この言葉もやはり村上らしく、教訓調にはなっていません。
11. 「船が入港するまで待つな。船に向かって泳げ。」ヴォルテール
18世紀の啓蒙思想家ヴォルテールの時代はまだ蒸気船は登場していませんでした。
帆船を使ってイギリスとフランスは植民地獲得を争っていました。
遅れをとらないように急げというわけではないでしょうが、時代はそれなりにどんどんスピード感を増していたのでしょう。
この言葉は時代に乗り遅れるな、と言っているように聞こえます。
12. 「人を信じよ。しかし、その百倍も自らを信じよ。」手塚治虫
現在に日本漫画界の繁栄は、手塚治虫がいなければ実現していない、と断言することができます。
新しい表現の地平を切り開いた革命家とも言えます。
彼の出現によって、人生が変わった人は漫画家、読者とも数えきれないでしょう。
手塚は何度か経験した低迷期を、常に新しい作品を発表することで打破していきました。
この言葉はそうしたときの緊迫感が伝わってくるようです。
13. 「無知の知」ソクラテス
ソクラテスは古代ギリシャ哲学者のさきがけです。
著作はなく、彼をの思想を語っているのはプラトンをはじめとする弟子たちです。
この言葉はソクラテスを語る上で、必ず言及される有名なものです。
無知であることを知っていることは、知恵自慢の者より少し優れている。
また知らないことを知っているとするよりも、知らないことは知らないとしたほうがよいとするものです。
14. 「大切なのは問うことをやめないことだ」アインシュタイン
アインシュタインは20世紀最大の物理学者として称えられています。
天才の代名詞として扱われていますが、26歳で「特殊相対性理論」を発表するまでは、ほとんど挫折の連続でした。
校風になじめないと学校を何度も変わり、スイスでは大学受験にも失敗しています。
自分の望む研究環境を手にするまで、とても時間がかかりました。
この言葉は研究の成就だけでなく、そうした若き日の研究環境への苦闘をも表しているのかも知れません。
15. 「高みに上る人は、皆らせん階段を使う」ベーコン
ベーコンは16世紀イングランドの哲学者で、シェークスピアと同時代人です。
貴族階級の出身でケンブリッジ大学に学び、23歳で国会議員となるなど完全な上流階級の人です。
イングランドが大英帝国へ向かう変革期の人でした。
経験主義哲学の祖として、次世紀のヴォルテールから評価されています。
これはいかにも新世紀のイギリス人にふさわしい、堅実さを感じます。
16. 「学問とは僅少の時日の間に古今数百千年の人類の経験を受け取ることである」ルソー
ヴォルテールと同じ18世紀フランスの啓蒙思想家ルソーは、厳しい家庭環境に育ちました。
典型的な不良少年となり、上流夫人のヒモのような生活を送ったり、身体を壊したり、世に出る前はさんざんといってよい境遇でした。
しかしどんなときでも読書をやめることはありませんでした。