ビジネスの場やプライベートなどで、誰かに何かをしてもらった時や、これからしてもらいたい時に、「お手数をおかけします」という言葉を使うことは多いです。
あなた自身、普段からちょっとしたことでこの言葉を使ってはいませんか?
何気なく使うことの多い「お手数をおかけします」という言葉も、本来の意味や正しい使い方を理解していなければ、場合によっては相手に失礼な印象を与えてしまいます。
そんな誤解や失敗を生み出さないためにも、この機会に「お手数をおかけします」の意味や使い方をマスターしておきましょう!
「お手数おかけします」を使いこなそう
日本人は他人に対して腰を低くして接する傾向があります。
相手が例え子どもであっても、自分が仕事中であれば敬語で話す人は多いですし、相手がいかにも自分よりも年上であれば、プライベートの場面であっても敬語で会話をする人が大半です。
また、相手の年齢に関係なく、初対面やあまり親しくない相手には丁寧な態度や言葉遣いをする人は少なくありません。
そうした腰の低さと言うよりは、他者に対する丁寧な態度は日本人の良いところでもあります。
とはいえ、あまりに腰が低すぎると慇懃無礼に思われてしまうこともあるため、下手に出過ぎるのも考えものでしょう。
「お手数をおかけします」という言葉も、そうした日本人特有の、相手に対する気遣いや優しさ、感謝の気持ちなどから生まれた言葉です。
どんなに些細なことでも相手に対して「申し訳ない」「有難い」と感じる気持ちから自然と口を突いて出る言葉ですので、「お手数をおかけします」が何かと口癖になってしまっている人もいるかもしれませんね。
しかし、そうした気遣いと感謝の心も、使い方を間違えてしまうと相手に不愉快な思いをさせてしまうこともあります。
こちらが気付かない内に相手に不快感を与えてしまわないように、しっかりと言葉の使い方をマスターして、いつでも正しく使えるようになっておきましょう。
「お手数」って何?
そもそも、「お手数」とは何のことでしょうか?
辞書によると、お手数とは「面倒くさいこと」「煩わしいこと」といった意味があります。
また、元々は「手数」という言葉でしたが、これに接頭語である「お」がついて、「お手数」と読むようになっています。
「お手数」という言葉は他人に対して使う言葉ですので、丁寧な言い方になっている方が聞こえも良いでしょう。
言葉の意味自体は今挙げたように、面倒なことや煩わしいことを指します。
例えば朝のゴミ捨てや家事、通勤や勉強など、人によってそれぞれに想像できる面倒なことや手間のかかることが、「お手数」の中に含まれていると言っていいでしょう。
そして、それらを他人にしてもらった時やしてもらう際に、「お手数」という言葉を用いることがあるのです。
労力や工程のこと
「手数」とは、労力や工程のことを意味します。
例えばビジネスの場面で、取引先の会社の人が自分の会社に来た際に、「どうもお手数をおかけして申し訳ありませんでした」と声をかけることがあります。
これは取引先の会社の人が、わざわざ自分の会社まで来てくれたことに対して、道中の労いと感謝の気持ちを込めて「お手数」と言っています。
相手が自分のところまで来ることで、それなりの時間や手間を割いていますので、この場合の「お手数」には労力と工程のどちらの意味も含まれているのでしょう。
また、例えば職場で上司に自分がまとめた資料を確認してもらうとします。
その際に、「お手数をおかけして申し訳ありませんが、ご確認をお願いします」と言いますが、この場合の「お手数」も、わざわざ上司に時間を割いてもらい、自分の書類を確認してもらうという労力や作業、手間などに対して「申し訳ない」という気持ちが込められています。
このように、「手数」には、暗に自分が相手に手間暇や時間といった労力や工程をかけてしまうという意味が込められているのです。
そのため、それに対して続く言葉が「すみません」「申し訳ありません」と謝罪の言葉であることが多いのです。
「てかず」とも読む
「手数」は一般的に「てすう」と読まれることが多いですよね。
「お手数をおかけする」という言葉も、「おてすうをおかけする」と読む人が大半でしょう。
しかし、元々は「手数」と書いて「てかず」と読んでいました。
日本語の読み方としては、「手」と「数」の熟語をどちらも訓読みしている「てかず」が本来の正しい読み方なのです。
ですから、現在でも「お手数」と書いて「おてかず」と読むことは決して間違いではないのです。
というよりも、本当はこちらの読み方の方が正しいと言っても良いでしょう。
一方で、「手数」と書いて「てすう」と読むこの言い方は、熟語の読み方が変則的ですので、本来は正しい読み方とはされていませんでした。
しかし、「手数料」の読み方が「てすうりょう」で定着するようになってからは、この変則的な読み方も公に認められるようになり、今では「てすう」と読む方が一般的となっています。
そのため、「てすう」でも「てかず」でもどちらの読み方でも合っていますが、「てすう」をひらがなの読み方で書く機会はあまりないでしょう。
ひらがなで書く場合には、「てかず」で教わることの方が多いかもしれません。
実際にお手数をかけない場合でも言う
「お手数おかけします」という言葉は、ビジネスのみならず、あらゆる場面で社交辞令として使うことも少なくありません。
実際には自分は相手に何の苦労も手間暇もかけさせていないのに、挨拶代わりとしてこの言葉を用いることがあります。
外国人や、畏まったものの言い方を嫌う人からすれば、「何故何でもない時にまで相手に対して『お手数をおかけする』などと言う必要があるのか」と理解に苦しむところがあるかもしれません。
しかし、私たち日本人には、社交辞令としてこの言葉を使うことがすでに習慣化されており、またとりあえずそう口に出すことによって、場の雰囲気を和らげたり和ませたりする効果も実際にはあるのです。
日本人は相手に対する気遣いからごく自然に謝罪の言葉が口から出てくることが多いため、こうした特有の習慣があるのかもしれませんね。
社交辞令を受ける側が、一々「どうしてあなたがそんなことを言う必要があるのか」と意地悪な質問をしてくるような人でもない限り、大抵は違和感なくその社交辞令を受け入れてくれるでしょう。
ビジネス上のクッション言葉
「お手数おかけします」という社交辞令は、ビジネス上ではクッション言葉として用いられることが多いです。
本題となる話を始める前のワンクッションとして用いたり、実際には相手に手間をかけていなくても、相手の立場を持ち上げるように社交辞令として用いたりすることもあります。
単なる謝罪の言葉であれば、何も悪いことをしていないのにぺこぺこと何度も謝るのは、謝られる方は違和感を覚えやすいでしょう。
しかし、「お手数」という言葉には謝罪のみならず、気遣いや感謝の気持ちも込められていますので、何かの拍子に言われたとしても、とくに違和感を覚えることもなく、また不快な気持ちになることもないのでしょう。
相手への気遣いや感謝の気持ちを示す
「お手数」には、相手に対する恐縮や気遣い、感謝といった気持ちが同時に込められています。
また、その後で「申し訳ありません」と言葉を続けると、さらにそこに謝罪の気持ちも込められますので、たった一言でそれらすべての感情を伝えることができる、大変便利で都合の良い言葉でもあります。
そのため例えば、相手に対して頼み事をする時に言う「お手数をおかけして申し訳ありません」という言葉も、また誰かに目的地への道案内をしてもらった時に言う「お手数をおかけしました」という言葉も、さらには落とし物を拾ってもらった時に言う「お手数をおかけして・・」という言葉も、それらすべての言葉の中に別々の感情が込められているのです。
謝罪、気遣い、感謝のすべての気持ちが同時に込められている時もあれば、場合によっては感情が使い分けされていることもあります。
そしてもし自分に対して感情が使い分けされていても、同じ日本人であれば何となくのニュアンスで、その時の相手の気持ちを理解することができるのです。
これも、日本人同士ならではの感覚と言えるでしょう。
相手に柔らかい印象を与える
「お手数をおかけします」という言葉は、相手に柔らかい印象を与えることが多いです。
例えば謝罪の意味として言葉を用いた時に、「ご迷惑をおかけしました」よりも「お手数をおかけしました」の方が、堅苦し過ぎず、穏やかな印象を相手に与えることが出来ます。
謝罪をする側があまりに堅苦しくても相手が困惑したり、余計に怒れてしまったりすることがありますが、そこに柔らかい印象があると、相手の溜飲も不思議と下がりやすくなるのです。
また、感謝の気持ちとして伝える際には、もちろん「ありがとうございました」という率直な言葉の方が、受け取る側も嬉しいでしょう。
しかし、相手にあれこれと手間を掛けさせてしまった後で感謝の気持ちを伝える際には、同時に相手に労いや気遣いの感情を匂わせる「お手数おかけしました」という言葉の方が、印象が良い場合もあります。
このように、相手に柔らかい印象を与えたい時にも、この言葉は効果的です。
「お手数ですが」とどう違うの?
「お手数ですが」と、「お手数おかけします」とは、どう違うのでしょうか?一見して、言い方が少し違うだけに思えますが、実際にその通りです。
どちらもほとんど意味は同じですが、「お手数ですが」という言葉を用いる場合には、その後にも言葉が続くことがほとんどです。
「~ですが」で言葉が終わっている場合、それに繋がる言葉が必ず後ろに当てはまります。
例えば「お手数ですが、何卒よろしくお願い申し上げます」や、「お手数ですがお願いします」など、後に続く言葉のために、先に「あなたにはお手間をおかけしてしまいますが」と謝罪や気遣いの言葉を告げている状態なのです。
一方で、「お手数おかけします」という言葉では、その言葉だけで一つの短い文章になっています。
先に何か言葉が付いていることはあっても、「お手数おかけします」の後に言葉が続くことはあまりありません。
もし続く場合には、「おかけします」ではなく、「おかけしますが」とわざと続きを匂わせる文体に変わっていることがほとんどでしょう。
意味合いはほぼ同じ
「お手数ですが」も「お手数おかけします」も、意味合いはどちらもほぼ同じです。
敢えて指摘するならば、前者はまだその後に何か言葉が続く気配があり、また言葉が続く場合にはそれは謝罪の言葉ではないでしょう。
「お手数ですが」に続く言葉は、「お願いします」や「よろしくお願いします」がほとんどです。
「お手数ですが申し訳ありません」とは普通言いませんよね。
一方で、「お手数おかけします」という言葉の場合、そこで言葉を言い切ってしまっているため、その後に何か言葉が続くことはないでしょう。
もし「おかけします」を「おかけしますが」に変化させた場合には、その後に「お願いします」という言葉をつけることもできます。
さらには、「おかけして」という言葉に変化させれば、その後に「申し訳ありません」と謝罪の言葉をつけることも出来ます。
どちらも意味はほとんど同じですので、ちょっとした言い回しによる差があるという程度のことでしょう。
「お手数おかけします」のほうがより丁寧
意味は同じでも、言葉の使い方によって若干丁寧さが変わってきます。
例えば「お手数ですが」の場合、その後に続く言葉によっては少々強引な印象を相手に与えてしまうこともあります。
とくに頼み事をする時に、ろくに相手に許可を取っていない内から「お手数ですがこの件よろしくお願いしますね」と言われたら、「何だ一方的に」と思わずムッとなってしまう人もいるでしょう。
どんなに「お手数」という言葉を用いても、そこに続く言葉や言い方が悪ければ、相手には嫌な感情を与えてしまいます。
一方で、「お手数おかけします」という言い方の場合には、「お手数ですが」の時よりは相手に丁寧な印象を与えます。
また、この言葉は予め相談事や話が終わった後で用いる言葉ですので、強引で性急な印象を相手に与えることもなく、穏やかに話をすることが出来ます。
「お手数おかけ致します」が一番丁寧
「お手数」という言葉を用いた中では、「お手数おかけ致します」という言い方が最も丁寧です。
ビジネスの場や年長者、自分よりも上の立場の人を相手にした際に用いることの多い言葉です。
丁寧な物言いと穏やかな気遣いを感じさせるため、相手が不快感を覚えることはまずないでしょう。
しかし最も丁寧な言い方であるだけに、ビジネスの場や少々堅苦しい場面では相応しい言葉ですが、もっと砕けた雰囲気の中で用いると、反対に浮いてしまう言い方でもあります。
場面に合わせて自在に言いまわしを使い分けられるようになるのが理想的でしょう。
他の類義語
「お手数おかけします」という言葉には、他にも類義語があります。
ビジネスの場においても、プライベートの場でも、場合によっては「お手数おかけします」とは違う言い方をした方が都合の良い時があります。
意味が似通っていても、言い方が変わるだけで相手に与える印象も変わりますので、自分と相手の立場や場面などに応じて他の言い方を用いるようにしましょう。
恐れ入りますが
「恐れ入りますが」という言葉は、ビジネスの場でももちろん用いられることがありますが、プライベートの方がより多く使われている言葉です。
例えば初対面の人に話しかける時や、年長者に話しかける時に、「恐れ入りますが」という言葉を使う人は多いでしょう。
また、世代が上の人ほどよく使ってきた言葉でもあるため、高齢の人の方がよく口にする言葉でもあります。
高齢の人がお店の人や交通機関の人に対して、お礼の言葉として「恐れ入ります」と口にしているのを耳にしたことがあるという人もいるでしょう。
その言葉通り、「恐れ入ります」という言葉には、自分に対する謙遜の気持ちと、相手への申し訳ないという気持ち、そして感謝の気持ちが込められているのです。
「恐れ入ります」は本来、「自分にとって過分と思われる目上の人に対しての感謝の気持ち」を意味する言葉です。
また、「目上の人や客に迷惑や骨折りをさせた時の申し訳ないという気持ち」を意味する言葉でもあります。
そのため、腰の低い人ほど、例え対等の立場の人に対しても、謙遜してこのような言い方をすることが多いのです。
ビジネスの場では、上司や取引先の相手に対してよく用いられています。
恐縮ですが
「恐縮」という言葉には、「恐ろしくて身が縮むこと」や「恐れ多いこと」という意味があります。
これを「恐縮ですが」という言葉として用いる際には、また違った意味のニュアンスになります。
例えば誰かに何かを頼む際に、「恐縮ですが、〇〇を何卒よろしくお願い致します」と口にすることがあります。
この場合の恐縮は、「こんなことをお願いするのは大変申し訳ないのですが」や「本当に心苦しいのですが」といった意味として使われていることが多いです。
一方で、誰かに何かをしてもらった際には、「大変ありがとうございます」や「こんなに良くしていただいて本当に感謝致します」といった感謝の気持ちとして「恐縮です」と言うことがあります。
自分から誰かに何かを話しかける際には、「恐縮ですが」の言葉から始まることが多く、一方で誰かに何かをしてもらった時などには、「恐縮です」の一言だけで済ませることが多いです。
【恐縮については、こちらの記事もチェック!】
ご面倒おかけしますが
「お手数おかけします」と似たような意味や言い方の言葉が「ご面倒おかけしますが」です。
ビジネスの場面でも用いられることのある言葉ですが、「ご面倒」とこちらがすでに口にしていますので、本当に相手に対して面倒や手間をかけてしまう場合に用いることが多いです。
実際に迷惑をかける際に使う言葉ですので、あまり社交辞令の言葉としては使われることはありません。
また、「恐縮です」の場合には申し訳ないという気持ちと同時に相手に対する感謝の気持ちも込められていますが、こちらの言い方の場合は、申し訳ないという謝罪の気持ちの方が全面的に強いです。
だからこそ、感謝の気持ちを強く表したい時にはあまり使われることはないでしょう。
お手間をおかけしますが
「お手間をおかけしますが」という言葉も、「お手数おかけします」と意味はほとんど同じです。
また、「お手間を取らせてしまってすみません」といった言い回しも出来ます。
意味はほとんど同じですが、「お手数」と「お手間」では、自分や相手に対する使い方が違っているという大きな特徴があります。
例えば「お手数」という言葉は、相手に対してのみに用いられるものです。
「お手数おかけします」と他人を労い、気遣い、感謝の気持ちを込めて言うことはあっても、自分に対して「お手数」とは言いません。
実際に、「今回は手数がかかりました」なんて自分への言葉として使っている人はいないでしょう。
一方の「お手間」は、相手に対してのみならず、自分に対しても用いる言葉です。
例えば相手に何かをしてもらった際に、「お手間をおかけしました」と言うことがありますよね。
それと同様に、自分も手間がかかってしまうことがあった時には、「今回は手間取りました」と自分に対しても同じ言葉を用いることがあります。
実際に「手間取った」という言い方をしたことのある人もいるでしょう。
このように、「お手間」には相手に対する言い方と、自分に対する言い方があります。
どういう相手に使う言葉?
「お手数おかけします」とは、どういう相手に対して使う言葉なのでしょうか?
ビジネスの場面だけでなく、プライベートでも度々耳にしたり口にしたりする機会の多い言葉ですが、どのような場合にどのような相手に対して用いられていることが多いのでしょうか?
私たちは普段何気なくこの言葉を使っていますので、「自分がどんな相手に対して使う」と特別に意識しているわけではないでしょう。
ここで改めて、どんな相手に対して使う言葉なのかを確認しておきましょう。
ビジネス取引の相手
「お手数おかけします」は、ビジネスの取引相手に対してよく用いられる言葉です。
例えば取引先相手に自分の会社へ来てもらった際には、「わざわざ足を運んでいただきまして、申し訳ありません。感謝いたします。」という気持ちを込めて、「お手数おかけしました」と用いることがあります。
また、これから仕事の依頼をする際には「お手数おかけしますが何卒よろしくお願い致します」と相手に作業の時間を取らせることに対する「申し訳ない」という気持ちを込めて言うことがあります。
一方で、こちらの会社のミスで取引先の会社に迷惑をかけてしまった場合には、事が済んだ後で「この度はお手数をおかけして申し訳ありませんでした」と謝罪することがあります。
この場合には、感謝の気持ちよりもひたすら相手に迷惑や手間をかけてしまったことに対する謝罪の気持ちと、労いの気持ちの方が強いです。
ビジネスの取引相手に対して、「お手数おかけします」という言葉を直接口にする機会は多いですが、同時にメールや書類でのやり取りでもこの言葉は多用されます。
自分よりも目上の人
自分よりも年下の相手に対して、とくにプライベートでは敬語を使うことってあまりないですよね。
そのため、もしも年下の人に何かしらの迷惑をかけてしまったり、または何か助けてもらったりすることがあった時には、「ごめんね」「ありがとう」と口にする方が多いでしょう。
一方で、自分よりも年上の人や目上の人に対しては、当然丁寧語や敬語を使うことが多いため、自然と「お手数おかけします」という言葉を使う機会も多いです。
目上の人に助けてもらうことがあれば、感謝と気遣いの気持ちをこめて「お手数おかけしました」と言いますし、また頼み事をする際にも、「お手数おかけしますが、よろしくお願いします」と相手に手間取らせることに対する謝罪の気持ちと、気遣い、感謝の気持ちを込めて言うことがあります。
そうした丁寧な言い回しは、目上の人からすれば当然の事でもありますが、同時に気分の良いものでもあります。
少なくとも、適当な言葉使いで感謝されたり謝罪されたりするよりは、よほどこちらに対して好感を抱いてくれることでしょう。
お客さん
本来は、店や会社で働く社員と客との関係は対等なものです。
お客が料金を支払う代わりに、店や会社はさまざまなサービスや技術を提供します。
しかし、店や会社はたくさんありますので、できるだけお客に自分のところを利用してもらうために、お客に対しては丁寧な接客態度で接します。
言葉使いもきちんと教育されているところでは敬語を崩すことはありません。
そのため、店や会社側はお客に対して「ありがとうございます」「申し訳ございません」といった低姿勢で接客するというのが、少なくとも日本の店や会社のスタイルでしょう。
お客によってはそれでうっかりと自分の方が店や会社よりも偉い立場なのだと勘違いしてしまう人もいますが、そうした人に対しても、丁寧な口調や態度で接することで、その後の付き合いに繋げていくことが出来ているのです。
メールでも電話でも使える
「お手数おかけします」という言葉は、直接口にするのが一番ですが、メールや電話でももちろん使うことが出来ます。
また、言葉によってはメールや電話にすると軽く受け取られてしまうことがありますが、「お手数おかけします」に関しては皆が当たり前のようにメールや電話でも用いていますので、わざわざ「直接顔を見て言え!」という人や会社はあまりないでしょう。
もちろん迷惑をかけてしまい、その上での謝罪の場合には直接言った方が良いですが、そうしたイレギュラーな出来事がない限りは、メールや電話で使うことは何の問題もありません。
「お手数おかけします」の例文
「お手数おかけします」の意味や、どんな相手に使うのかについてご紹介してきました。
ここからは、この言葉をどのような場面で使うことがあるのかを、例文を用いてご紹介していきます。
以下に挙げる例文以外にも、もちろん日常生活やビジネスなどのあらゆる場面で使われていますが、あくまでもその一部をご紹介します。
大変お手数おかけしますが、明日までに郵送をお願いいたします。
例えば会社で何かのトラブルがあり、急いでそれに対応することになった時、原因となるものが今すぐに手元になかった場合に、それを自分の会社へと送ってもらう必要ができたとします。
その際に、さまざまな事情から期限も迫っていたら、大慌てで対応しなければならず、このような言い方をすることがあります。
「お手数」の前に「大変」と付けることで、相手に対して本当に申し訳ないという気持ちを表しています。
また、「お願いいたします」はその上で相手に対して重ねてお願いをするという意味合いがあります。
言葉を聞くだけでも、相手が急いでいるということがよく伝わってくる言い回しです。
お手数おかけしましたが、お陰様で完成いたしました。
例えば自分の会社で何か大きなプロジェクトを完成させた際に、それに携わってくれた取引先の会社や上司などに対してこの言葉を用いることがあります。
これには、「あなたにご協力いただいたお蔭様で、仕事を完成させることが出来ました」という感謝の気持ちが強く込められています。
まさに、申し訳ないという謝罪の気持ちに勝る感謝の気持ちでしょう。
そのため、そう言われた相手にとっても、嫌な気持ちにはならないでしょう。
使う時の注意
「お手数おかけします」という言葉を使う際には、いくつかの注意点があります。
その注意を怠り間違った使い方をしてしまうと、周りから「あの人は正しく言葉が使えない」と誤解されたり、時には相手に対して失礼な言動になってしまったりすることがあります。
そうなってしまうと相手の誤解を解くのに大変ですので、予め間違いや失敗のないように、言葉の使い方に気をつけるようにしましょう。
注意すべき点を以下にまとめましたので、ご参考下さい。
基本的に目上の人に使う
「お手数おかけします」という言葉は、基本的に目上の人に使います。
学生の頃に敬語の一つとして覚えることもあり、また社会人になってからは必然的に多用する言葉ですので、目上の人に対しては自然とこの言い方が身につくことがあります。
しかし、基本的な使い方を知らないと、目下の人に対しても同じように用いてしまうことがあります。
もちろん丁寧な言い回しは好感を抱かれやすいですが、明らかに目下の相手に対して「お手数おかけします」と言うと、相手が余計に恐縮してしまったり、または慇懃無礼に捉えてしまったりすることもないとは言い切れません。
そのため、基本は目上の人に用いるようにしましょう。
場合によっては目下の人に使っても良い
基本は目上の人に使う言葉ですが、時と場合によっては目下の人に使うこともあります。
それは例えば、相手に大きな迷惑をかけてしまったり、とても助けてもらったりした場合に、それに対する謝罪や感謝の気持ちをしっかりと伝えるために、「お手数おかけしました」と言葉を用いることがあります。
「お手数かけさせます」は間違い
時々、「お手数かけさせます」と言う言葉使いをする人がいますが、これは間違いです。
「かけさせます」という言葉自体は存在していますが、これを「お手数」と同時に使うことはありません。
丁寧語としても敬語としても間違った、おかしな言い方ですので、誤って用いないようにしましょう。
失礼な印象を与える
「かけさせる」や「~させる」といった言い方は、相手に対して強制するイメージがあります。
そのため、「お手数かけさせます」と聞くと、「これから迷惑をかける」といったように上から目線の偉そうな物言いに思えてしまうこともあり、相手に対しては失礼な印象を与えてしまいます。
そのため、「かけさせる」という言葉は敬語では用いることはありませんので使い方に注意しましょう。