企業にとって、優秀な人材ほど財産になるものはありません。
『人財』という造語もあるほどです。
優秀な人物を採用するというのはもちろんですが、優秀な人材に育てあげるというのも、とても大切なポイントになってきます。
中小企業の70%が人材不足に悩んでいるというアンケート結果もある現代。
人材の確保と育成はとても重要なのです。
人材確保のためには、新規採用と並んで、現在在籍している社員の離職率を下げることを考えなくてはなりません。
どちらにも効果があるのが、人材育成なのです。
人事必見!人材育成のコツやポイントを解説
人を育てたことがない人に限って、「放っておけば育つ」とか「見て学べ」とか履き違えたことを言いがちですが、人材を育成するというのはとても大変なことです。
昭和時代からの会社は結構な大手企業でも、人材を育てるという概念やそのためのシステムがきちんとしておらず、現場の人間だけが振り回されて困っているという悲しい事態も往々にしてあります。
新入社員をうまく育てるにはどうしたら良いのか、やっと育ったと思ったら辞めてしまう、社員の勤続年数が長続きしない、人材育成のために具体的になにをしたら良いかわからない、など教育を担当する立場に置かれた人には、頭の痛い問題かもしれません。
今回は人材育成に関するコツやポイントを解説していきます。
企業における人材育成の意義
企業で人材を育成することの意義とは、どのようなものがあるでしょうか。
人材とは、会社の利益や発展を生み貢献できる社員です。
高いスキルを持ち、どのような仕事も対応できるマルチな才能があることが理想ではないでしょうか。
昭和時代には終身雇用と年功序列が当たり前で、社員は会社に守られていましたし、妻子を養うのに十分な賃金ももらえていました。
社員はあくまでも管理の対象に過ぎず、ただ企業という大きな組織の歯車として働くことが求められていました。
しかしながら現代では、ひとつの企業でもらえる賃金は低下しており、副業を持ったり妻も働きに出たりすることが普通です。
インターネットが普及しIT化が徐々にではありますが進んでおり、処理しなければならないタスクも処理に求められるスピードも比例して増加の一途をたどり、グローバル化もあいまって企業同士の競争が激化しています。
競争を生き残れる企業になるため、社員ひとりひとりの資質も重視され、社員教育ということにも注目が集まるようになりました。
現在の仕事をとにかくさばくためだけではなくて、会社を発展させ将来的なビジョンを実現できる社員が必要ですし、そのときのために発揮できる能力を培っておくことが企業のためになります。
その企業の目標に見合った人材の育成が、企業の業績向上などの発展につながり、それがまた社員のやりがいや勤務環境の向上へと還元され、相乗効果を生み出していくことが理想となります。
企業の生産性を向上
日本は労働時間ばかり長く、労働生産性は低いと言われています。
実はスペインでは、長時間残業をして働くことで残業代や電気代などの水光熱費がかさみ、企業にダメージを与えるという形のストライキがあり、これが日本風ストライキと呼ばれています。
長時間労働で時間ばかり浪費して生産性は低下し、体調を崩して医療費がかさむという何も良いことのない長時間労働。
日本で長時間労働が容認されがちなのは、上司の世代が生産性を無視してとにかく休まず長時間働くことが勤労の証と勘違いしている人が多いからです。
効率よく作業をする人を「サボっている」と認定することすらあり、有給休暇をいかに取っていないかがアピールポイントになっています。
まずはそんな考え方から変えなければお話になりません。
さきほどのスペインのストライキのお話からもわかるように、長時間労働は企業にとっても損でしかないのです。
残業を前提にせず、本来の勤務時間内で作業を終わらせることができるように、生産性を上げて効率よく業務を行えるよう取り計らう必要があるでしょう。
人材育成により優秀な人材を効率的に会社のために活用することで、企業の力をアップさせ競争にも打ち勝てるようになります。
生産性を向上させ、組織としてのパフォーマンスも向上させるのです。
人材育成はもはや経営戦略の一環とも言える時代になっています。
人事部の仕事というよりも、社をあげて取り組むべき最重要の課題なのです。
育成の18個のコツ
それでは人材育成のコツにはどのようなものがあるでしょうか。
近年では、新卒で入社しても3年以内に転職してしまう人も増えてきました。
とにかく三年我慢しろ、という考えは古くなってきつつあり、貴重な時間を浪費するよりもより良い会社に、スキルアップした自分を売り込むのが当たり前なのです。
そんな時代にあって、人事や企業の幹部が「三年も勤務しないなんて最近の若いものは我慢が足りない」などと言っていては、時代に乗り遅れる一方です。
人材というものは、採用にも育成にもコストがかかります。
コストをかけて採用し、コストをかけて育成してやっと優秀な人材に育ったと思ったら他の企業に取られてしまうようでは無駄でしかありません。
これは会社の損失であるということを認識し、常に成長を感じられるやりがいのある会社であるよう人材育成に力を入れて、社員から見限られることのないよう、働きやすい職場環境を作っていきましょう。
1、目的や目標の認識
人材育成というのは、一般的なマナーを教えたり社是を暗唱させたりするようなものではなくなってきています。
新入社員に対しての、会社で業務を行うのに必要な基本的事項の研修はもちろんのこと、キャリアプランを一緒に考えてそれを支援することなども人材育成に含まれます。
毎日毎日単に日々の作業に忙殺されているのでは、疲れてしまいますし先が見えてきません。
この仕事をすることによりどのような力がつくのか。
どのような結果を出せば会社がどんな風に認めてくれて、その結果自分はどのようなポストでどんな働き方をするようになるのか。
そうしたことが明確に見えている状態なら、過程が多少辛くてもゴールを目指すモチベーションを保つことができます。
たとえば女性社員なら、このように忙しいままでは結婚や出産を考えることができないと思い退職を考えるケースもあります。
そんなときでも、産休や育休などの制度があり、それを利用した上でどのように仕事に戻りキャリアを築いていけるのかがはっきりしていれば、目標を見失わずに済むのです。
2、愛をもって接する
会社で重要なのは人間関係です。
人材流出の最大要因は人間関係です。
ということは、社内の人間関係がうまくいってさえいれば、せっかくの人材が退職したり転職したりすることを防ぐことができるのです。
まずは愛を持って接しましょう。
言葉にすると陳腐なイメージになってしまいますが、非常に重要なことなのです。
たとえば上司が部下に愛を持っていれば、部下思いで部下のために時間もとります。
コミュニケーション量が多ければ、懸案事項も共有しやすく、トラブルも未然に防げることが多くなります。
部下としても、部下を大切にしてくれる上司に親近感を覚えますし、意識の共有がしやすく職場が活性化します。
一方的な『愛』では駄目です。
上司が愛だと思って毎日飲みに誘っていたら、部下からはせっかく残業がない日でも毎日帰宅が遅くなって辛いと思われていたら意味がありません。
一方的に押し付けるのは愛とは言えませんよね。
自分の自己満足のためでなく、本当に部下のためを思って、部下がしてほしいことを考えて愛情を注ぐ必要があるというわけです。
また、会社としての『愛』を目に見える形にしたもののひとつが福利厚生でしょう。
福利厚生を充実させるのは、社員の給料を上げるよりも安価にできるので、企業側としてもメリットがあります。
外部委託の福利厚生サービスなら、契約して二週間程度で利用ができるようになるものがほとんどですし、導入した後の福利厚生サービスの申請や受付などの事務作業も全て社内ではする必要がなく、利用したい社員と外部のサービスセンターとの直接のやり取りのみとなるのが普通なので、この面でも企業側にも従業員側にもメリットがあると言えるでしょう。
3、やる気(モチベーション)の持ち方を教える
モチベーションは、仕事を続ける上で重要なファクターのひとつです。
モチベーションが維持できないような職場では、長く働くことは難しいですし、パフォーマンスの質も下がってしまいます。
モチベーションが下がってしまうと、「仕事をやりたくない」「言われたことだけやっていればいい」という雰囲気になり、職場の雰囲気も活性化しなくなってしまいます。
従業員のモチベーションが低ければ、相対する顧客のモチベーションも下がり、満足度と共に業績も低下してしまうことでしょう。
モチベーションをもたせると言っても、闇雲に「やる気を出せ」と言っても意味がありません。
むしろ逆効果なことも多いです。
まずは上司や先輩社員たちが楽しく仕事をしている姿を見せ、楽しく仕事ができる環境を作っていなければ無意味です。
その上で、モチベーションを保つには自発的な学習を薦めると良いでしょう。
勤務時間外に残業させて講習会を行って「無料で講習をしてやってるのだからありがたく思え」という上層部も残念ながらいますが、そうではありません。
たとえば、勤務時間中の講習はもちろん、自分の興味のあるプロジェクトに勤務時間の一部を当てることを推奨するなど、なんにでも取り組める状況を作ることが活性化に繋がります。
モチベーションも高まりますし、スキルアップにも自然とつながっていくのです。
4、コミュニケーションを計る
社内での定期的なコミュニケーションはとても重要です。
と言っても、飲みニケーションと呼ばれる個人のプライベートな時間と金銭を割かせての上司だけが楽しいただの飲み会はコミュニケーションとは言えません。
部下が、「上司が自分のために時間を取ってくれている」と感じられるコミュニケーションが大切なのです。
定期的に話を聞いたり、意見を吸い上げたり、どうしても飲みニケーション的なものがしたいのならランチミーティングという手もあります。
ランチなら拘束時間が一時間と決まっているので上司との食事に抵抗感がある人でも参加しやすく、子どものお迎えがあるので定時で帰りたいという人に対しても有効です。
5、責任感を持たせる
責任感を持っていると、仕事への取り組み方も異なってきます。
特に新入社員ではなく中堅以上の社員に対して、責任を実感させることは育成に繋がりやすくなります。
責任のあるポジションにつけるなどして、今までとは違うやりがいを見出させ、今まで上司にまかせていたクレーム処理の鎮火作業のようなちょっとした修羅場を経験するのも後に役立ってくるはずです。
新規事業を立ち上げる場合のリーダーポジションにつけたり、海外支社に出向したりというのでも良いでしょう。
新人時代と比較して仕事には慣れた反面、新鮮さがなくなってきてマンネリ化している中堅社員にとっては、ちょうどよい刺激となり、再び成長していると実感できるようになります。
自分の能力でできることとできないことの切り分けができるようになり、足りないものを知ることで勉強すべき点を洗い出すこともできますし、謙虚な気持ちも持たせることができます。
入社してから比較的早い段階から期待をかけ、責任のあるポストを用意することがなにより大切なのです。
チームを持たせる
チームを持てば責任感も育ちやすくなります。
またこれは『リーダーシップを身につけさせる』ことにも繋がります。
リーダーに必要なスキルのひとつが、一緒に働く仲間を信頼して良い関係を築くというパートナーシップです。
これはリーダーだけではなく、良い人間関係を構築しながら日々勤務する上でも重要なスキルではあります。
リーダーの立場になる場合にはこれが更に重要視されるのです。
肩書だけリーダーになっても、仲間を信用していない、良い関係が築けないでただ指示だけしているようなら、ただ権力を振りかざすだけのはた迷惑なリーダーでしかありません。
そうした空回りにならないよう、チーム・メンバーと対等な関係を保ちつつリードしていけるようになることが理想です。
6、リーダーシップを身につけさせる
リーダーシップのある人間には部下もよくついてきますし、リーダーの仕事の仕方を見習って部下も効率よく働くようになるでしょう。
チームワークが良ければ社内の雰囲気もよくなり、仕事の能率アップにもつながります。
更に、良いリーダーの下で育った人は、良いリーダーになる可能性が高くなります。
新入社員を採用する際に、今いる社員よりも高いリーダーシップを持つ人を採用するようにするというのもおすすめです。
見る目のない人事担当の人の場合、リーダーシップ能力の高い新人を「生意気で協調性がない」と判断して採用しないというケースも多々見られます。
面談用のアピール用にでしゃばっているのと、真のリーダーシップ能力を見極めて採用できると良いでしょう。
面接のときには経営陣や社内のトッププレイヤーが面接官として参加し、面接対策の上辺だけのリーダーシップなのか、本当に本人が持っているリーダーシップなのかを対面することで見極めることができる場合もあります。
面接という短時間の間では、リーダーに向く資質のある、ものごとをしっかり考えて冷静に判断する、一面からではなく多面的にとらえて批判的な見方もできるというタイプはどちらかというと協調性がなく批判的でおとなしい人間と誤解されがちです。
長期的にはそのような人こそリーダーに向く可能性も高いので、面接担当官の見る目も非常に問われるところですね。
7、PDCAを意識させる
PDCAサイクルという言葉は、昨今だいぶ浸透してきたのではないでしょうか。
PlanのP、DoのD、CheckのC、ActのAを取って『PDCA』です。
計画して実行し、それがうまくいっているか確認をし、軌道修正して進めるということになります。
これが、いわゆるブラック企業ではひたすら『Do』のみ、上司の計画というよりただの思いつきに従って、無理難題なのにCheckもActもなくひたすらDoのデスマーチで消耗していってしまいます。
言わずもがな、これでは駄目です。
実現可能な計画を練り、定期的に見直して刷新し、よりよい方法で進めることを意識しましょう。
8、褒めるところと指導するところを見極める
新しく入社した人に研修が行われることはよくあるパターンでしょう。
マナー研修なども大切ですが、まず会社の雰囲気を知ってもらうことが第一です。
ネガティブなイメージで言えば『洗脳』するということになります。
この会社の価値観を知ってもらい、それを共通の価値観として把握してもらう必要があるのです。
このためには大人でも号泣する研修だ、と得意げにトレーナーが言うような、外部の厳しい研修を採用する会社もあるかもしれません。
とにかく否定し上からの命令は絶対だと思わせる洗脳タイプの研修は、軍隊の訓練ではつきものです。
ただ、これは優秀なリーダーがいて、そのリーダーの指示に瞬発的に従うことでチーム全員の命を守るためのものなので、一般企業においてはやりすぎな感じも否めません。
ブラック企業が表沙汰になりつつある現代では、人権問題にも発展しかねないでしょう。
新入社員にとっては苦痛でしかありません。
厳しく指導することもときには必要ですが、それだけでは人間関係は回っていきません。
厳しくするのと同じだけ、丁寧で優しい指導も重要だということは念頭においておきましょう。
たとえば導入研修の担当者がいて厳しく指導を行うとしたら、採用に関わった人事担当が丁寧に接してメンタルを担当するといった具合が良いでしょう。
面接時に関わった担当が親身になってくれると、新入社員としても心強いですし、味方だと感じて相談もしやすくなります。
9、プロジェクトに参加させる
なにかのプロジェクトに参加するということは、チームワークの勉強になります。
興味のある分野を広げスキルアップにもつながりますし、責任感ややりがいも持てるかもしれません。
普段の仕事とは違う業務内容なら視野も広がり、いつもの仕事についての見方も変わってくるかもしれません。
10、社外とのコミュニケーションを取らせる
これはリーダーシップを身につけることとも関連があります。
リーダーシップとは一朝一夕で身につくものではありません。
リーダーシップを発揮できるようになるにはとても時間がかかるものです。
実際にリーダー候補に抜擢されてからでは間に合わないので、新人の頃から準備を始めるべきなのです。
リーダーに必要なスキルのひとつが対人スキルです。
そもそもリーダーシップというものは、リーダーひとりが持って入れば良いというものではなく、チーム・メンバー全員が持っており互いに補い合いながら進んでいくことが理想なのです。
更にはボスマネジメントといって、自分の上司に対してリーダーシップ能力を発揮して自分たち部下に対する支持や支援を引き出すといったスキルが持てると尚良いでしょう。
なにか問題が起こったときでも責任を取ってくれる上司は、その人の資質もありますが部下を如何に信頼しているかという点も重要になってきます。
信用してくれていれば、なにか新しい提案をしたときも支持してくれやすいでしょう。
上司がどのような考え方なのか、どんな信念を持っているのかを把握し、先手を打って上司が言い出すよりも先に提案したり作業をしたりするとボスマネジメントにつながっていくでしょう。
11、役割を与える
上司は部下とコミュニケーションを計り、上司として、会社として、部下に期待している役割を具体的に伝えましょう。
信頼していて、応援もしている、なにかあったときには上司としてサポートもするし責任もとるから、といったことも合わせて伝えると、部下は上司を信頼しますし、モチベーションも保てます。
思いついた時に「がんばれ」と発破をかけたり、なにかミスをしたときだけ叱咤したりするのはむしろ逆効果です。
常にメッセージを発信し続けましょう。
13、人を育成する
人を育てるということが、本人にとっても成長につながります。
勉強をひとりでしているより、誰かに教える方が大変なのと同じです。
人に教えるためには、単純に自分で把握している以上にきちんと把握し、内容を整理して発信しなければならないのです。
よくあるパターンでは、新入社員の教育担当に一期先輩の社員をつかせるといったものです。
二年生はそれなりに社風も把握し仕事もわかってきていつつも、ベテラン社員ほどはまだ仕事の件数を抱えていないことが多いです。
年齢が近いこともあって新入社員も比較的気楽に話ができるので、なにか困ったことがあっても相談しやすい環境が作りやすいです。
『責任感をもたせる』『役割を与える』こととも繋がります。
新入社員担当、教育係という役割を得ることで責任感が芽生え、自分はもう新人ではないという自覚も持てるので成長しやすくなります。
ただ、二年生が既に忙しかったり、人に教える余裕もなかったりする場合は、かえってなにも教えてもらえず1年生が放置されるケースもあります。
1年生がなにか聞きたいことがあっても二年生に心や体の余裕がない、または知識が不足していてまともな回答ができないという状況になってしまうと、あちこち営業やミーティングにつきあわされてコピーなどの雑用をさせられるだけで実のある仕事を任せてもらえずこれからの仕事にも繋がりそうにない、となってしまい、新入社員のモチベーションが下がってしまいます。
14、ベテラン・経営幹部の育成
新入社員だけではなく、ベテランや経営幹部の育成も不可欠です。
いくら新入社員が優秀に育っても、その能力を認めて使う能力が上の人間になければ宝の持ち腐れです。
優秀な社員ほど自分の能力が発揮できる場所を求めて転職してしまうでしょう。
中堅以上のベテラン社員はプレイングマネージャーが比較的多いです。
課長クラス管理職の約80%がプレイングマネージャーだというアンケート結果もあるほどです。
プレイヤーとしての個人の目標を達成することが一番重要な業務になっており、新人の育成まではやっていられない、というケースも多いです。
そうならない為に、ベテランや経営幹部のポジションになる前から、たとえ少ない人数でも部下をもたせて、ワンマンプレイヤーであることが当たり前ではない状況を作るべきです。
メンバーと一緒に仕事をすることと、新人を育成することは全く異なるからです。
採用企画や労務、教育研修などの職種を短期間でも経験させるというのも大切です。
ひとつの仕事だけをずっとやってきて、そのまま管理職になった人が約30%であるという調査結果もあります。
ひとつの仕事を深く知ることも重要ですが、多くの職種を経験しスキルを増やし、広い視野を持つということもベテランや経営幹部としては重要になってきます。
これを踏まえてジョブローテーションと呼ばれる「戦略的人事異動」をシステムとして導入するのも良いでしょう。
スキルが固定化するのを防ぐと共に、会社の事業全体を理解させることができます。
いろいろな社内のチームに対応できるリーダーシップも養われますし、各部署に顔見知りがいることは社内ネットワークの開拓にもつながり、円滑な業務進行にも役立ちます。
15、ある程度の仕事は任せる
特に新入社員に対して、仕事を任せるときに「本当に大丈夫かな?」と思ってしまうことはあるでしょう。
しかし、不安だからといって簡単な雑用しか任せないようでは、新入社員はいつまでたっても仕事ができるようになれません。
また、任せた仕事が本当にできているのか、一からやり直すようなチェックの仕方をするのもNG。
「そんなに信用されていないんだ」「疑われているんだ」と思われてしまいますし、そう感じた部下が上司を信用するはずがありません。
ある程度の確認はもちろん必要ですし、丸投げもしてはいけませんが、信頼して任せるということは新入社員の成長につながります。
16、ミッションを正しく伝える
「仕事の取り組み方」は正しく伝える必要があります。
新人の期待を煽らず壊さず、が肝要です。
実際の仕事内容を正しく伝えるということは「RJP(RealisticJobPreview)」とも呼ばれています。
特に新入社員に対してRJPを行うことは、大きくわけて4つの効果があると言われています。
正しくミッションを伝えることにより、この仕事は自分に向いていると思わせるセルフスクリーニング効果、事前に考えていたものと違った、とがっかりしてしまうことを予防するワクチン効果、難しい仕事だとわかって、それでもやり遂げたいと思わせるコミットメント効果、自分の役割を明確に認識して効果的に働けるようになる役割明確化効果です。
内定者に職場体験に来てもらったり、内定者同士で交流を深めてもらったりすることもRJPの一環として役に立ちます。
17、優先順位をはっきりさせる
わかることややりやすいことから始めてしまうことはありがち。
あながち間違いではありませんが、まず重要で締め切りの早いものから優先順位をつけて計画的にこなすことが大切です。
締め切りに間に合わない、ひとりでは手に負えないときは、周りに相談することも大事。
そしてまた、そうしやすい環境を作ることも上司のつとめです。
18、実際に実践させる
座学だけで伝わるわけはありません。
まずやり方を教えて、次に実際に一緒に作業をしてみて教えることが大切です。
OJTという言葉もだいぶ浸透してきました。
OJTとは、「OntheJobTraining」の頭文字をとったものです。
実際に仕事をしながら学んでいくということになります。
ここで勘違いしてはいけないのは、なにも知らない新人をいいからやれ、やればわかるから、と言って現場に放り込むことがOJTではないということです。
事前の予備知識もなくただ現場に放り込まれて、何をすればよいかわからず何もすることがなくて暇になってしまったり、「なにも知らないのか、ちゃんとわかっているやつを出せ!」とお客様に怒鳴られてしまったりすれば、モチベーションが下がってしまうのは当たり前です。
また、現場でも自分の仕事をするだけでいっぱいいっぱいなのに、自分の手を止めて新人に教えなければいけないというのは大変な負担です。
教育係やメンターを設定し、教育に割けるだけの時間の余裕が持てるよう、仕事量を減らすなどのシステムは必須となります。
そうした措置がなければついた人の人柄や忙しさで新人教育の中身が左右され、きっちり教えてもらえる人と、ただ放置されたり雑用を押し付けられたりするだけの人が出てきてしまいます。
名ばかりの実践教育にならないよう、注意が必要です。