「あいつは少々非難されても平気な奴だ。よほど面(つら)の皮が厚いようだ」と感心される人がいます。
そこまで行くと、その態度に呆れるというよりは感心してしまう気持ちになるようです。
「面の皮」とは、文字通り「顔の皮」つまり顔の表皮の事です。
何も本当に表皮が他人よりも厚いということでは無くて、もし顔の表皮が厚ければ顔の表情を変えにくいだろうと推測されることから、顔色を変えたり自分の感情を表情に表したりしないふてぶてしい態度を取る事を表しているのです。
同じような意味で使われる言葉に、「ポーカーフェイス」というのがあります。
勝負ごとの場合に、自分の感情を表さないように努めて平静な顔をすることです。
自分が不利な状況に陥っても、平然として余裕を見せることもあるのです。
よく映画のポーカーなどの博打のシーンで、自分の手持ちのカードが悪くても平然と勝負に打って出るというような場面がありました。
逆に相手の方がビビってしまって勝負を降りるという場面です。
その時の顔つきがポーカーフェイスと言われるのです。
これはどちらかと言うと、敢えて平然として勝負に打って出るクールで前向きな場合に使われます。
プロ野球で、連打を浴びて失点を重ねたピッチャーが、顔色を変えずに打者に立ち向かう様を、「この投手はポーカーフェイスで堂々としていますね」などと解説者が評論しますが、この場面で「この投手は面の皮が厚いですね」などとは言いません。
同じように顔色を変えずに堂々としている状態ですが、「面の皮が厚い」という時には、ずうずうしい、腹黒いといったネガティブな印象が強い言葉なのです。
もっと極端な場合には「鉄面皮(てつめんぴ)」という表現があります。
この言葉は、鉄仮面を被ったような感情が全く見られない程の冷酷無慈悲な人間を表す時に使われます。
「面の皮が厚い」とは、そこまではいかないでまだ人間の血が通っている段階です。
そして、その言葉の後に「無恥(むち)」という言葉が重なるのが「厚顔無恥(こうがんむち)」という四字熟語です。
この言葉の意味については、次の項目で解説いたします。
厚顔無恥にならない人生を送ろう!
普段の会話で、「厚顔無恥」という言葉を使う場面はそれほど、というよりはほとんどないはずです。
わたしは使ったことがありません。
難しい四字熟語だし、使う機会もなかったからです。
わたしの人生では、幸いにもこのような「厚顔無恥」な人に巡り会わなかったのかも知れません。
よほど痛い目にあわされた経験が無いと、使う場面もないからです。
要するに、厚かましくて恥知らずで、他人の迷惑など構わなくて自分の都合に合わせて行動する人間ということですね。
このような態度の人は、みんなから後ろ指を指されて非難されていることでしょう。
それも分かっていながら自分の思惑通りに行動するずうずうしさがあるようです。
どこかの政治家が嘘と分かっていながら自分の考えを貫き通す場面がありました。
ずうずうしい態度と恥を恥と思わない態度が印象的でした。
このような人を「厚顔無恥」というのでしょうか。
よく「厚顔無恥」と「厚顔無知」を間違えますが、この熟語では知識がないという「無知」ではなくて、恥が無いという「無恥」の方です。
恥も外聞もない状態なのです。
厚顔無恥とは?
「厚顔」とは厚かましいことで、ずうずうしいさま、面の皮が厚いことを言います。
「無恥」とは恥を恥とは思わないことです。
その人にとっては恥とは認識しないのですが、周りの人から見ると恥だと思われることです。
だから、この「厚顔」と「無恥」が合わさった「厚顔無恥」は、自分では恥だとは思わないことを厚かましく行うことを意味します。
同じ発音で間違われて「厚顔無知」と書かれていることがありますが、「無知」とは知識のないこと、または知恵の無いことという意味なので、少しニュアンスが異なります。
「無知」だから恥じることも分からないのであれば同じ意味にはなりますが、「無恥」は恥とわかっていても恥じずに押し通す事です。