「とばり」とは、和歌に使われることも多い響きの美しい言葉です。
カーテンのような区切り、周りが見えないと比喩的な使い方をすることもあります。
今回は「とばり」を使った漢字、使い方、日本古来からある美しい言葉を紹介します。
清らかな世界に触れ、しばし癒しの世界を満喫しましょう。
とばりとは
「とばり」とは、室内と外を区切るための「垂れ布」という意味と、1つのものを見えなくするための「覆い隠すもの」という意味を持っています。
いずれも現代のカーテンのように1つの大きくて分厚い布で、何かを覆い隠すためのはたらきをするものです。
それぞれ、垂れ布と覆い隠すものについて掘り下げて考えてみましょう。
垂れ布
垂れ布とは、部屋の出入り口につるされている布のことです。
平安時代の貴族たちの生活を記録した絵画にも残る帳(とばり)としての働きもしました。
幕をめぐらせ、作戦計画を立てる場所という使い方もします。
本陣、本営といった使い方もします。
大河ドラマの戦国武将が、戦の立て直しや今後の見通しを立てるシーンにも垂れ布による仕切りが用いられます。
遥か昔から、垂れ布は様々なシーンで用いられていたことがよく分かります。
どこかベールに包まれていて、特定の人にしか分からないところに神秘性を感じます。
分からないからこそ知りたいと感じますし、手が届きそうで届かないところが絶妙に私たちの心をくすぐります。
覆い隠すもの
覆い隠すものとは、ある特定の対象物や雰囲気などが、別のものを包んで見えなくすることや、その様子を意味する表現として用いられます。
真実が分からないようにすることや、真実が隠されていて分からない様子を意味する表現としても用いられます。
覆い隠すものと聞くと、ベールに包まれた見えない世界を想像します。
昔の偉人たちは、どんなに悩んでも見えないものを和歌で謳い、自分の気持ちを形に残そうとしたのでしょうか。
タイムスリップにのって聞きにいかないと分からないことが多いですが、過去の書物や歌から想像することほど楽しいものもありません。
とばりの漢字
とばりは漢字で表記することがあります。
細やかな意味合いまできちんと伝えたいときは、漢字で表記したほうがいいです。
とばりの漢字を知り、それぞれの言葉の奥の深さに触れてみましょう。
それでは、とばりの漢字をいくつか紹介します。
帳
「帳」という漢字は、とばりと聞くと一番最初にイメージされる漢字です。
とばり「帳」とは、室内にゆるりと垂れ下げて、室内と室内を隔てるために使われた布帛(ふはく)のことを言います。
長い垂れ幕のようなものをイメージしてみてください。
平安時代の貴族の宮中にあるような、優雅な垂れ幕です。
たれぎぬ、たれぬのといった解釈もします。
「夜の帳が下りる」と古来は表現し、夜になって暗くなることを言いました。
源氏物語、若紫のシーンでは「御几帳のかたびら引きおろし」という文面があり、「御几帳の垂れ布を引きおろし」という意味合いで用いられています。
物を覆い隠すもの、さえぎって見えなくするためのものといった使い方もします。
現代も残っているものと言えば、あまり使う機会がありませんが「蚊帳」があります。
「蚊帳」も室内との隔たりを作るためのものです。
とばりが揺らめく満月の夜を想像しながら、少し優雅な気持ちに浸ってみましょう。
美味しいドリンクを片手に月夜を眺めていると、私たちの持っている悩みのほとんどは笑って忘れてしまえそうです。
帷
「帷」という漢字も、同じくとばりと聞くとすぐにイメージされる感じです。
とばり「帷」とは、四方にはりめぐらせ、引きまわした垂れ衣のことを言います。
私達が生まれる前のずっと前の偉人たちが寝室で就寝時、四方をはりめぐらせた垂れ布をイメージしてみてください。
ひきまく、まんまくといった解釈もします。
経帷子(きょうかたびら)の略で、裏のない一枚だけの布であるという意味もあります。
経帷子とは、仏葬で亡くなった人に着せるサラッとした白い麻の着物のことです。
最近は白木綿も使われています。