひと朝

「一旦」の「旦」の漢字は、朝や夜明けを意味します。

そのため、「一旦」が「ひと朝」を意味することもあります。

例えば「一旦目が覚めた」という文章の場合、「寝ている途中で目が覚めた」という意味を表わすこともあれば、「ひと朝迎えて目が覚めた」という意味も考えられます。

とはいえ「ひと朝」という意味で「一旦」が使われることはほとんどありませんので、基本的な意味として知っておく程度で問題はないでしょう。

短い時間

「一旦」は、基本的には短い時間を表わしています。

例えば仕事の合間のトイレ休憩や、ちょっと外まで食事を買いに行く程度の短時間を示す場合に使われることが多いです。

ほんの1分~10分程度の短い時間で、はっきりと何分かかるかは分からないけれども、そんなに時間はかからないということを一言で表現する場合に「一旦〇〇してくるね」と言うことがあります。

また、「何分で戻ってくる」と明確な時間を伝えてしまうと、それ以上かかってしまった場合に周りの人に「遅い」と思われたり、誤解をされたりするかもしれませんので、それを避けたい人があえて曖昧な表現として「一旦」を使うことがあるでしょう。

日常会話の中で「一旦」を使う場合、どんなに長くてもせいぜい30分~1時間程度の場合が多いです。

「一旦」の類語や関連語


「一旦」には、さまざまな類語や関連語があります。

日常生活の中で、時には「一旦」と言わずに、似たような意味の別の言葉を用いることがあるでしょう。

前後の会話によっては類語や関連語を用いた方が、都合がいい場合もありますので、予め「一旦」の類語や関連語を知っておき、いざという時にはそちらも活用していきましょう!

一時的に

一時的というのは、物事が継続することではなく、断続することです。

ずっと途切れることなく継続しているのなら、一時的な状況になることはないでしょう。

一方で断続的な場合には、時々途切れながら続くということですので、一時的に何かをするという形になります。

例えば朝会社に出勤してから退社をするまで、一度も休憩を入れずに仕事をし続けている人というのはいないでしょう。

皆どこかしらで小休止を入れたり、昼休憩をとったりしています。

そうした場合に、例えば「一旦休憩に出てくる」と表現することがあるでしょう。

物事を行いながら、途中でそれを中断させたり、その場限りで一度何かをしたりするという意味としての「一旦」の類語には、どのようなものがあるのでしょうか?

差し向き

「差し向き」とは、「今のところ」や「さしずめ」「言ってみれば」という意味の言葉です。

「さしあたり」の古い言い方ですので、あまり日常的に使われる言葉ではないでしょう。

身の回りで同じ意味の言葉を使う場合には、ほとんどが「さしあたり」や「さしあたって」と使います。

「差し向き」には、とりあえず今のところはといった意味が込められていますので、一時的なものとして考えられ、「一旦」の類語に含まれます。

とはいえ、「一旦」の場合は、基本的に物事を途中で中断させる、もしくは行うといった意味合いが強いため、「差し向き」とは少々意味が異なる面もあるでしょう。

そのため類語ではありますが、「一旦」の代わりとして「差し向き」もしくは「さしあたり」を使う機会はそれほど多くはないかもしれませんね。

差し詰め

「差し詰め」は、「差し詰まること」「どんづまり」「暫定的に結論を出すさま」「当面、さしあたって」などの意味があります。

「暫定的に結論を出すさま」というのは、「結局」や「要するに」ということですので、大体の結論を出す際には「差し詰め〇〇だろう」などと使われることがあります。

小説や会話の中では、暫定的に結論を出す際によく用いられますが、「一旦」の類語としての意味は、「当面、さしあたって」が当てはまります。

「当面」や「さしあたって」も、物事を一時的なものとして捉えている言葉です。

一時的に何かをする際や中断する際の意味としては「一旦」と同じですが、こちらも「一旦〇〇しよう」という言葉を「差し詰め〇〇しよう」と言い換えることはほとんどありませんので、「一旦」の類語として使われる機会はそれほど多くはないでしょう。

とりあえず

「とりあえず」には、2つの意味があります。

「第1に」という意味と、「先のことは考えず、現状だけを問題とするさま」という意味です。

前者の場合には、何をおいてもまずは優先しようという気持ちの時に用います。

例えば仕事でミスをしてしまった時に、その対処をする前にまずは迷惑をかけてしまった同僚や上司に謝罪をしなければなりません。

その際に「とりあえず謝罪をしなければ・・」と使うことがあるでしょう。

また後者の意味の場合には、例えば休日に何かをしようと思い、急ぎの用事もなくただ頭に思い浮かんだことをやろうとする際に、「天気もいいし、とりあえず洗濯でもしようかなぁ。」と使うことがあります。

私たち日本人は、この「とりあえず」の意味をごく自然に使いこなしています。

しかし、使う人がどちらの意味で使うことが多いかによっては、他人の言う「とりあえず」の意味を誤解してしまうことがあります。

例えば後者の意味として使うことが多い人は、大事な場面で誰かが「とりあえず〇〇しようか」と言った時に、「何でそんな適当なんだ!」と怒ってしまうことがあります。

言った本人は最優先という意味で「とりあえず」と言ったのに、聞き手がそれを先のことは考えないという意味で受け取ってしまったため、誤解が生じトラブルになってしまったのです。

「とりあえず」の意味をきちんと理解して、場面によって使い分けができていない人は、時々このような誤解が生じることがあります。

また、「とりあえず」も一時的な意味として「一旦」と似ていますので、時々「一旦」の代わりとして使われることがあります。