パワハラされて困っている、パワハラをしていると言われて困っている、という方、いませんか?
パワハラという言葉自体はよく聞くけれど、明確にどんなものかよくわからないという方もいるかもしれません。
パワハラの定義とはどういったものなのか、どう対処したら良いのか、いくつかの項目にわけてわかりやすくご説明していきますね。
パワハラとはなにか
言葉ではよく聞く『パワハラ』という単語。
『パワー・ハラスメント』の略です。
ハラスメントとは『harassment(ハラスメント)』という英語からきています。
嫌がらせや悩ませること、悩むことなどという意味です。
ハラスメントという言葉自体は、セクシャル・ハラスメント。
略してセクハラでだいぶ意味が広まっている言葉かもしれませんね。
セクハラの場合はセクシャル、つまり性的な分野において嫌がらせを行うことをさします。
パワハラの場合は、パワー、つまり権力などの力を振りかざして、抵抗できない相手に対して嫌がらせを行う行為をさすのです。
職場で上司や先輩など地位的に上の人間が、下の人間に権力を背景にして、通常の業務の範囲外のことをやらせるなどして苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりすることをパワー・ハラスメントといいます。
職場でこんなこと、ありませんか?
ちょっと嫌だなと思っても、人間関係のことを考えると言いづらくて我慢していることなどたくさんあると思います。
そんなあなたが我慢していること、実はパワー・ハラスメントに該当するかもしれません。
「上司の言うことには逆らえないから……」と我慢している人がいたら、要注意です。
もしかしたらそれ、パワー・ハラスメント被害にあっているのでは?
パワハラの定義
先程もあげたように、パワー・ハラスメントの定義というのは、パワー。
つまり、権力のような職場内での優位な立場や関係性を利用して、業務の適正な範囲を越えた嫌がらせに該当する行為をすること=ハラスメントをすることを指します。
職場内での優位性
職場内での優位な立場を利用するのがパワー・ハラスメント。
上司が部下に対して、先輩が後輩に対していじめをするというケースが、力関係からすると多いかと思われます。
ただ、それ以外の場合はパワー・ハラスメントにあたらないかと言えば、そういうわけではありません。
部下が上司に対して、後輩が先輩に対して、または同僚同士の間での嫌がらせもパワー・ハラスメントに該当する可能性があります。
職場での地位だけでなく、人間関係や出身学部、部署で必要な知識の有無など、いろいろなケースが考えられるのです。
これらの職場においてのなにがしかの優位性を利用して嫌がらせすることが、パワー・ハラスメントになるのです。
業務の適正な範囲
業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与えることをパワー・ハラスメントといいます。
では、『業務の適正な範囲』とは具体的にどのようなことを言うのでしょうか。
たとえば、嫌いな上司の仕事の指示が不快に感じたり、注意をされたのが不満に思ったり、というだけではパワー・ハラスメントとは言えません。
上司の指示や注意が適正であれば、つまり業務上必要な行為であり、逸脱していると認められない場合は、単なる指示であり注意であり、ハラスメントにはならないのです。
上司がパワー=優位な上司という立場を利用して指示や指導をすることは、上司として部下を管理する上で必要な業務上の指揮や指導に該当するからです。
そのために上司という力ある立場が設定されているのです。
パワー・ハラスメントと言っても、上司の行動を制限する為にあるわけではありません。
あくまでも業務の適正な範囲を超えた犯罪行為に的を絞ったものなのです。
ただこの『業務の適正な範囲』は、業務や会社によって異なるものです。
八時間立たせっぱなしで勤務させた、という場合。
事務職の女性をわざわざ立たせて作業をさせた場合と、百貨店で接客業の女性が立って仕事をしていたという場合では状況が異なりますよね。
前者は業務の適正な範囲とは言えなさそうです。
こうした範囲を明確にするために、コンプライアンス窓口など第三者の視点も重要になってきます。
職場でこんなこと、ありませんか?
嫌がらせを受けている、嫌がらせをしている、または同僚が嫌なめにあっている。
これってパワー・ハラスメント?と疑問に思ったり悩んだりしている方はいませんか?
パワー・ハラスメントに該当するのは、ケース・バイ・ケースで様々な内容があります。
例えば、以下のようなことです。
身体的な苦痛を受けること
身体的な苦痛、つまり叩かれた、蹴られた、殴られたなどといったケースです。
これは比較的わかりやすいですよね。
立派な暴力行為であり犯罪です。
ですが意外と行われやすく、会社内という閉鎖環境にあると普通のこととして流されてしまいがちでもあります。
直接殴られなくても、座っている椅子を蹴飛ばされた、机を叩かれた、丸めた書類で叩かれた、ということもあるでしょう。
胸ぐらを掴む、煙草の火を近づけてくる、物を投げるなどして威嚇するという行為も身体攻撃にあたります。
精神的な苦痛を受けること
精神的な苦痛は受けた傷が目に見えないので、見過ごされがちな分とても危険です。
一番ありがちなのが、同僚などみんなが見ている前で叱責されること。
これ、実はパワー・ハラスメントにあたります。
古い体質の会社で自称熱血上司が、熱い指導アピールでわざとみんなの前で怒鳴ったり、スケープゴートとして見せしめにある人にだけ叱責したりというのは割とありがちですよね。
わざわざ他の人たちも宛先に入れて叱責メールを送る、長時間罵倒する、しつこく何度も叱るといった行為もパワー・ハラスメントです。
「使えないやつだ」「育ちが悪い」「給料泥棒だ」などと言った、侮辱し人格や尊厳を侵害する行為も含まれます。
こうしたハラスメントは、心当たりがある方も多いのではないでしょうか。
孤立させられること
孤立させられる。
いじめでいう『ハブられる』状況が職場でおきている場合、これもパワー・ハラスメントかもしれません。
ひとりだけ飲み会に誘われない、自宅待機と称して帰らされる、といったことも、このケースにあたります。
仕事を教えなかったり、必要な連絡事項を教えなかったりすることもそうです。
その他別室に席を移されてひとりで業務をさせられることも、孤立させられるというパワー・ハラスメントになります。
無理を強いられること
到底できるはずがないノルマを課されたり、個人の能力を超えた難題を押し付けられたり、という無理を強いる行為はパワー・ハラスメントに該当する可能性が高いです。
上記の『業務の適正な範囲』を超えた無理強いであれば、パワー・ハラスメントになります。
適正な仕事を与えられないこと
適正な仕事を与えられないことも、実はパワー・ハラスメントにあたります。
コピー係としてひたすらコピーをさせられたり、シュレッダー係としてシュレッダーの脇に立ったまま待機させられたり、といったケースはハラスメント行為です。
プロジェクトに参加させないなど、能力に見合わない雑用や掃除だけをさせるのも過小要求型パワー・ハラスメントになります。
自主的に退職を言い出すように窓際に追いやったり、仕事の無い特殊な部署へ異動させたりすることも同じくハラスメント行為となります。
『適正な仕事を与えられない』には、本来の適正とされる仕事よりも過小な要求をされる上記にあげたような行為だけではなく、この逆で本来の適正な仕事よりも過大な要求をされる行為もパワー・ハラスメントです。
これは例えば、まだ新人でよくわからないのに業務を丸投げされてしまう。
一人では無理な仕事量を押し付けられ残業を強いられる。
他の人はみんな先に帰ってしまう。
というようなケースです。
これも、ハラスメント行為なのです。
プライベートへの干渉・攻撃
仕事をしにきている場所で、プライベートな情報は本来不必要なもの。
古い会社では、プライベートをオープンにすることが円滑な人間関係を作るために役立つことを考えます。
なので、嫌がる相手にも根掘り葉掘り聞こうとする場合があります。
しかし、お互いのプライベートを知ることがどれほど重要かというのは人によりますよね。
執拗に相手のプライベートを聞く行為、プライベートな時間にしつこく電話をかける行為などは要注意です。
「女の子を紹介しろ」「一緒に出かけよう」と相手の気持ちを無視して自分の気持ちを押し付けるパターンは、ちょっとストーカーにも通じる迷惑さがあります。
デスクにおいていた携帯が昼休みに鳴って、その画面を覗き込んで「女の名前だな。彼女か」なんて上司が言ってくる行為はパワー・ハラスメントになるかもしれません。
「どんな女なんだ」と問いただしたり、家族の悪口を言ったりするとなると、もうこれは完全にハラスメント行為になりますね。
プライベートへの侵害型パワー・ハラスメントの場合、同時にセクシャル・ハラスメントにも該当する可能性が高いです。
パワハラがあると何が良くないのか
パワー・ハラスメントがあると何が駄目なのか。
いじめや嫌がらせがある状態なので当然よくないことなのですが、どんな影響があるのか具体的に下記にあげていきます。
直接的には被害者個人への影響
一番にはパワー・ハラスメントを受けている被害者本人への影響があげられます。
身体的なパワー・ハラスメントを受けている場合はそれによる打撲や擦過傷などの受傷という被害が出ます。
また、精神的に追い詰められていくことでうつ病などの病気になったり、身体を壊したりしてしまうこともあるでしょう。
場合によっては追い詰められて退職や休職、ひどいときには自殺に追い込まれてしまうことさえあります。
たとえ加害者側に悪気がなかったとしても、被害者は人格や尊厳を傷つけられてしまいます。
そして、職場でも孤立してしまうと、相談できる人がいなくなり追い詰められてしまうことがあるのです。
自分が被害者であるという自覚が持てず、自分が悪いのかもしれない、と自信がなくなってしまうケースもあります。
間接的には職場環境への影響
ハラスメント行為は実際に嫌がらせ行為を受けている被害者だけに限らず、周りの人たちへも影響が出ます。
被害者が怒鳴られている時、周りにいる人たちも自分が怒鳴られているわけではなくても緊張してしまうものです。
当然ストレスも感じます。
仕事への意欲も低下していくでしょう。
また、自分に飛び火しては困ると思い被害者をかばうことをしないどころか、被害者から距離を取る人もいるはず。
人間関係が悪化し、職場の雰囲気が悪くなっていきます。
使用者側にも大きな影響を生じる
パワー・ハラスメントは、加害者と被害者という当事者の間だけの問題ではありません。
企業には、使用者として会社に勤務する人たちの安全や健康に配慮するという、『安全配慮義務』というものが あります。
パワー・ハラスメントにより会社員の身体や生命の安全が脅かされている状態にもかかわらず、それを放置するならば、これは安全配慮義務違反ということになります。
軽く考えて放置している企業もあるようですが、会社にも責任があることなのです。
パワハラにあった場合の対処法
パワー・ハラスメントにあってしまった場合。
とにかくまず、あなたは自分の身を守ることを考えましょう。
残念ながら放置していても解決する可能性は低いです。
思い切ってあなた自身で対処し、できるかぎり解決にもっていきましょう。
くれぐれも、やり返してはいけません。
殴られたから殴りかえす、という対処法では、その場で一瞬気持ちは収まるかもしれません。
しかし、あなたの立場がより悪くなってしまうかもしれません。
ぐっと気持ちを抑えて、正当なやり方で反撃しましょう。
まずやること
我慢していても、おさまるどころかエスカレートしがちなパワー・ハラスメント。
あなたが身を守るために、まずやるべきことをいくつかご紹介していきます。
起きたことを記録する
これはパワー・ハラスメントだけに限ったことではありませんが、起きたことを記録していくことはとても大切です。
後々第三者へ相談や報告をする際に、詳細な記録は事実確認として役に立ちます。
できるだけ詳しく、いつどこで誰が誰に何をしたのかということをメモしましょう。
どれくらいの時間ハラスメントを受け、それによりどんな状態や気持ちになったのか、なども書き留めます。
ボイスレコーダー機能を利用しての録音や、物的証拠がある場合はそれも保存しておきます。
嫌がらせのメールや手紙などがあれば、それも保存しておきましょう。
証人になってくれる人を確保しておくことも重要です。
怪我をしたり物を壊されたりした場合は、写真に撮っておきましょう。
病院の診察を受け客観的な証拠も残しておくべきです。
メモ書きであっても裁判の証拠になる
自分で書いただけのメモは、いくらでも捏造も可能です。
敢えて加害者が不利になるような内容もかけますし、事実に比べておおまかで抽象的な書き方になりがちです。
事象が発生してからメモを取るまでに時間があけばあくほど、人間の記憶は曖昧になります。
悪意がなくとも事実とは異なるメモになってしまいがちです。
そのため、録音データなどよりも、客観的な証拠として認められにくいもの。
メモ書きは裁判の証拠としてどこまで認められるのでしょうか?
認められるメモにする為には、具体的に詳細に書くことが重要です。
『上司にひどいことを言われた』という書き方では、あなたの感想でしかなく、証拠としては不十分として扱われるでしょう。
できるだけ具体的に書くべきです。
日付や時刻の他、相手の言葉をできるだけ正確に思い出しましょう。
『業務をふられてから10分しかたっていないにもかかわらず、まだ仕事が終わっていないのか、相変わらずのろまだなと言われ椅子の足を蹴飛ばされた』
このように実際に言われたこと、やられたことをメモします。
詳しく正確に書くためには、パワー・ハラスメントを受けた直後にメモすることをおすすめします。
言われた内容の他、相手の表情やそのときの周囲の人間たちの反応、そのとき覚えた自分の苦痛などを記録することで、真実に迫るメモになります。
記載した日付や、そのページに書き終えたら余白を埋めておき追記できないようにしておくと、きっちり記録をとっている印象が高まりますね。
更に手書きのメモを写真撮影するという方法もあるそうです。
メモをした時刻がデジタルデータでも残るため、証拠能力が高まると言われていますよ。
会社内部に報告、相談する
まずは周りの人に相談してみます。
第三者からの冷静な意見やアドバイスが、あなたの考えをまとめる役に立つかもしれません。
また、同僚や加害者以外の上司に相談することで、いままでパワー・ハラスメントに気がついていなかった会社の人たちがあなたに協力してくれる可能性もあります。
証拠集めの助力を得られるかもしれません。
それに、パワー・ハラスメントの加害者が悪気がなかった場合は、あなたの相談を聞いた周囲の人間たちの対応を見て、自分の行為がパワー・ハラスメントであったことに気がつく可能性もあります。
嫌味を言ってくる精神攻撃型パワー・ハラスメントに対しては、無視する、流して気にせず、社内で味方を作ることで「あいつまたなんか言ってるよ」という雰囲気になり、上司が黙ってしまうというケースもあるのです。
パワハラを行なっている上司本人
意外に思うかもしれませんが、それができる状況であれば加害者本人に訴えてみましょう。
加害者本人が自分が行っていることがパワー・ハラスメントだと気がついておらず、単なる冗談や悪ふざけのつもりかもしれません。
その場合、あなたが本当に悩んでいることを知って謝罪し、ハラスメント行為をやめてくれる可能性があります。
加害者側に悪気がない場合は、あなたの被害に見合うだけの反省は望めなくとも、とりあえずはハラスメント行為が止まるかもしれません。
被害者が複数いるならみんなで訴えたり、メールや書面で伝えたりというやり方もあります。
訴える場合はその状況もボイスレコーダーなどで録音しておきましょう。
この訴えにより上司のパワー・ハラスメントが収まるなら良いのです。
しかし、逆に余計ひどくなる可能性もあるので、そのときのために証拠を押さえておくべきです。
上司の上司やコンプライアンス関係など会社の専門部署あるいは社長など
本人に訴えてもハラスメント行為が終わらなかった、または訴えられるような状況ではなかったという場合。
信用のできる他の部署の上司や、加害者である上司より更に上の人間などに相談してみましょう。
会社にコンプライアンス窓口や専門の部署がある場合は、そこに相談します。
社長に直談判するのもありです。
そのためには被害状況を整理し、証拠も集めておきましょう。
本人にうったえても駄目だった場合は、それも含めて報告すべきです。
ただ、会社が残念ながらまともではなかった場合は、対上司から対会社の戦いに発展する可能性があります。
これは、それなりに勇気と覚悟が必要になります。
報告、相談後にどうなったかの結果も記録する
上にもあげたように、報告や相談をした後どうなったのかも記録を残しておきましょう。
本人に訴えたが「なにがパワー・ハラスメントだ!」と逆ギレされてその後嫌がらせが酷くなった。
コンプライアンス窓口に相談し上の人から注意してもらって一旦は収まったがしばらくして再燃した。
などのケースもあります。
その際に次のステップに進む場合は、全て証拠を残しておく必要があるのです。
会社外部に相談する
会社に相談できる人がいない、窓口がない。
または相談しても解決しなかった場合は、外部の相談窓口に頼りましょう。
全国の労働局や労働基準監督署に総合労働相談コーナーがあります。
無料で相談を受け付けてくれます。
総合労働相談コーナーは全国各所にあり、秘密厳守。
予約も不要です。
電話での相談もできますし。
女性相談員がいる所もあります。
日本司法支援センターによる法テラスも無料で相談できます。
メールや電話でも相談できます。
相談内容に対して一般的な法律情報や制度について案内してくれたり、適切な相談窓口を紹介したりしてくれます。
予約をして法律相談に行くこともできますし、これも無料なんです。
弁護士や司法書士に相談すると費用がかかるのが気になる場合でも、安心ですよね。
実際に裁判を起こすことにした場合でも、条件が合えば弁護士費用の立て替えもしてくれます。
分割での支払いに対応してくれます。
弁護士に相談したいけれどどの弁護士事務所を選べばいいかわからない、という人にも向いていますね。
法務省によるみんなの人権110番という全国共通人権相談ダイヤルもあります。
法務省によるものなので受付が平日の朝8時半から夕方5時15分までですが、メールでの相談も受け付けているので仕事が休めない人にも安心ですね。
パワー・ハラスメントが起きた事実関係を説明できるように、自分で残したメモなどの記録を持って行きましょう。
【パワハラ相談については、こちらの記事もチェック!】
上司や会社側への対応
相談窓口に相談をしただけでは、実際にパワー・ハラスメントが具体的に解決に至るわけではありません。
具体的に解決するには、結局は加害者である上司本人や会社がなんらかの動きをしてくれる必要があります。
上司や会社がどのような対応をするのか、自分の味方になってくれる人はいるのか。
よく見極めましょう。
会社内部で片がつき、注意によりパワー・ハラスメントがやみ、それであなたも納得するのならばそれで良し。
単にハラスメント行為が終わっただけでは納得がいかないという場合ももちろんあるでしょう。
残念ながらハラスメント行為が終わらないというケースもありえます。
法的手段をとるのか
では、次にどうするのかを考えましょう。
あなたはどうしたいと思っていますか。
とことん戦いたい、法的手段を取ろうと考えていますか。
たとえば、身体攻撃型パワー・ハラスメントにより怪我をした場合は、警察に傷害事件として訴えることも可能ではあります。
大勢の前で侮辱された、怪我をした、脅された、などの場合は刑事事件です。
ただ、学校や会社などの閉鎖環境の中で起きたことは民事問題とされ、民事不介入である警察はおいそれと介入はしてくれません。
確実に証拠があり、傷害罪や名誉毀損罪で訴えられる状況でなければ難しいかもしれません。
その他考えられる犯罪行為としては、侮辱罪、脅迫罪、強要罪などです。
集めた証拠を元に民事裁判を起こすこともできます。
パワー・ハラスメントによる不利益を訴え賠償金を請求できます。
もしも残業代の未払いなどがあればそれも合わせて要求すべきです。
弁護士費用もかかりますし、裁判には長い時間がかかります。
労力も必要ですし、あなたにも覚悟が必要になってきます。
勝ち目のある重度なパワー・ハラスメントなのか、十分な証拠が揃っているのか、一度弁護士に相談してから検討してみるのも良いでしょう。
パワー・ハラスメントにより心身に影響が出た場合は、労働災害になり得ます。
上司の嫌がらせでうつ病になった、仕事量が多すぎて身体を壊した、というときは、労働基準監督署へ行って労働者労働災害保険請求書をもらい、申請しましょう。
退職まで考えた方が良いのか
あなたの望みが、とにかく今の状況から離れることなのであれば、退職を視野にいれるのも良いです。
ただ、転職など今後の問題もありますので、あなたが不利にならないようよく考えましょう。
パワー・ハラスメント加害者個人の問題で、会社が味方になってくれるのであれば、会社の対応を信じて様子を見てみるのも良いです。
反対に味方になってくれないような会社であれば、たいていはパワー・ハラスメント以外にも問題があります。
残業代の未払いや休暇がとれないなど、複数の問題を抱えるいわゆるブラック企業の可能性も高いので、退職するのも良いかもしれません。
法的手段に出るにはなかなか面倒な問題も多く、我慢するか仕事をやめるかの二択に迫られてしまうケースも残念ながらあるでしょう。
できるならパワー・ハラスメントの問題を周囲に知らせ、味方を作ることが一番です。
社内の認識が変われば、上司や会社の認識も変わる可能性があります。
無理せずあなたのできる範囲で、あなたの希望に近い手段をとりましょう。
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加害者にならないために
被害者になる可能性だけでなく、自覚なく加害者になる可能性もあるパワー・ハラスメント。
部下や後輩にハラスメント行為をしていないか、一度我が身を振り返ってみましょう。
殴ったり蹴ったり、大勢の前で部下を叱責していませんか?
終業時間間際に大量の仕事を押し付けたり、営業職の社員に雑用を強要したりしていませんか?
休みの理由をしつこく問いただすのも問題行為です。
自分が新入社員の頃は先輩にされることが当たり前だった嫌がらせも、時代が変わった今ではハラスメント行為として広く問題として知られた行為になっています。
離席中に机を物色したり、挨拶されても無視したり、自分の指示が間違っていたのに部下のミスにするのもハラスメント行為です。
該当していることはありませんか?
パワハラは正当化できないことを知る
「あいつが仕事ができないから悪い」
そんなことでパワー・ハラスメントは正当化できません。
仕事ができないというのは加害者側の主観ですし、客観的にも仕事ができないとしても、それにより違法行為が許されるわけではありません。
「いじめられる側にも理由がある」というのと同じです。
いじめられる理由、きっかけがあり、仮に本当にそれがいじめられっこの問題点だとしても、それによりいじめをしていい免罪符にはなりません。
『愛のムチ』というのも同様です。
たとえ愛情からくる叱責であっても限度がありますし、そもそも叱責が指導に必要なのかは微妙なところです。
慣習、伝統といった会社の論理は通用しない
「うちの会社は体育会系だから」
「昔からこのやり方だから」
「おれが新人のときはこんなもんじゃなかった」
「おまえが弱いからこんなことでハラスメントだとか言い出すんだ」
こうしたセリフは加害者のいる狭い世界だけで通用する常識です。
まともな一般社会では通用しません。
被害者が法的手段に出ないから見過ごされているだけで、許されているわけではないことを知りましょう。
また、時代が変われば常識や習慣は変わるものです。
いつまでも自分の常識が正しくそれ以外が間違っているのだと固執してはいけません。
あなたの常識が時代遅れになっていることは十分考えられます。
「最近の若いやつは軟弱だ」と流れていく時間に抵抗するのは浅はかであると自覚しなければならないでしょう。