「ご教示」の意味
では、そんな教えるという意味である「教示」という2字熟語に、「ご」をつけて「ご教示」にすることでなにか意味が変化するのでしょうか?
「ご」+「教示」=「ご教示」
教示という教えるという言葉に、「ご」をつけて「ご教示」とすることで丁寧な印象になります。
だから敬語なのだ、失礼がないのだ、というなんとなくの感覚は、みなさんお持ちなのではないでしょうか。
そもそも、「ご」や「お」のような言葉を、正式名称では「敬語接頭辞」と呼びます。
言葉のあたまに「お」や「ご」をつけることで敬語になるというわけなのですが、この「ご」と「お」には使い分けがあるのです。
「お」は日本で生まれた言葉、いわゆる「和語」につけられる敬語接頭辞になります。
日本にもとからあった言葉で、漢字でいうと訓読みのものにつけられます。
「お山」「お父さん」「お天気」「お酒」「お店」「お賽銭」「お年玉」「お知らせ」といった感じですね。
普段意識していませんが、なんとなくても「ご山」「ご父さん」なんて言いませんし、「ご知らせ」も違和感しか覚えません。
「お食事」が「ご食事」はもしかしたら違和感はないという方もいらっしゃるでしょうか。
でも食事の敬語接頭辞は「お」が正解です。
これらは基本的には、日本にもとからあった日本生まれの言葉であると言えるでしょう。
対して、「ご」がつけられるのは漢語です。
遠い昔にお隣の国だった中国から伝わってきて、それが日本語として定着した言葉で、漢字の音読みにつけられます。
「ご教示」もそうですし、「ご利用」「ご立派」「ご卒業」「ご入学」「ご祝儀」などの言葉につけられる敬語接頭辞は「ご」ですね。
とはいえ、先程例にあげた「食事」。
訓読みでしょうか?
これは和語なのでしょうか?
でもお食事といいます。
なぜでしょうか。
漢語であっても、具体的な名詞については「お」がつくことが多いのです。
日常的によく使うような「食事」「元気」「化粧」「電話」などの言葉には、敬語接頭辞として「お」が使われます。
例外なのです。
女性は「ご」よりも「お」を使う傾向があり、その言葉が定着したのだという説もあります。
逆に和語に「ご」がつけられるときというのもあって、「ごゆっくり」「ごもっとも」「ご親切」「ご盛ん」がそうです。
そして、「お」をつけても「ご」をつけても良い言葉というのもあります。
たとえば「返事」という言葉。
「お返事」ということが多いですが、「ご返事」も言いますよね。
「会計」も、「お会計」だけでなく「ご会計」ということもあります。
和語か漢語か、音読みか訓読みかという区別方法なら、「ご」で良さそうなものですが、これはなぜなのでしょう。
男性が本来の使い方で「ご」と言っていたものを、「お」を使う傾向のある女性がその単語を使うときに「お」をつけて使っていて、どちらも浸透したという説が考えられています。
いかにも漢語らしい漢語ではなく、和語として扱うこともできるようなあいまいな言葉だった場合も、「お」「ご」ふたつの敬語接頭辞が用いられています。
日本語としてなじんでいる具体的な名詞の言葉には、「お」がつくことがあるようですね。
馴染んでいる、日常に使われている言葉としては、たとえば食べ物に関する言葉があげられます。
「野菜」「肉」「醤油」「酒」「塩」「味噌」「魚」「芋」「茶」……。
いかがでしょうか。
どれも「お」ではないでしょうか?
はじめに「お」が敬語接頭辞として用いられたのは、室町時代初期頃ではないかと考えられています。