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火鉢とは何をするもの?若者が知らな...(続き5)

このおかげで炭が暖房器具用の燃料になったという事が当時の人たちの間でも十分、認識できたであろう事は容易に想像できます。

燃やしても煙が出ない炭は室内で使う暖房器具用としては、これ以上ない「もってこい」の発見だったに違いなかったでしょうね。

そもそもは上流階級で使われていた

「火鉢」の使われ始めは専ら、上流階級が中心になって使われていました。

これは致し方ない時代背景がありますので、止むを得ない事でしょう。

仮に奈良時代から火鉢が使われ始めたとしましょう。

当時の支配階級は天皇を頂点とした貴族階級です。

当時は今の時代と違い完璧な君主性の国家です。

庶民、つまり農民は土地の有力者に年貢を納めるのが精一杯。

とても「火鉢」などという「贅沢品」に手を出す事は出来なかったのです。

その後、鎌倉時代になって武家社会となってからも農民の身分は一切、変化はありません。

それから江戸時代になってようやく「士農工商」という身分制度が出来、一部の庶民の間ではようやく「火鉢」を入手して使う、という事が可能となったようですね。

ただ、それが出来たのはあくまで「町人」たち。

要するに商いや職人として一定上の所得があった者だけです。

大多数を占める「農民」達にはとても火鉢など手が届くものではなかったのです。

こうやって「火鉢」は上流階級を主体にしてその後も使われていく事になったのです。

次第に庶民の間にも普及される

しかしながら時代が明治を迎えるころになって庶民の間にもようやく火鉢が普及されるようになっていきます。

身分制度に変化が起こり、農民を半奴隷のように扱う武家社会もようやく終わりを迎えます。

それでも貧富の差がなくなったわけでもなく、全ての庶民の元に「火鉢」が行き渡ったわけではありません。

しかし、全てとはいかなくてもようやく庶民の元にも「火鉢」が普及し始めた事は間違いありません。

始めて火鉢を使えた時の喜びようといったら、なかったでしょうね。

まあ、今の火鉢でもリビング全体を暖めるまでは行きませんが、手を近づけたりすれば暖は十分取れます。

薪を燃やして囲炉裏で暖を取っていた時とは大きく生活様式が変わったでしょうね。

インテリアとしても使われる

「火鉢」を形づくる材料は陶磁器や木材、石、鉄がメインです。

その中でも特に陶磁器や木製のものはデザインや色柄に凝ったものも多く、今の住宅事情の中では暖を取る道具としてではなく、お部屋のインテリアという側面で使用されるケースも増えてきているようですね。

まあ、ワンルームマンションのような間取りでは結構場所を取る「火鉢」を置くことは無理があるでしょうが、それなりの広さのリビングを持つご家庭ならばインテリアの一環としてお部屋の中に置くことでグッと雰囲気を日本の良き時代に引き戻す事も出来るでしょうね。

デザインや配色が美しい

現代のインテリア向きの火鉢は陶磁器が主体です。

陶磁器は様々な配色・デザインが作り手の意思によって思うがままのものを作りだせるメリットがあります。

また木製の火鉢も和室の雰囲気にピッタリはまる道徳のテイストを醸し出してくれます。

昔の時代劇を見たら、大名の部屋や有力商人の屋敷の主の気屋には決まって長型の火鉢がセットされていましたよね。

そしてキセルの灰を器用に火鉢の灰の中に捨てるシーンもありました。

まさに「火鉢」は日本の和室に合う、とっておきの「家具」のような位置づけなのでしょう。

昭和初期までは半炊事用としても使われる

また「火鉢」には暖を取るための目的とは違う用途もあったのです。

それはお茶を沸かしたりお餅を焼いたりする「半炊事」としての役割です。

火鉢にはお湯を沸かせるように「五徳」と呼ばれる金属製の足を持つ道具があります。

これを灰の中に差し込めばやかんをその上に置いて、お湯を沸かせる事が可能でした。