大抵、身分の上の人間が暖を取るために当たっていたシーンがあったと思います。
そしてその現物は結構、頑丈で重いです。
女性が「ヨイショ!」と言って持ち上げるには少々、骨が折れる重さです。
それもそうですよね。
もしこの火鉢が簡単に転倒して家の中をゴロゴロしてしまったらあっという間に火事騒ぎになってしまいます。
何せ本物の火が何の保護版もなにもない状態で炭という形で燃えているのですからね。
炭火の焼き肉屋さんに行った事のある方ならば想像しやすいと思います。
コンロの中の炭って一旦火が付くと猛烈な勢いで火が起こりますよね。
もしこの火が火鉢ごと転んでしまったらそれこそ一大事です。
だから火鉢は倒れないようにガッチリと作られているのです。
とにかく、火鉢はガスも電気も灯油も石炭もなかった時代の暖房器具です。
そして光熱費のかからなかった超経済的な暖房器具でもあったのです。
炭を用いて使用する
「火鉢」の燃料は炭です。
これが唯一の燃料です。
この炭を灰の上に乗せ、火を起こして暖を取るのが火鉢の使い方になります。
さてではどうやって「火鉢」に火のついた炭を乗せたらいいのでしょうか?
皆さんも屋外で七輪を使って焼き肉をやった経験がおありならば分ると思います。
炭は下から空気を送り込んで火をつけないとなかなか燃えてくれません。
上からいくら火のついた新聞紙をかぶせても炭に火は燃え移らないのです。
そこで炭に火を起こすための道具が登場します。
片手のフライパンのような形をした鉄製の道具です。
底の部分は適度に穴があいていてこれに炭を乗せてガスコンロであぶって火をつけるのです。
そしてこの火のついた炭を火鉢の灰の上に置けば完了です。
一旦、火の起こった炭ならばあとで別の炭を追加していけば大丈夫。
空気を汚さない快適な炎があなたのお部屋を暖かい空間に包んでくれるでしょう。
炭は薪などのように燃やしても煙は出ません。
よって室内はいつもキレイな空気の状態が保たれる、という事になりますね。
という事で、昔の人たちは火鉢を使うために絶えず「炭」を確保しなければなりませんでした。
と言っても今と違い当時は街中であってもちょっと足を伸ばせば野山は近かったでしょう。
天然の資源が常に身近にあった環境下でしたから確かに光熱費のようなものは今の時代のようにはかからなかったはずなのですよね。
ただ、炭というものは材木をそのまま使えるわけではありませんからね。
ちゃんとした火鉢用の炭となるとやはり炭問屋などが商いとして手堅く取り扱っていたのでしょう。」
火鉢の歴史
それでは次に「火鉢」の歴史についてみていく事に致しましょう。
「火鉢」というものは一体、いつ頃から使われるようになったのでしょうね。
奈良時代に生まれた火鉢
「火鉢」がいつ頃から暖房器具として使われだしたのか、という正確な資料は残念ながら確認できていないようです。
ただ、炭というものを燃やしていたことは史実に認められています。
奈良の大仏様を建立する際に、大仏様の原料となる銅を燃やして溶かすために炭を使っていたのは間違いがないようです。