また「賞」の使い方を誰にでも用いるのは、相手への謙虚さがない、と解釈されかねない危険性も存在します。
つまり、誰彼構わず「褒めて」と半ば強制的に聞こえるような言い方になってしまうと、これはもはやその人に「謙虚」さのかけら、も感じられなくなってしまい、人間関係がますますこじれてしまう原因を作りかねない事態に陥らせてしまう、という事なのです。
そもそも「ご賞味ください」には「わたくしのような半人前の人間が作った料理で申し訳ございませんが、腕によりをかけて一生懸命作りました。
お口に合うかどうか分かりませんがどうぞおためしくださいませ」というくらいの謙虚な気持ちが籠っていて初めて言葉の意味を成すもののはずです。
謙虚さは人間関係において非常に重要です。
その気持ちが籠っているからこそ「ご賞味ください」という言葉に初めて命が吹き込まれるのではないでしょうか?
目上の人に使うのはNG!
「ご賞味ください」は使う相手によってもNGとなってしまう言葉です。
特に自分よりも年齢が上の「目上の方」に対しては使用すべき言葉ではありません。
基本的に全ての目上の人、というのは自分よりも当然ながら人生を長く生きられています。
当然ながらそこには目に見えない「年長者を敬う」、という姿勢があって当然です。
なのに「褒めてください」といったぶしつけな言い方である「ご賞味」を使うという事は、自分の立場を顧みていない失礼な態度、と取られても仕方ないでしょう。
「ご賞味ください」は丁寧な表現ではあるのですが、使うべき用途にかなり神経を使わばければならない言葉、と言えるのです。
「お召し上がりください」が正しい言い方になる
それでは目上の人に使う言い方は何が正しいのでしょうか?それは「お召し上がりください」です。
目上の人に対しては「褒めてもらうのが目的」であってはいけないのです。
美味しい料理心おきなく召しあがってもらうのが本来の目的なのです。
相手の喜ぶ気持ちを最優先に考えて料理を振る舞うのが最優先事項なのです。
自分の作った料理を「美味しいだろう」と押しつけて褒めてもらおうとする姿勢はとても「ご賞味ください」の本来の意味とはかけ離れてしまっていることを自覚しなければいけません。
目上の人に料理を提供する場合は「お召し上がりください」で徹底しましょう。
その方が相手に余計な気持ちを起こさせずに済みますからね。
「心ばかりのものですが」も良い
目上の人に使う言葉として「心ばかりのものですが」も相応しいといえるでしょう。
「心ばかりのものですが」という意味には相手に対する遠慮ともてなしの両方を感じる事が出来ます。
そしてそこには「自分がいいものをあなたに対して食べさせるのだから感謝しておくれ」のような驕り高ぶった発想は微塵も感じられません。
あくまで相手に対する敬意と尊敬を前面に押し出している風が読み取れます。
「ご賞味ください」は聞きようによっては相手に対して「強制」を促している意味合いも感じられます。
そういった意味では「心ばかりのもですが」は謙遜と敬意とが合体した日本人らしいもてなし方、とも言えるでしょうね。
「つまらないものですが」もNG
目上の人に対して「ご賞味ください」を使わない代わりに「つまらないものですが」という表現を使うのは全く持って「NG」な表現となります。
本来「つまらないもの」というのは親しい間柄や職場での同僚の関係程度に抑えておきたいもの。
もしくはご近所さんに対して用いる程度だと思ってもらった方がいいでしょう。
それをよりによって「目上の人」に使うなど、口が裂けても言ってはいけません。
最近は目上の人をないがしろにするような扱いが当たり前のようになっている風潮もありますね(目上の人がそれに相応しい行いをやっていないから、とも言えそうですが)。
しかし、人間付き合いの基本として目上と年下の関係というのは歴然とした「差」があって当然だと思えます。
だから、目上の人に向かって友達言葉のような言い方をやったり無礼な行いをするなど「言語道断」なのです。
よって「つまらないものですが」などという言い方。
目上の人に対して使わないようくれぐれも注意しましょうね。
お店の人がお客さんに使うのはセーフ
では「ご賞味ください」はその他にどのような場面で使う事が出来るのでしょうか?