悲しいという気持ちを辞書で引くと「心が痛んで泣きたくなる気持ち」とのことです。
現代人は一定数、悲しみを感じることができない人がいると言われています。
ある研究によると、悲しむような出来事に遭遇した時、本来機能するはずの悲しみを感じる脳の部位ではなく性的な昂ぶりを感じた時に活発になる部位が反応している人がいるそうです。
SNSなんかを見ても「泣いた」「これは泣ける」などといった言葉が乱立し、言ってみれば「悲しみ中毒症」と名付けてもいいような人々がなんと多いことか、と呆れたくなるようなご時世になってきました。
悲しみというものは、できれば感じたくはないのが通常です。
しかし、悲しみ中毒症になっている人は悲しんでいる自分をどこか楽しんでいる、さらにいえば悲しみによって興奮を感じていることがあります。
それに気づかず、間違った対処法をとっていると、いつまでたっても悲しみの中に身を置くことになりかねません。
悲しみはいつか必ず癒えます
最近で「悲しい」と思ったことはあるでしょうか。
平凡に暮らせている人だと、あまりないような気がします。
当然、災害、親や近しい存在の死、信頼していた人からの裏切りなどはありますが、そう頻繁に訪れる悲しみではないはずです。
そして、あまりにショックで立ち直れそうもないような悲しみも、いつか必ず癒えます。
ベルギーで行われた実験によると、嫌悪や喜び、安心など27の感情の内、最も持続時間の長い悲しみですら120時間(5日間)しか持たないことが示されています。
つまり、本来は5日もすれば悲しみの感情は消えうせるはずなのです。
だからこそ、5日経っても癒えない悲しみがあるのなら向き合う必要があります。
悲しみの感情もレベルが様々
世の中の人たちが何に対して「悲しい」と言っているかを調査してみたところ、「ライブのチケットが取れなくて悲しい」「アプリをダウンロードしようとしたら容量が足りなくて悲しい」「欲しいものがあるのにお金が足りなくて悲しい」「月曜がきたので悲しい」などがありました。
わりと日常的に悲しいと感じている人が多いようです。
悲しみの最大レベルはやはり、近しい人の死ではないでしょうか。
死別にしても悲しみレベルが違い、百歳あたりまで生きた祖父母の大往生なら、悲しいという気持ちより「すごい爺さん婆さんだったな」といった尊敬や感嘆の気持ちかもしれません。
しかし、友人の早すぎる死や、まだまだ若いはずの親、我が子、恋人との死別などであれば悲しみは相当なものです。
悲しみの最低レベルだと、自販機で冷たいはずの飲み物を買ったらまだぬるかったとか、買ったばかりの服に虫がとまったとか、そんなことです。
レベルが違いすぎるので、悲しみの持続時間も違います。
最大レベルなら数年続くこともあれば、最低レベルだと0.5秒くらいで悲しみは過ぎ去ります。
いずれにしても言えることは、予期せぬことや今の自分にはどうにもできないことほど悲しみを感じやすいということでしょう。
悲しみの原因がどこにあるのかでその後も変わる
基本的に、悲しみは「不意に訪れた出来事」「自分ではどうにもできなかった結果に至ってしまった時」に訪れます。
よく仕事でミスをして怒られて悲しいなどという人がいますが、それは悲しいとは少し違います。
ミスをしたのは自分であって、申し訳ない、後悔するなどは当てはまるにしても悲しいという感情は該当しません。
自分が原因で生まれた悲しみの場合
さすがに直接自分がやらかしたことについて「悲しい」と思うのは、本来責任を感じてしかるべきところ、あまりに他人事すぎる感覚ですが、自分がしたことが間接的に悲しい出来事を引き起こすことはあります。
借金をしたばかりの頃はなんとかなると思っていても結果的に返済できず諸々が苦しくなって悲しい、友人と距離的に離れ離れになるだけならまだよかったのに喧嘩別れしてしまい会えなくなって悲しい、親の死自体が悲しいのに暴言を吐きすぎた過去が蘇ってなおさら悲しいなど、悲しみを増長させているケースが多いです。
概ね罪悪感を伴うので、何度も思い出しては悲しみの記憶を更新しつづけ、なかなか抜け出せません。
人からされたことで生まれた悲しみの場合
信頼していた人からの裏切り、失恋、浮気(不倫)された、根も葉もない陰口や誹謗中傷を耳にしたりなど、人からされたことでの悲しみは、しばしば憎しみや不安、ストレスを伴います。
憎しみの感情は悲しみと比べると持続時間が短く60時間、不安は24時間、ストレスは3時間ではあるものの、複合的なマイナス感情となるため憂鬱な気分にさせられます。
この憂鬱さは何度も嫌な記憶を思い出すことによって持続してしまうため、結果的にずっと「悲しい」と思うようになります。
思いだしさえしなければ5日もすれば飛んでいく感情ですが、人からされたことというのは、その人と会う度に思い出してしまうでしょう。
失恋や浮気されたなどであれば、その相手との関係を断ち切れるので復帰も早いですが、裏切りや陰口などは仕事などで会わなければならない相手が原因であることが多く、断ち切るのが難しいという点でやっかいです。